第67話 ウィッグ
女の子から聞いた話。
待機所にウィッグの忘れ物があった。バックレた嬢が置いていったものらしい。
化繊ではなく人毛で出来た高級品で、自然な栗色が美しかった。店長は捨てようとしていたが、もったいないということで希望する女の子たちでジャンケン大会が開かれ、彼女が勝ち取った。
本当によく出来たウィッグだった。毛質は絹糸よりも繊細で滑らかで、光に透かすとトリートメントのCMみたいに艷やかに輝く。自分の髪よりずっと綺麗だ。彼女はそのウィッグを毎日愛用した。客の評判もよく、指名も増えた。いい拾い物だったと喜んでいた。
順調な日々だったが、あるときから腰痛を患った。
整体に通うなどして誤魔化していたが、いよいよ痛みがひどくなって病院で検査してもらった。
検査の結果は血液性のがん――いわゆる白血病だった。
仕事は続けられなくなり、抗がん剤治療が始まった。毎日が気だるく、吐き気が止まらず、やせ細り、全身の関節が痛む。肉体的な苦痛以上に辛かったのが髪の毛が抜け落ちることだった。治療が続くにつれて髪が薄くなり、地肌が見え、すだれ状になり、ついには髪の毛どころかまつげの一本もなくなってしまった。
そうして彼女は、治療の甲斐なく亡くなった。
息を引き取るその瞬間も、ウィッグを被っていたという。
「で、形見分けでそのウィッグをもらったんだけど、似合ってるかな?」
この話をしてくれた女の子は、そう言って栗色のウィッグを無邪気な笑顔で撫でつけていた。




