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デリヘル怪談 ▓▓恵美さんを探しています  作者: 瘴気領域


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第64話 万年筆

 待機所の雰囲気は店によって違う。

 女の子同士が仲良くしている店もあれば、反対にギスギスしている店もある。お互いに干渉しない店も多い。この雰囲気は店側が意図的に作っているというよりは、集まった嬢次第で自然に醸成されてしまうものだろう。


 私の話だ。

 その店の待機所はマンションの一室を改装したもので、どちらかと言えば互いの干渉の少ないタイプだった。学生や昼職と兼業している子が多かったからだろう。疲れていて、待機所ではゆっくり過ごしたいのだ。


 一人の学生さんは、待機所にいるときはずっと勉強をしていた。仮にAさんとしよう。中国語の古典なのだろうか。ローテーブルに見慣れない書体の漢字がびっしり書かれた分厚い本を開き、大学ノートにペンを走らせている。こだわりなのだろう。ボールペンではなく、螺鈿細工のアンティークな万年筆だった。


 その店に新しい女の子が入店した。こちらはBさんとする。

 歳は三十過ぎ。ひょっとしたら四十近かったかもしれない。目立ち始めた皺を厚手のファンデーションで塗りつぶし、髪を派手な色に染めて若作りをしている。店のプロフィール写真では二十歳そこそこに見えるが、実物に会った客は落胆するだろう。


 そんなだから、リピートが少なく待機所にいる時間が長い。

 Bさんは夜職専業で、いつの間にか待機所の牢名主のようになっていた。高校を中退してから夜の世界で生きてきたそうで、コンプレックスの裏返しなのだろう、学生や昼職持ちをあからさまに敵視していた。そんな彼女のターゲットになったのが例の学生さんだった。


 Aさんが勉強していると、

「女が勉強したってどうせ役に立たないのに」

「結婚相手の男が稼いでりゃいいの」

「どこの国の言葉よ。一生使うことなんてないでしょ」

 などと、聞えよがしに悪態をつく。

 ある時などはわざとらしくマグカップを倒し、Aさんのノートを汚した。


 みんなAさんに同情したが、下手に関わって自分が目をつけられてはたまらない。気づかないふりをする日々が続く。

 AさんはAさんで、口答えもせず彼女を無視して勉強に勤しんでいた。


 そんなある日のことだ。

「きゃあっ!」

 待機所にいたBさんが突然飛び上がって悲鳴を上げた。

 足の裏をおさえて「痛い、痛い」と言っている。

 どうやら何かを踏んづけてしまったらしい。

 見ると、きらきら輝く破片がフローリングの床に散らばっていた。


 いつも無表情なAさんが血相を変えて、床に散らばった破片を両手でかき集めている。破片はAさんが愛用していた螺鈿細工の万年筆の残骸だったのだ。


「何よあんた! ごめんなさいの一言もないの! 痛たたたた……ほら、血が出てるじゃないの!」


 確かに万年筆を床に落としたAさんも悪いのだろうが、それを踏みつけて壊したBさんが一方的になじるのはどうなのだろう。Bさんへ冷たい視線が集まるが、睨み返されて順に視線が引き剥がされていく。

 Bさんはいつまでもきぃきぃと騒いでいたが、結局Aさんが謝ることはなく、指名が入って呼び出されていった。


 次の日。

 Bさんは出勤するなり足をおさえてうずくまった。


「痛い! 痛い! 痛い痛い痛い痛い! もう、昨日からずっと痛いのよ!」


 わざとらしく騒ぐBさんの視線の先にはやはりAさんがいた。

 Aさんはそれを無視して、ひたすらノートにペンを走らせている。万年筆ではなく、どこにでもある安物のボールペンだった。

 そしてまた指名が入り、Aさんは呼び出されていった。


 次の日はBさんが出勤しなかった。

 店長によると病欠らしい。痛い痛いと騒いでいたのは仮病ではなかったのだろうか。しかし、同情の気持ちなど欠片もわいてこない。Bさんがいない方が待機所の空気もいい。


 Bさんはそのまま出勤しなくなった。

 重い性病にかかって頭がおかしくなったとか、借金取りに見つかって拉致されたとか、万年筆を踏んだ足が腐って死んだとか……そういう噂が立ったが、Bさんと個人的にやり取りしていた子なんて一人もいないから、本当のところは何もわからない。


 やがてAさんも店を辞めた。

 学費の目処がつき、第一志望の企業に就職も決まったそうだ。

 ノートを一冊、忘れていった。

 そういえば何の勉強をしていたのだろうと気になってぺらぺらめくると、




 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

 B你的靈魂將在痛苦中燃燒,直到時間盡頭。

 B每個夜晚,夢魘會來訪,將你帶往深淵。

 B你無法逃離,黑暗永遠將你吞噬。

 B千年的怨念將纏住你,無法解脫。

 B血液將逆流,直到生命枯竭。

 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

  你的影子將不再屬於你,它將行走在你之前。B

   所有的鏡子將反射出你的死相,逃無可逃。B

     無形的手將抓住你的心臟,緊緊不放。B

      每一次呼吸,都是在啃食你的生命。B

       被遺忘的詛咒,將在你身上重現。B

 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

 B靈魂的枷鎖將永遠困住你,無法解脫。

 B你將在孤獨中腐爛,直到只剩白骨。

 B夜風會傳來低語,那是亡者的哀號。

 B血月升起之時,你的命運已被寫定。

 B你的眼睛將只能看到痛苦與死亡。

 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

  黑暗中的眼睛將一直凝視著你,直到你瘋狂。B

   你的名字將被忘記,但痛苦將永遠記住你。B

    每一扇門後,都是無盡的恐懼等待著你。B

     你無法擺脫的惡臭,將隨著死亡而來。B

      千針穿心的痛苦,將成為你的日常。B

 BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB

 B你的靈魂將在痛苦中燃燒,直到時間盡頭。

 B每個夜晚,夢魘會來訪,將你帶往深淵――




 古い角印を押したような書体で、びっしりと書き込まれていた。

 私は黙って、ごみ箱にノートを捨てた。

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