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第61話 お試し価格
無人販売と言えばもうひとつ。
こちらは女の子から聞いた話。
彼女は節約のために自炊をしていて、寝る間を惜しんで1円でも安いスーパーに買物に行くような子だった。(デリヘル嬢は基本的に夜勤のため、スーパーが営業している昼間には寝ているものなのだ)
ある日、近所に無人販売所を見つけた。
大振りなトマトが袋いっぱいに詰められて、格安で販売されている。
これはツイてる……と思ったが、間の悪いことに小銭がなく、財布には1万円札しか入っていなかった。
キョロキョロと当たりを見回し、お金を入れたふりだけをした。
美味しかったら後日ちゃんと料金を払おう。
初回はお試しだからいいよね。
手前勝手な理屈をつけて、家に帰った。
実に美味しそうなトマトだった。
つやつやと赤く輝き、皮がぱんぱんに張って今にも弾けてしまいそう。
ひとつはおやつにしてしまおう。
軽く洗って、かぶりつく。
ざくっ
鋭い痛みに悲鳴を上げた。
口の中のものを吐き捨てる。
流しが真っ赤に染まった。
血の中には、赤錆びた剃刀の刃が混じっていた。




