62/108
第57話 結婚指輪
女の子から聞いた話。
とくに出張のサラリーマンに多いのだが、既婚の客も珍しくない。妻のいる自宅から離れて、ついつい羽根を伸ばしたくなるのだろう。
その日の客も既婚者で、不用心と言うか律儀と言うか、左手の薬指に結婚指輪が嵌まったままだった。
「奥さん、怒らないんですか?」と冗談交じりに指輪を指すと、
「怒るよ。バレたらすっごい怒る」と男は肩を竦める。
「それなら、せめて指輪くらいは外しておいたら?」と続けると、
「昔は外して遊んでたんだけどね」と男はため息をついて、
「指輪が外せないよう、こうされちゃったんだよね」
と、男は指輪ごと、薬指を根本から取り外した。
義指の根本には、指輪が食いつくように嵌まったままだったという。




