第47話 【求ムED!不能の君を待っている】
これも店長から聞いた話。
店内での男女トラブルが多く、頭を抱えていたことがあった。この業界で店内恋愛はご法度だが、それでも手を出す者はいる。
発覚するたびにクビにして新しい人材を雇うのだが、求人にかかる費用や手間も馬鹿にならない。女性の採用も考えたが、客とのトラブルが発生したときのことを考えるとやはり男がいい。
男で、しかも嬢には絶対手を出さない人材……。
半ばヤケクソになってある求人広告を打った。
その文言は【求ムED!不能の君を待っている】である。
勃起不全であるなら絶対に嬢に手を出さないというか出せないだろうし、嬢の方も相手にしないだろうと思ったのだ。
応募はたった1名。
さすがにこんな文言じゃ人は集まらないか……と思ったが、たった一人でも採用につながれば問題ない。事務所に呼んで面接を開始する。
しかし、見るからに様子のおかしい男だった。
目の焦点は定まらず、ぎょろぎょろ動いてどこを見ているのかわからない。髪はボサボサでところどころ禿げてまだらになっている。夏だというのにロングコートを着て全身が小刻みに震えており、両手をポケットに突っ込んでいた。
(こりゃやばいぞ……)
店長が身構えると、
「ぎぃぃぃぃいいいいげぇぇぇぇええええ!!」
男は奇声を発し、ポケットから果物ナイフを取り出して襲いかかってきた。
店長は男の腕を掴んで捻り上げ、床に抑え込む。
この店長はもともと大学相撲部の出身で、腕っぷしには自信があったのだ。
「てめぇ、いきなり何しやがる!」と怒鳴りつけると、
「お前こそ! お前こそ馬鹿にしやがって!」と怒鳴り返してきた。
何が何やらわからない。
その姿勢のまま話を聞くと、EDをきっかけに妻に離婚され、精神的ショックから仕事が手につかなくなってクビに。再就職のため何十社も面接するもすべて落ち、夜の仕事なら……と思って夜職の求人サイトを開いたところで【求ムED!】の広告を目にし、馬鹿にされたと思ってキレてしまったのだそうだ。
そんな話をするうちに、男はぼろぼろと泣き始めた。
「勃たねえのがよう……ちんこが勃たねえのがよう……そんなに悪いのかよ……それだけで男失格っていうのかよ……」
聞いているうちに、店長は可哀想になってきてしまった。
じつは店長も二十歳そこそこのときにEDになったことがあるのだ。怪我のせいで相撲部を引退した頃のことで、一年ほどで快復したのだが、その期間は本当に辛かった。あのときを思い出すと、【求ムED!】などというふざけた求人広告を出してしまったことが申し訳なくなってきて、いつの間にか男に謝罪し、そして励ましの言葉をかけていた。
現在、その男性は店長の右腕として働いている。
店内での男女トラブルは一切起こしておらず信頼も厚いが、EDが治ったかどうかはわからないという。
しかし、【求ムED!】の広告をまた出そうかと冗談を言ったら、一瞬だけあのときの目に変わったので、そんな軽口は二度と叩かないようにしているそうだ。




