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デリヘル怪談 ▓▓恵美さんを探しています  作者: 瘴気領域


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第46話 ソフトクリーム

 店長から聞いた話。

 以前、ネットカフェを経営していたことがあるという。

 といっても普通のネットカフェではない。デリヘル嬢専門のネットカフェだ。


 とあるオーナーからの提案で開業した。

 そのオーナーはラブホテルを所有しており、嬢をそこに派遣することで効率よく稼いでいる。その嬢たちの待機所としてネットカフェを経営しないかと誘われたのだ。

 ホテルの一室を待機所にすればよいではないかと思ったが、それでは箱ヘル――店舗型性風俗特殊営業とみなされて、営業許可が降りなくなってしまうらしい。かといって近隣のネットカフェは満席になることが多く、嬢の待機所として向いていない。


 では普通に待機所として物件を借りようとすると、風俗関係ということで嫌がる大家が多く、借りられる物件は足元を見て賃料が高い。そこでネットカフェを自前で用意してしまおうと考えたのだ。

 オーナー自身は風俗関係者としてすでに知られてしまっているため、妙な疑いをかけられないよう店長を代理に仕立てたわけである。


 一般客で満席になってしまうと都合が悪いので、会員制ネットカフェとした。オーナーの店に所属する嬢はすべて会員になるので、開業時から黒字が約束されている。しかし、それだけでは面白くない。空席を埋めるために近隣の他のデリヘルにも営業をかけようと思いついた。


 嬢に満足してもらえるよう、設備をしっかり整えることにした。漫画や雑誌は嬢の好みを調べて人気のものを取り揃え、軽食やお菓子、アメニティも豊富。欲しいものがあればリクエストも受け付ける。


 居心地のよさが評判となり、順調に会員が増えていった。

 するとリクエストも増えてくる。

 中でも多かったのはソフトクリームメーカーだった。

 近隣のネットカフェやカラオケ店でも導入されており、なかなか評判がいいらしい。味見に行ってみると、なるほどなかなか悪くない。うちでも導入するか……と店舗向けに中古品を扱う通販サイトを調べていたときだ。


 業務用の高級機が格安で売られていた。

 4種類の味を切り替えられる、アイスクリーム専門店でも使用されている本格的なものらしい。新品ではとても手が出せない代物だが、定価の十分の一以下で売られていた。写真や説明を見る限り、状態はよく、ほとんど新品に見える。


 これは見逃す手はないぞとさっそく注文し、原料のソフトクリームミックスもコーンも高級なものを発注した。半端にケチっても「ウリ」にはならない。


 導入早々大好評で、ソフトクリームを食べたいからと待機する嬢まで現れた。

 おかげで出勤率が高くなったとオーナーからも感謝され、大口の契約も獲得した。ソフトクリームメーカー様々だ。我が子のように……とは言い過ぎだが、メンテナンスも毎日怠らず大切に扱った。

 そんなある日の営業中だった。


「きゃあっ!」


 ソフトクリームメーカーを使っていた嬢が悲鳴を上げた。

 何事かと駆けつけると、床にソフトクリームがぶちまけられている。

 落として悲鳴を上げたのかと思えば、そうではないらしい。


「アイスの中に髪の毛がいっぱい入ってたの!」

「ええっ?」


 信じられないが、床のソフトクリームの中には大量の長い髪の毛が入っていた。

 嬢には平謝りし、緊急でソフトクリームメーカーのメンテナンスを行う。

 筐体を鍵で開け、内部を確認する。

 髪の毛が入り込んでいる形跡などどこにもない。

 原料の方に異物混入があったのかもしれないと、ソフトクリームミックスをすべて交換する。

 電源を入れ直し、試しに作ってみると、今度は髪の毛など入っていなかった。

 当然のことだがほっと胸をなでおろし、再稼働させた。


 しかし、安心できたのもそこまでだ。

 それから数日おきに同じトラブルが発生した。

 誰かのイタズラを疑うが、被害に遭うのは毎回別の嬢だし、アイスクリームメーカーの鍵を持っているのは自分とスタッフだけ。イタズラとも思えない。


 普段のメンテナンスではわからない場所にゴミが入っているのかも……。

 そう思った店長は、ソフトクリームメーカーを分解してみた。

 パーツをひとつずつ取り出して徹底的に洗浄するつもりなのだ。

 その作業の途中、あることに気がついた。

 筐体背面の内側の見えにくい場所に、黒ずんだ御札のようなものが貼り付いていたのだ。


「なんだこれ、気味が悪いな」


 剥がすと、指先に針で突かれたような痛みが一瞬走った気がしたが、別に怪我はしていない。静電気か何かだろうと思い、作業を終える。

 文字通り埃一つなく洗い終えた。これで髪の毛が混入することなんて二度とないだろう。

 そう思って、テストのためソフトクリームをひとつ作ろうとする。




 ずももももももももももももももももももももも




 出てきたのはソフトクリームではなく、大量の髪の毛だった。


 店長はソフトクリームメーカーを即座に中古として処分し、店には既製品のアイスしか置かなくなった。経営への熱も失い、そのうち事業ごと他人に譲ってしまった。


 今でも昔を思い出して店舗向け中古通販サイトを覗くことがあるが、例のソフトクリームメーカーと同型の商品が格安で売られているのを見かけることがあるそうだ。

 あれ以来、ソフトクリームは二度と口にしていないと言っていた。

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