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デリヘル怪談 ▓▓恵美さんを探しています  作者: 瘴気領域


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第43話 くっせ!

 デリヘルには「待ち合わせ」というオプションがある。

 ホテルや自宅に直接呼ぶのではなく、一旦街中で待ち合わせてから向かうのだ。ちょっとしたデート気分を味わえるということで利用する客も珍しくない。


 女の子から聞いた話だ。

 駅前で客と待ち合わせ、ラブホテルに向かう途中のことだった。

 少し前を赤いランドセルを背負った男の子が歩いている。

 小学校低学年くらいだろうか。

 時刻は20時を少し回ったところ。

 子どもが出歩くには少し遅い時間だ。


 しかし、周辺には住宅が多いため、異常というほどのことでもない。塾帰りならこれくらいの時間になることもあるだろう。


「男の子が赤いランドセルかあ。時代も変わったね」

「そうなんです? 別に普通じゃないですか?」

「いや、昔は男は黒、女は赤って決まってたんだよ。それ以外だとからかわれたり、下手したら教師まで注意してくんの。俺は赤の方がかっこいいと思ったけどなあ」


 客は四十絡みで、ランドセルをきっかけに子ども時代の思い出話が始まった。二十代の彼女には珍しい話が多く、接客を抜きにして素直に興味が引かれる。そんな話題で盛り上がっていたところに、



 くっせ! くっせ!



 突然水を差された。

 変声期前の子ども特有の甲高い声。

 どうやら前を歩く小学生の声らしい。

 ランドセルの話題が聞こえてしまって、からかわれたと思ったのだろうか。

「何か悪いことしたかな」と男が苦笑いをする。


 男は話し上手で、子どもが関心を持ちそうにない話題に切り替えた。

 しかし、



 くっせ! くっせ!



 小学生はまた甲高い声を発した。

 何度話題を切り替えても変わらない。

 いい加減、男がイライラしてきた。


「ちょっと注意してくるよ。何、俺たちの頃には大人が生意気なガキをちゃんと注意したもんなんだ」


 男が早足になり、小学生の背中に追いつきそうになったときだった。




 くっせぇぇぇぇぇぇええええぇえぇええええぇぇえええ!!!!




 赤いランドセルの蓋ががばっと開き、干からびた猿のような顔が飛び出した。

 黄色い歯を剥き出しにして、白目のない真っ黒な目、大口、唇の端がぶちぶちとちぎれて、埃が舞って、鳥の骨みたいな細い腕でバンザイして、


 ぴょん


 と、ブロック塀に飛び移り、


 くっせぇぇぇぇぇぇええええぇえぇええええぇぇえええ!!!!


 叫びながら、ぴょんぴょん跳ねてどこかに消えていった。


 彼女も男も腰を抜かしてその場にへたり込んだ。

 小学生はぐるりと首を回して振り返り、


「くっせ」


 と呟いて、ランドセルの蓋をぱたぱたさせながら駆け去った。

 その顔はしわくちゃで歯が数本しかなく、まるで百歳を過ぎた老人のようだったという。

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