第24話 幸運のお守り
女の子から聞いた話。
「よくないものが憑いてるよ」
ある客から、突然こんなことを言われた。
つるりとした顔で、二十代にも四十代にも見える男だった。
「これ、幸運のお守り」と奇妙なものを押し付けられた。
親指の先ほどの不規則な多角形で、透き通った青色の石だった。
同僚の女の子に聞くと、「アメジストの原石じゃない?」と言う。
「高いの?」と聞くと、「数百円くらいじゃない」とすげない返事をされた。
安物だとわかって少しがっかりしたが、しょせんは一見客からの貰い物だ。高価であるはずもない。とはいえ荷物にもならないし、バッグに入れておくことにした。もしもリピートがあったとき、プレゼントを捨ててしまっていたら印象が悪い。
幸運のお守りなどと言っていたが、ソシャゲのガチャは普段通りに外れるし、お気に入りのアイドルグループのライブチケットも取れないし、試しにと買ってみた宝くじも当然のごとく当たらない。そのうちに、持っていることも忘れてしまった。
数ヶ月ほどたった頃、新しいバッグを買った。
中身を入れ替えていると、底の方から石が出てきた。透き通っていたものがすっかり白く濁っている。なんだか気味が悪い。そう思って、例の嬢に聞いてみた。
「あー、クズ石って細かい罅だらけだから、油を染み込ませて透明にしてんのよ。で、それが抜けたり悪くなるとこうやって濁っちゃうの」
安物どころか粗悪品だったというわけだ。
オリーブオイルに漬けておけば元通りになると言われたが、結局あの客からのリピートはないし、そんなものに手間をかけたくない。腹立ち紛れに石をゴミ箱に投げ捨てた。
その日のうち、彼女は階段から落ちて大怪我をした。
誰かに突き飛ばされたと言っているが、目撃者によると辺りには誰もいなかったそうだ。




