第20話 後部座席で①
送りさんから聞いた話。
とあるビジネスホテルに嬢を迎えに行った。
嬢は後部座席に乗るなり、すぐにべらべらとしゃべり始める。
一瞬、自分に話しかけられているのかと思って適当に相槌を打っていたが、どうにも噛み合わない。どうやらワイヤレスのイヤホンマイクで誰かと通話しているようだった。
自意識過剰だったかな。
頬が熱くなるのを感じながら、車を走らせる。
バックミラーに映った嬢は大げさな身振り手振りで話し続けている。
ビデオ通話でもないのに、ちょっと変な子だな、と思った。
信号で車が停まる。
電柱のたもとに花束が供えられていた。
事故でもあったのかな。
慣れない道ということもあり、気を付けて運転に集中する。
少しして、気がついた。
後部座席が静かになっている。
バックミラーを確認すると、がらんどうの座席だけ。
誰一人乘っていなかった。
ぴぴぴぴ
スマートフォンが鳴った。
着信相手は先ほどまで乗せていたはずの嬢だった。
慌てて電話に出る。
『ちょっとー、迎えまだなの?』
「えっ!? いや、その……す、すぐに行きます」
すぐにUターンをして嬢を迎えに行った。
後部座席はなぜかびっしょり濡れていて、嬢からさんざん文句を言われたという。




