第17話 人形④
きらりの話だ。
元地下アイドルで、客たちから合計一千万円以上の婚約指輪を巻き上げた……もとい贈られていた彼女である。
きらりも常連客が亡くなり、もらった人形を処分しようとした。
別に人形だから捨てづらかったというわけではない。
その客がついている間は、もらったプレゼントを絶対に捨てないのだそうだ。
営業メールや、店のブログにアップする写真にさりげなく写り込ませると、客が大喜びするらしい。
さすがの手管である。
しかし、客が亡くなればもう関係ない。
30cmほどの陶製のビスクドールで、レースたっぷりの華やかな衣装を着せられている。これは高く売れるだろうと、アンティークショップに持ち込んだ。
アンティークショップの店主は人形を見るなり目の色を変えた。
それを見たきらりは、これは高く売れそうだと内心で喜んだ。
店主は人形の服を脱がし、ルーペで念入りに状態をチェックする。
人形の体勢を変えると、中から「ざざざ」「ざざざ」と砂が落ちるような音がする。
内部が割れて、破片が詰まっているのかもしれない。
店主はきらりに了承を取り、頭部を外して逆さまにした。
ざらざらざらざらざらざらざらざらざらざらざらざら……
出てきたのは大量の虫の死骸だった。
クモ、ハエ、アブ、蛾、毛虫、ゲジゲジ、イナゴ、蜂、ゴキブリ、ムカデ、コオロギ、ヤスデ、小さなヘビやカエルも、干からびて、数え切れないほど、ざらざら、ざらざら、ざらざらざら。
店主は別の意味で顔色を変えて買い取りを断った。
「それで、その人形は結局どうしたの?」と私が聞くと、
「特級呪物ってことにしてネットオークションに出したらすごい高値で売れたよ」
そう、きらりはけらけらと笑っていた。




