第15話 人形②
女の子から聞いた話だ。
マンションの一室に、布をかぶった人型大の何かが置かれていた。
客がトイレに行っている間にめくってみると、思わず小さい悲鳴を洩らしてしまった。
ぱっちりとした青い目の若い女性――と見紛う人形だったのだ。
リアルドール、というものである。
高級ダッチワイフと言えば通じるだろうか。主に性的な目的に使う等身大の人形だ。
こういうものを買う男は本物の女性には興味がない……という偏見を持っていたのだが、そういうわけではなかったらしい。
やけに反応が初々しいと思ったら、行為のあとに童貞だと告白した。客に感情移入することはそうそうないのだが、このときはかわいいなと思ってしまったそうだ。
その若者は常連になり、月に一度ほど指名をくれるようになった。
半年ほどして、部屋からリアルドールがなくなっていた。
それとなく尋ねてみると、捨てたそうだ。
「ああいうの持ってたら、気持ち悪いよね」
自嘲気味に笑う若者の顔に後悔の色はなかった。
行為が終わって階下に降りる。
送りさんが少し遅れるそうなので、マンションの裏手に回ってタバコに火を点けた。
なんとなく辺りを見ていると、ゴミ捨て場の横のスペースに目が止まった。
<ご自由にお持ちください>のコーナーだ。
半透明のゴミ袋がいくつか。
中から肌色が透けている。
近づいて確かめると、案の定、彼のリアルドールだった。
バラバラに分解し、ゴミ袋に詰めたらしい。
いくらなんでも<ご自由にお持ちください>はないだろうと少し哀れに思った。
ゴミ袋に青い点がふたつ透けている。
ドールの目だ。
クラクションが短く鳴った。
送りさんの車が来たのだ。
ドールに軽く手を合わせ「ごめんね」とつぶやく。
車に乗り込んで、シートに身を預けたときだった。
おまえのせいだろ
耳元で女の声がした。
女の子は店を変え、そのマンションには二度と近寄らないようにしているという。




