第百話 同窓う会
私の話をしよう。
恵美さんではない。筆者としての私の話だ。私の、話だ。
ああ、ややこしい。やはり一人称は変えるべきだったか。私は私だ。私じゃない。
恵美さんはまだ見つからない。恵美さんの話からではどうしても百話目が書けなかったのだ。いや書けるのかもしれない。だから恵美さんの話を聞きたい。恵美さんを探しています。
同窓会の話だ。
小学校の同窓会に呼ばれた。
これまで一度も参加したことがない。十年ぶり。
ひさびさに会う同級生たちはみんな知っている知らない顔で、相応に年経てしぼんだ風船もつるつるもいれば、いた。
小学校は一学年一クラス。二十人もいなくてウサギ小屋を狙うカラスの方が多かった。ウサギ小屋はあったか。自信がない。クラス替えは六年間なかった。カラスの方が多いクラスだった。
子供の頃のことはあまりよくおぼえていない。
なぜ同窓う会に行ったのか。怪談のネタがなかったから。
何か怖い話が聞けるかもしれない。
居酒屋。エミちゃんは元気なのかな。誰かが言った。
そういえば出席してないね。案内は出したの。誰か出した。出してない。連絡先知ってる人。恵美さんなら連絡がつかない。小学生のエミちゃんは知らない。あんなに仲良かったのに。双子みたいに。転校したのいつだっけ。三年生のとき。四年生。先生はおぼえてる。いや、そんな子いたかな。担任の先生も出席していた。怖い話はありますか。怖い話。なんで急に。怪談を書いているんです。百話目。私。
百怪を談ずれば怪来るって言ってね。先生。
百物語。百話目を話して、ふっと蝋燭を吹き消すとね。怪異が起こる。エミちゃんは。いやそんな生徒いたかな。怪異ってどんな。さあ。蝋燭は百本立てるの。十話ごとに一本とかでもよかったらしい。案外いい加減なんだ。怪談なんていい加減なものさ。錯覚、記憶違い、伝言ゲーム、薬の影響。想像力。存在しない人間だって。イマジナリーフレンド。タルパ。知ってる。見た。まとめ。作れるの。さあ。口裂け女は実在した。大勢が見た。何百、何千、何万。集団ヒステリー。何千万が信じた。本当に。いなかったって言い切れる。さあ。ポマードポマードポマード。ほっといてくれよ。人面犬。田舎だからさ、妖怪の噂とかあるかなって。あるよ。ないよ。あったよ。花子さん。旧校舎の一階の女子トイレでね。取り壊されてたじゃん。昔はいたのかな。いたのかも。いたんだよ。いた。いない。
エミちゃん、来るのかな。連絡は。あったかも。ある。これから。誰。エミちゃん。いま駅前にいるの。もしもし、私エミちゃん。いまあなたの後ろにいるの。メリーさんじゃん。連絡は。なかったかも。ない。誰。エミちゃんは。いたよ。いなかったかも。いない。いる。先生は。おぼえてないなあ。卒業名簿。ないでしょ。転校したもん。転校した。いつ。三年生。四年生。おぼえてないの。おぼえてない。ない。いる。
百怪を談ずれば怪来るって言ってね。先生。本当に。本当に?
蝋燭を吹き消せば怪異が訪ねてくるのなら、いま吹き消してみよう。
百個目の怪談が、それで完成するかもしれない。する。した。
▓▓恵美さんを探しています。




