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14 職業

「白兎さん。」

「遅かったですね。随分と時間がかかっていましたが、そんなに彼女は重病だったのですか?」

「いえ、重病ではありませんが…。少し私の見解をお話ししてもよろしいでしょうか?」


私の表情をじっと見つめる白兎さん。

読んでいた本を閉じ、クイッとメガネをあげて私に目の前の席に座るよに指示した。


「いいでしょう。どうぞ。」


私は自分の見解を話した。


「倒れた女官の子は、下級の女官でしょうか?」

「ああ、主に下働きがメインです。掃除や洗濯が主業務ですね。」

「倒れた女官の子は、月経中でした。月経自体は一定年齢の女性は誰もが経験し、その重さは人によって異なります。彼女は月経が重いタイプだったのでしょう。」


私は言葉を続ける。


「そして彼女に触れると発熱もしていました。私の予想ですが、下級の女官たちの居住環境はあまり良いとは言えません。その環境下で月経で不調になっているところ、細菌が侵入し、発熱したのではないかと考えられます。一番良いのは、清潔な環境で、食事・睡眠をしっかりとり、できれば内服をすれば治りは早いかと思います。」


私はちらっと白兎さんをみた。彼は真剣に話を聞いてくれている。


「このことから、私はまずは環境の改善、そして正しい知識を得ることが必要だと感じています。まずは、布団やシーツを新調すべきですし、月経中の子のために、使い捨てのナプキン…いえ、この国にはそう言ったものが存在しなさそうなので、せめて清潔な布も用意していただきたいです。清潔は全ての基本です。この国がどういった制度なのか私は詳しくないですが、王族や貴族などの組織の一番上から下級女官たちまで大事にすることで、組織全体が良くなると思います。」


ちょっと出過ぎた発言だっただろうか。


少しの沈黙を経て、白兎は口を開いた。


「うちの国は薬作りに力を入れています。鎮痛剤から人間にとっては不老不死の薬までうちの国には存在します。その女官が薬が必要なのであれば手配しましょう。」


よかった。…今、不老不死とかいかにも御伽話のようなワードが飛び出したような気がするが、それは置いておこう。


「環境に関してですが、それも早々に掛け合いましょう。確かに組織は土台が大事です。土台が崩れれば全てが崩壊しますからね。」


よかった。これで少しはあの子達が過ごしやすい環境になればいいな。


「そして、市葉さん。あなたは医療の知識がおありで?」

「え。」


白兎さんが私を見定めるようにして見つめる。


「元の国でのご職業は?医師ですか?」

「いえ、医師ではありません。」

「ほう、では看護師と言ったところでしょうか。」

「………。」


私はコクンと頷いた。


「なるほど。」


そして白兎さんはフッと口角を上げた。


「これは良いですね。」


何が良いのだろうか。

私は少し怪訝な顔で白兎さんを見ると、彼はニヤッと笑った。うっ、綺麗な顔して悪どい笑みをしている。白い兎みたいな名前なのに、腹黒そうだ。


「市葉さん、明日から医務室に通ってもらってもよろしいでしょうか?」

「はい?」


話の文脈が全然繋がっていない。


「あなたには、医官補佐という役職についてもらいます。そうすれば、今日みたいな環境の改善はあなたの権限である程度は動かせるようになります。そして、医官関係という肩書きがあれば、その肩書きの名前のおかげで、あなたを毒物で暗殺しようとする輩が減る可能性があります。そして、何より役職と肩書きは、清月様の妃になるための多少力添えにはなります。」


面白いことになってきた、と言わんばかりに白兎さんは笑っている。


「今のままでは、あなたはただの異世界から来た人間というだけですからね。」


確かに。今のままだとどこの誰かわからないただの人間だ。


「あなたの国での知識と、この国での知識をすり合わせればより良い発展に繋がる可能性もありますし、いやー面白いことになりそうですね。」


クックっと喉鳴らして笑う白兎さん。




「あー、これは面白いおもちゃを見つけた時の顔だね。白兎。」


いつの間にか私の後ろから声をかけてきたのは清月様だった。


「清月様!?」

「市葉さん。お元気でしたか?白兎にいじめられませんでしたか?」


ニコニコと笑っている清月様の手には小さな箱があった。そしてそこからは甘い香りがしていた。


「ああこれですか?市葉さんと一緒に食べようと思って大福を用意しました。うちの国、お餅が有名なので!中に入ってる小豆も一品なんですよ。作りたてですからまだほんのり温かいんです。」


ふふっと笑う清月様。小豆…あ、そうだ。


「清月様!」

「なんですか?」

「小豆って少し分けてもらえたりしますか?」

「ええ?いいですけど。」

「よかったです!ありがとうございます。」


清月様は不思議そうな顔をしていた。


「おい、清月様。」

「何だい白兎?」

「書簡では飲食禁止だ。その菓子を食べるなら他所で食え。」

「わーお、敬語が外れてる。白兎の分も用意してるよ。大福、好物でしょ?」

「うっ…。」


白兎はメガネをクイッと上げた。


「茶を用意する。私の執務室に移動しよう。」

「はーい!」


ニコニコ笑う清月様。

白兎さん、あんなビジネスマンみたいな表情しつつ、甘党なんだなあ、なんて思っていたら、キッと睨まれた。


「好物のことは他の奴には言わないように。」


私はコクコクと頷いた。

そして清月様は私の格好をまじまじとみた。


「何か変ですか?」

「んーいや?面白い格好をしているなと思いまして。」


私は自分の格好に視線を落とす。

そういえば、掃除をした時のままだった。スカートはちょうちんパンツのようにくくっており、腕も袖まくりしている。要するに、腕と生足を堂々と出している状態だ。


「あっ、申し訳ありません!!!見苦しいものをお見せしました!」


私は慌てて衣類を直す。どうして今まで言ってくれなかったの白兎さん!!

私は白兎さんを睨むが、白兎さんは、聞かれてなかったもので、と言わんばかりにツンとそっぽを向いた。


「別にいいんですけどね。可愛らしいので。」


ニコニコと笑う清月様をよそに、私はグイグイと何度も服を直すのであった。

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