12 女官
「なんですか騒々しい。」
白兎の名を呼びながら駆け込んできたのは、春兎だった。
「女官の女の子が倒れちゃって。俺は偶然通りがかっただけなんだけどさ。状況説明できる?」
春兎がそう言いながら、斜め下に視線を送った。
すると春兎の後ろに隠れるようにしていたその子はヒョコっと顔を出した。
小学生くらいだろうか。小さな少女は目を潤ませていた。
「私のっ、お姉様が、倒れちゃって。最近ずっとフラフラしてたから、心配だったの。でも、お姉様いつも大丈夫…って。今までにも何回かあったんだけど…。今日は顔も青くて、私心配で。」
今にも泣き出しそうだ。
「倒れたのはこの子の先輩なんだってさ。医務室に連れて行こうと思ったんだけど、偶然出張中だったのか医務官がいなくてさ。博識な白兎さんのお知恵を借りようかと思ってきたわけ。ねー!」
そう言いながら少女にニッコリ笑いかける春兎。
少女はコクンとうなづいた。
「そう言われましても、私は知識量はそれなりに豊富な方ではありますが、医務に特化したわけではありませんし…。状況も曖昧ですし。どうしたものですかね。」
困った顔の白兎さん。少女の表情もみるみる不安なものになっていく。
「あの、もし良かったら私の質問に答えてもらっていいですかね?」
私は少女の目線に合わせるようにしゃがんで、声をかけた。
少女は一瞬驚いた顔をしたが、それからコクンとうなづいた。
「お姉さんが倒れることはこれまでにも何度もありますか?」
「倒れたのは初めて、だよ。でも時々フラフラしてるの。毎月あるんだよ。」
「どこか痛いとか言ってる?」
「それは言ってないけど、お腹をさすってたよ。」
「吐いたりはしてない?」
「うん。お姉ちゃん、病気じゃないかな…。重い病気だったらどうしよう。」
うーん、これはもしかして。
私の予想が合ってれば、確かに病気ではない。でも症状が重い人は重い。
「もしかしたら…って思うことは一つあります。でも、実際会ってみないことには分かりませんので、もし良かったら、そのお姉さんに合わせていただけますか?」
私は少女に聞く。少女はコクンコクンと何度も頷いた。
そのそばで、パンと手を合わせて春兎が言った。
「じゃあ案内するね!」
「あ、待ってください。できれば私と、この女の子だけで伺いたいのですが。」
「え?」
春兎と白兎が疑問そうに揃って首を傾げた。
「何故?」
「できれば同性だけの方が良いので。」
「えーなんで?」
白兎は何か思いついたのかすぐに引き下がったが、春兎は納得いかないのか、なんで?と何度も聞いてくる。
「女性特有のことかもしれませんので。」
「いいでしょう。この子に案内してもらって行ってきなさい。そしてことが片付けば私に報告を。いいですね?春兎は持ち場に戻りなさい。」
「えー。白兎さーん。」
「早く戻りなさい。」
きっと白兎の方が春兎より偉いのだろう。春兎は少し納得のいかないような表情をしつつも、踵を返して部屋から出ていった。
「お姉ちゃん、いこう。」
「うん。」
私は少女から差し出される小さな手をとって、女中が過ごしている長屋のような場所へ向かった。




