10 月の国
「この国のことを知りたいんです。この国の歴史の本はありますか?」
「歴史書…となるとこの辺でしょうか。」
案内された場所には分厚い辞書のような本がたくさん並んでいた。ずっしりとした重厚感、本から圧を感じる。
「すごいですね。」
「まあ、歴史の長い国ですから。」
あまりの分厚さに片手では持てなかったため、両手で支えながら本を一冊取り出した。近くのテーブルに本を置いて、開いてみる。よかった、文字は自分の国で書いているものと一緒みたいだ。読める。
私はホッと胸を撫で下ろした。
「昔はあなたの国とも多少交流はありましたからね。今はほとんどありませんが。」
「ひゃっ。」
心を読まれた!?私は肩をビクッとさせながら白兎を見た。彼はきょとんとした顔をしていた。
「何ですか?」
「何でもないです。」
「そうですか。」
しかし分厚い本だ。そして言い回しも昔の歴史書のように古風だ。私がこの本を解読して読み終わるまでに何年かかるだろうか。これはちょっと骨が折れそうだ。
そこへ、私の目の前にスッと置かれた一冊の……
「絵本?」
「あなたにはこちらの方が理解しやすいのでは?」
その本は、可愛らしいイラストが表紙の、国の成り立ちの本だった。
「本来ならこの国の子供向けの本ですが、他所から来たあなたにはこれくらいがちょうど良いと思いまして。情報としては浅いですが、大まかに知るという点では良いかと。」
これはありがたい!文字だけよりもイラストがあった方がわかりやすい。
私は目をキラキラ輝かせてその絵本を両手で持った。
「ありがとうございます!」
「そんなに喜ぶことではないかと。」
「喜びますよ。ありがとうございます。助かります。」
私は何度も頭を下げた。彼はそれを片手をスッと出して制止した。
「そんなに頭を下げなくて結構です。それに将来この国の国王夫人になる可能性のある方がそう易々と頭を下げるものではありません。」
「はい?国王夫人?」
「ええ、清月様があなたのことを花嫁とおっしゃっていましたので。」
「清月…様は、この国の国王なんですか?」
「まだ国王ではありませんが…その辺りは聞いていないのですか?」
「はい。」
はあ、とため息をつく白兎。
「言いたいことは山ほどありますが、一気に言っても混乱を招くだけです。まずは今お渡しした絵本を読んでください。そしてその後に、清月様についてお話ししましょう。」
さ、読みなさい、と白兎は本を指差した。
私は小さく会釈をして、絵本のページをめくった。
可愛らしいイラスト、そして月の国についての話を読み進めていく。
ざっと読んでみて、わかったことは…
月の国は国王または女王が統治している。
日本のように四季が存在している。
薬の開発が盛んである。
そして、私がいるここは王宮の一部である後宮のような場所。
一夫多妻が認められていること。
昔は私がいた国とも交流が盛んであったが、時代の流れとともに交流はほとんどなくなった。よその国へ行くためには難解な手続きが必要。
くらいのことはわかったが、やはり絵本のため情報が少ない。
「読み終わりましたか?」
「はい。」
「では清月様について説明をさせもらっても?」
「お願いします。」
白兎は私の目の前の席に腰を下ろすと、一冊の古い本を広げた。いや、本じゃない。
一瞬古びた本に見えたが、それはアルバムだった。
白兎はページをめくりながら説明を始めた。




