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【下】

やがて会議も終盤に差し掛かり、いよいよ終わろうとしたとき、ふと天照が問う



「そういえば、風鈴。お主かりすま・・・がどうとか騒いでいたらしいな」


「カリスマがどうしたのだ」



またもや面白がる八意が説明した。天照と月読は顔を見合わせるとこの二柱も笑うのだ。



「くっそぉぉぉぉう。許せねぇ」


「まあまあ、ふうちゃん落ち着いて」


「ふうちゃんはモテるよ!」



ぷんすこする風鈴を、稲荷神と志那津がなだめる。天照は、そういう所が子ども扱いされるのだと指摘した。風鈴はぐの音も出なかった



「そもそも、お前は祓い神統括だろう。しっかりしろ。そのカリスマというやつは良くわからぬが・・・お前にはしっかりとそれが備わっておるだろ、他の祓い神がついてきてるのだから」



風鈴は口をとがらせて、そうなのかなぁ。と自信なさげな返事をした。

風鈴以外の神が杞憂だと笑うのにはしっかりと理由がある、本人には届いていないだけなのだ。

こんな話をしている合間に、稲荷神が何かを察知した



「天照様!来ましたよ!!来ました!」


「そうだなぁ」


「お、うちの出番?」



稲荷神は、狐耳をピコピコ動かす



「この会議室から西南西の方面から穢れが発生して、総社の中に入ってきちゃいました」


「中にきちゃってんだ・・・」



何もわからない恵比寿が思わずツッコミを入れてしまった。毎度のことだ、会議が始まると表の防御力が弱くなる。そこを突いて穢れたちは総社に攻撃を仕掛けてくるが、九柱はいつもは気にせず会議を続けているはずだ。

何故なら、外には風鈴の弟子のみならず武神たちがいるはずで、毎度追い払ってくれているからだ。

だが今回は雲行きが怪しそうだ、そんな気配がした。



「風鈴、出ろ」



天照から直々に命が下った



「うちだけ?」


「余裕だろ?」


「もちろん、5分もいらん」


「ほら、あれだ。カリスマとやらのためだ、株上げだ」


「そういうの苦手や・・・」


「・・・まあ良い、さっさと始末してこい。我らはここで見ているぞ」


「・・・やん変態」


「はよ行け」



御意。と返事をして小走りで部屋を出ていく。穢れはまだ総社の玄関部分にまでしか到達していないようで、今歩いている廊下には一匹も見当たらない。

等と考えていたら、悲鳴が聞こえてきた。少し先を行くと、今。まさに。目の前で。穢れに飲み込まれそうな神がいた。


足にグッと力を込める。カンっと下駄の音が廊下に響いた。

瞬きもせぬ間に、風鈴はその神を腕の中に収めると、武器の扇子をどこからともなく取り出す。

扇子をバッと開き、穢れに向かって下から上に一仰ぎする。

発生した風で穢れは祓われた。


ゆっくりと目を開ける神。目に飛び込んできた光景は風鈴の横顔だった。

スッと通った鋭い目は、寸分の曇りなく穢れを捉えている



「大丈夫か」


「は、はひ!」


「よかった。この奥に逃げなさい、不安なら会議に避難して。でも安心していいよ」



にやりと笑うと、そのままにへっとした顔をして言った



「うちが出たからにはこれ以上先には進ませへんから」



心臓のバクバクが収まらない。かっこよすぎた、吊り橋効果だとわかっていてもそこで惚れない理由なんてない。あれは誰が見てもキュンとする。風鈴は玄関の方に向かって既に消えていた



「や、っばー・・・あれが風鈴様なのね・・・そりゃみんな落ちるよ・・・」



一方会議室



「ほほほ、杞憂杞憂」


「やっぱりモテモテじゃん!」



しっかりと見られていた。


玄関の手前の廊下あたりからチラホラと穢れが見えていたので祓いながら先へと目指す。そこは既に地獄絵図、阿鼻叫喚


高天原の総社を護る神々が奮戦しているが、押されている模様だ。怪我をしているもの、今にもすべて穢れに飲まれそうなもの、避難してきたもの。混沌としていた。正直これほどまでの被害がでているとは想定外だ。風鈴はその場に立ち止まる



「何をしておるのだ・・・」


「風鈴!動け!!」


「月読様、少々うるさいですよ」



ー戦場

視界に入る穢れはすべて捉えた、穢れの数だけ火の玉を出す。風鈴が扇子で一振りすると穢れのもとへと火の玉が飛んでいき、穢れたちを燃やしていく。



「ふうりんざまぁぁぁぁ!!!!!」


「ありがとうございまずぅぅぅぅ」


「痛いよぉ・・・痛いよぉ・・・」



怖かっただろうに、一生懸命誰かを護るために戦った者たちが、穢れから解放されて一安心したのか風鈴のもとへと駆け寄ってきた。この神々は戦いに特化している神ではない、こうなるのは当然だ。



「よぉ頑張ったね。会議室が安全やわ。みんなそこに居るから。怪我をしてる者は協力して運んで行って。すぐ終わるから」



神たちが廊下の方へと向かったのを確認して、一番大きい穢れに向く。その後ろ姿はどんな神よりも大きく見えた。たくましく見えた。神々しく見えた。



「風鈴様が来てくれたからには100人、いや那由多力だぁ!!」

「何その数」

「お前も見てたらわかるって」


「そこ、駄弁るなら邪魔やから逃げなさい」


「はい!すんません!!」



戦っていた戦士たちも、怪我神を庇いながら避難していった。



「うちと、君だけになってしもたな」



穢れに話しかけても奴らは答えない。風鈴の瞳はまっすぐ穢れを捉えて離さない。

穢れは風鈴よりも大きな口を開けて一気に風鈴を飲み込んだ。



ー会議室

「風鈴!?待ってろすぐに雷をーー!」


「まさかな・・・」


「ふむ・・・」



火雷神、八意、道真は動揺を隠せないでいた。他の避難してきた神々も悲鳴を上げる



「風鈴さま!?」


「いやぁぁあ!風鈴様がぁ!!」


「私の風鈴様を・・・!」


「いやお前のじゃないな?」


「俺のな?」


「なんじゃお前たち・・・会議室に避難してきて話す話はそれか?」



ー戦場

天照も呆れるほどの熱狂的ファン。ごくん、という音をだしてしばらくすると、穢れは何事もなかったかのように奥へ進もうとした。穢れはもうこの一匹のようだ。そこから細かく分裂してたから沢山いたようだ。大元を潰せばすべて消える。風鈴が動く気配がない、皆ダメかと思った。



「奥には行かせへんけど」



穢れの動きが止まった。しばらくすると、穢れがカッと内側から光った。

その瞬間穢れが、爆発し中から風鈴が出てきた。何かを手に持って・・・



「これなーんだ」



「そう、この穢れの核!見てるぅ?みんなー!これはね、ぎゅってしたらどうなると思う?」


「うーん、道真様!答えて!」



いきなり指名され戸惑っている素振りを見せたが、すぐに冷静さを取り戻し、おほんと咳払いする。



「消える・・・?」



道真の声が風鈴に届くはずもないのに答える、しかし風鈴はその答えを予測していたようだ



「正解!さすが道真様!そう、この穢れはぶちゃーってなって霧散します!弟子たちはしっかりと覚えておくように。じゃあ、さっそくやるよーん」



そういって片手で持っていた核をギュっと握り潰した。会議室で見ていた神々も、さぁと肝が冷える。穢れは風鈴が言った通り霧散した。



「んーー!疲れたぁ、今回も雑魚やったねぇ」



ぶつぶつ言いながら会議室へと戻っていき、そのものの数分で総社は綺麗にいつも通りに戻った。



ー会議室

「風鈴様かっこいい・・・」


「助けられたい・・・」


「まぁ、本人には言わないんだけど」


「それな」



その会話を聞いていた八意がなぜ言わないのかと質問した

まさか声をかけられると思っていなかった神々は、緊張した面持ちで語る



「そ、その・・・それは・・・」


「風鈴様が調子に乗るから・・・」


「調子に乗るのもかわいいんですけど、でもやはり・・・」


「調子にきたすので・・・ドジふんだり・・・それも最高ですけど!」



八柱は納得した面持ちをした、火雷神が自業自得だな!と言ったところで、風鈴が部屋に戻ってきた。

皆それぞれ持ち場に戻り会議の続きをする。



「で、どうだった風鈴。株はあがったか?」


「杞憂じゃったろう?」



と八意と恵比寿が聞く。風鈴はう~んとしばらく悩んだ結果、わからないと答えた



「みんな怖い思いしたし、うちにすがるのも必然やろ」



全員がため息をついた。こいつはアホなのか天然なのか鈍感なのか。

ーー会議も終わり、会議室から出ると、先ほど助けた神が待っていた。風鈴が出てきたのを見つけると風鈴のもとへ駆け寄る



「風鈴様!」


「ん?」


「お」

「おぉ」

「あら~」



火雷神、八意、志那津がにやにやした顔で風鈴を見守る



「あの、先ほどは助けていただきありがとうございました!えっと・・・戦ってる姿とてもかっこよかったです!これからも負けないでください!・・・で、では!」



何か綺麗に包装された小さな箱を渡すと、逃げるように去って行ってしまった



「これ、うちに・・・?」


「お前以外誰がいるんだ」



月読に突っ込まれる、しかし風鈴はもう聞いていない。キラキラした純粋な瞳で小箱を見つめる。

嬉しさがこみあげてくる。箱を大事そうにぎゅっと抱きしめるた、えも言えぬ嬉しさを嚙み締めた



「ん~~~~~!!」

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