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序章

バタン!と車の扉を閉める音がした。

車から降りてきたのは、スーツ姿の男と動きやすい服装をした男だ。


木々が伸び放題の参道と長い石階段を抜け、2人の男が朝顔が巻き付いた鳥居をくぐった。

石畳の隙間からは雑草が元気に挨拶をしている。

本殿の戸を開くと、ひんやりとした空気と共に、古い木の匂いが鼻をついた。



「ごほっ・・・ここはろくな手入れをされていませんね。埃っぽい」


「この街も再開発の影響で、古い神社の事なんて気にも留めないんですよ。ここの神職は二年ほど前に亡くなって、跡継ぎもいないものですから誰も管理しなくなりました。神職方も人が来ない神社の管理なんてやりたくない方が多いのでね。こうやって視察に来ていただけるだけでもありがたいです。」



電気も付けず、窓からさしてくる光を頼りに奥へと進む。

本殿奥、御神体を祀ってあるであろう扉の前に来た、2人は手を合わせ「失礼します」と戸を開ける。


そこにあったのは、鏡と御幣、それに巻物と風鈴であった。



「これは・・・」



男の1人が巻物を手に取り、もう1人の男が後ろから覗き込んだ。



「あぁ、それですか。この神社には日本神話が書かれた巻物が奉納されているらしいので、それではないでしょうか。私も昔聞いただけなので現物は見たことがないのですが」


「ほう、日本神話?古事記や日本書紀とはまた別物というわけですかね」


「詳しいことまではわかりませんが、ここは元々家内安全、夫婦円満の神様が祀られている神社だったそうなのですが、いつからか祓い神も祀るようになっていたそうです。」



男は、スーツの男の話を聞きながら巻物を読み始めた。



「私も昔、こう言われました。風鈴の音が聞こえたら、近くに風鈴様がいる。悪い子は風鈴様に祓われるぞ!って。まあ、よくある子どもを躾けるための話ですよ。あぁ、良い子は風鈴様が悪いものから守ってくれるんですよ」




とある神社に奉納されている、とある巻物。ここには(おおやけ)には語られない神の名が記されていた。


その名は、鈴音祓神風鈴命すずねのはらいかみふうりんのみこと

通称 風鈴様



ー彼の神、元は百年の間、人の手に大切に扱われし風鈴なり。

 斯くして(かくして)霊を宿し、付喪神と成りし後、一族を護らんと誓いたり。


然れど(しかれど)、一族は凶徒の襲撃に遭ひ、無惨にも皆殺しとなる。

 深き恨みと憤怒にて妖怪へと堕ち、仇を討たんと世を彷徨ふ。


ー然る後、神々の審判により捕らえられ、祓神の道を歩むことと相成る。


ー是の神、常人ならざる因果を負いしものなれど

 その力、やがて高天原をも震撼せしめ

 その名、天地に轟く強き神とならむ。



これは人々が知らない、なんとも人間臭い神様の物語だ。


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