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イグナイト・ボール、そして爆発する夜

僕とカトリーヌは丘の上で花火を打ち上げようとしていた。辺りはすっかり夜になっていた。


「さて、アーサー、準備はいいか?」


カトリーヌが僕に問いかけると、僕は肩をすくめて、無頓着に答えた。


(よし、これでうまく誤魔化せるだろう…)


「別に、いつでもいいよ。試してみて。」


カトリーヌはちょっと考え込んだ後、すぐに頷いて、低い声で呟いた。


「わかったよ、ほら。」


彼女の手のひらに青白い光が集まり、まるで夜空の星が集まっていくみたいに、じわじわと輝き出す。


これ、当たったら熱いだろうな……


僕は少しドキッとした。


(でも、今さら言っても遅いか。)


「じゃ、それ、空に打ち上げてみて?」


カトリーヌは少し迷ったように僕を見てから、空を見上げ、手を振り上げて言った。


「こうか?」


その言葉と同時に、手のひらから火の玉が飛び出し、夜空に向かって上昇していく。


空で小さく破裂して、音を立てて消えていった。


僕は思わず小さく呟く。


「ちっさ…」


(いや、まあ、こんなもんだよな。次はもっと大きくしてくれ…)


カトリーヌは眉をひそめ、じっと僕を見つめる。


「はああ?アタシの胸を見ろ!」


そう言いながら、堂々と胸を張る。


「でっか…」


僕は慌てて手を振る。


「いや、違うんだよ。胸じゃなくて!もっとこう……ドーンって!」


自分でも何を言ってるのか分からないけど。


カトリーヌは少し考え込み、やがて目を輝かせる。


「じゃあ、こうか!」


手のひらから火の玉が放たれる。今度は少し大きく、華やかに爆発した。


「どうだ?」


「うーん……まだ違うな。」僕は肩をすくめる。


カトリーヌが不機嫌そうに言い返す。


「何が違うんだよ!説明してくれよ!」


「僕だって、わかってほしいんだよ!」


必死に訴えると、彼女は大きくため息をつく。


「ったく、しょうがねえな……見とけよ!」


もう一度火の玉が打ち上がる。でも、やっぱりただ爆発するだけだ。


「これでどうだ!?」


「うん、でも……何かが足りない。」


カトリーヌが目を輝かせて聞く。


「な、何か気づいたのか?」


僕は真剣に言い返す。


「いや!違うんだよ!雰囲気が大事なんだ!まずは、姿勢からだよ!」


カトリーヌは呆れたように言った。


「おっおう…なんだよ、急に…」


僕は思わず体を震わせながら、命令する。


「よし!カトリーヌ二等兵!まず、足を開くんだ!」


カトリーヌは驚きながらも、何も言わずに言われた通りにする。


「えっ!二等兵?こんな感じでいいのか?」と、少し困惑している様子。


僕はうなずきながら、さらに続ける。


「もっと腰を落とせ!そう、尻を突き出して!まるで夜空の炎を支える女神のように!!」


カトリーヌが再び躊躇しながら言う。


「えっと…こんな感じか?」


僕は大きな声で叫ぶように言った。


「違う!もっと気合を入れろ!恥ずかしがってるんじゃない!“豪火の舞姫”という二つ名に笑われるぞ!」


カトリーヌがふざけて、照れくさい顔で言った。


「なんでだよ…仕方ねぇ!わかったよ!本気でやってやるよ!」


そして、いきなりドヤ顔でポーズを決めた。


「よし、いいぞカトリーヌ!だがその顔はなんだ!?もっとキメ顔をしろ!そう、まるで世界を燃やし尽くすかのように!!」


「はぁ!?世界を燃やし尽くす顔!?……こうかッ!!」


カトリーヌは眉間に皺を寄せ、歯を食いしばり、まるで大魔王のような迫力のある表情を作る。


「違う!もっと優雅に!神々しく!!」


「無茶言うな!!」


(やばい…楽しくなってきた。)


僕はそれを見て、少し笑いながら言った。


「いいぞ、その調子だ!そのまま、片手を空に上げて魔法を撃ってみろ!そして夜空に向かって叫べ、イグナイトボールだ!」


彼女は一瞬で集中を決め、手を振り上げる。


カトリーヌの瞳が真剣な色に変わった。そのまま、力強く宣言した。


「イグナイトォ・ボォォォォル!」


火の玉は勢いよく夜空を駆け上がり、ドォン!!と派手に炸裂した。


光の余韻が夜空にちらちらと残る。先ほどとは比べものにならないほどの輝きだ。


カトリーヌは満足げに胸を張り、ドヤ顔で振り向く。


「クッ」


思わず笑いそうになって、口を引き結ぶ。


声を漏らさないように必死でこらえたけど、目の端でカトリーヌの姿が目に入ると、やっぱり無理だった。


そして、あたりはしんと静まり返る。


カトリーヌが無言で歩み寄ってきた。


スパンッ!!


「あぅ」


「やらせんじゃねえよ!バカやろう!」


突然、僕の頭がバシッと叩かれた。


(いてて…ちょっと調子乗りすぎたな…。教官気取りして、やりすぎちゃったよ。)


―――


カトリーヌが火の玉を打ち上げたとき、村の広場の隅にいた村人たちが一斉に顔を上げる。


空で火の玉が爆発し、赤い光が一瞬だけ夜空を照らした。


その後、何も音がなく、煙だけが上がっていく。


「こ、これは…?」


「魔法か…?」


村人たちは驚きの声を上げ、異常な光景に目を奪われていた。


「みんな、落ち着け!あれはカトリーヌの魔法だ!」


ラルフの声が、慌てた村人たちを引き止めるように響く。


「大丈夫だ、心配するな、何も危険じゃないから!」


その声には、明らかな焦りと必死さが込められていた。


周囲を見渡し、村人たちの不安そうな顔を一人ひとり確認しながら、ラルフはさらに強く言葉を投げかける。


「絶対に何も悪いことは起きない!大丈夫だ!」


その場にいた全員が、ラルフの必死な訴えを感じ取り、少しずつ、しかし確実に緊張を解いていった。


(一体カトリーヌは何をやってるんだ…あの場所に行ってみるべきか…)

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