カラミティ(厄災女)に騙されて配下にされました
この話読んで頂いてありがとうございます。
今日3話更新します。
この世界が悪がはびこる世界だと知って俺は荒れた。
いや、そんないい考えじゃない。俺は自分の境遇がうまくいかないことに切れたのだ。せっかく剣聖になれて、貴族の令嬢を婚約者に出来てこの世を謳歌していたのに、冤罪をかけられてこんなところに左遷された事に自棄になったのだ。
ムカついた俺はその大都市の飲み屋で一人で飲んでいた時だ。
カジノに誘われたのだ。
「カジノになんて行ったことなんてないぞ」
俺は断ると
「カジノって言ってもやっているのはポーカーなんだ。あんたは見た所は兵隊さんみたいだし、宿舎とかでやったことあるでしょう」
「そらあ、あるが」
俺は野生の勘が鋭いのか、ポーカーではめったに負けたことがなかった。
「いやあ、実は俺もカジノに行ったことがなくて。でも、この街はカジノで有名だし、この街に来たのなら一度くらいやってみたいなと思ったんだ。でも、怖いお兄さんがいたら嫌だし……その点兵士の方と一緒ならいざという時は助けてもらえるかなと」
男が人の良さそうな顔で頼んできた。
「で、俺を誘ったと?」
「はい。だから来てくれたらとても嬉しいんだ」
トムと名乗った男は人懐っこい顔で拝むように頼んで来た。
まあ、俺はポーカーは暇つぶしに騎士団でもよくやっていたので、多少の自信はあった。聖騎士団だから、金を賭けるのは厳禁だったが、食事当番なんかを賭けてやって、俺はほとんど負けたことがなかった。それに今の気分も最悪だったので、つい、一度くらいやっても良いかと乗ってしまったのだ。
その飲み屋の二階がカジノになっていて、俺はそのトムという男と一緒にとあるテーブルに案内された。
そこにはいかにも胡散臭そうなディーラーがいた。
しかし、俺はそのデイーラーなんて見てもいなかった。
その横には目の覚めるような美人がいたのだ。金髪碧眼のその美人に俺は目が点になってしまった。どこかの貴族令嬢だろうか? この自由都市エムネスには色んな国から多彩な者が遊びに来るのだ。どこかの国の貴族の令嬢がいてもおかしくはない。
俺の婚約者だった女なんて、この美女に比べたら目じゃなかった。
その女は俺が見たこともないほどの美貌だった。
その美女がニコリと俺に笑いかけてきた。
俺は男に誘われてカジノに来て、なんてラッキーなんだと思ってしまったのだ。
それが間違いの始まりだった。
ポーカーはその美女と俺とトムの3人でした。
そして、俺は運が良かったのか、勝ち続けた。
チップがどんどん増えていった。
美女はさすが貴族の令嬢らしく、お金持ちみたいでどんどんチップを積んできた。
勝っていた俺は余裕で対抗できたが……
その美女は表情がコロコロ変わって、すぐに手札が判ってしまうのだ。
いいカードが来ると喜んで、無いと悲しむ。
これほど楽なポーカーはなかった。
そして、運命のゲームになった。
俺の手元にはエースが二枚あった。1ペアだ。トムは手札を見るなり、あっさりゲームを放棄した。
俺はとりあえず、10枚のチップを追加した。美女もそれに合わせる。
俺は3枚のカードをチェンジした。
何と、その中に残りのエースが2枚入ってきたのだ。フォーカードだ。
これで勝ちは決まった。
でも、酔っていた俺は大きな気分だったので、有り金を全てかけてしまったのだ。
しまった!
賭けた後でそう思ったが、後の祭りだ。
普通はこれだけ自信満々にチップを賭けるのを見たら、相手は降りるだろう。
もう少しチップを少なくしておけば良かった。
でも、美女はニコリと笑うと、1枚を捨てて交換した。
そして、ニコリと笑ったのだ。
2ペアでも、持っていてどちらかのペアが3枚になる、すなわちフルハウスにでもなったのだろうか?
美女がフルハウスでも、俺のフォーカードの方が上だ。
でも、ここで喜んではいけない。俺は漏れそうになる笑みを必死に噛み殺した。
「あら、ごめんなさい。チップが足りないわ」
美女が言ってきた。
しまった!やはりチップをかけすぎたのだ。
折角の儲けるチャンスが……俺はがっかりした。
「そこの兵隊さん。もしよろしければ私の体で支払いますわ」
「はっ?」
俺はこの美女が何を言い出したのか一瞬判らなかった。
「あなたが勝ったら一生涯私を自由にして良いって言いましたの」
女は艶然と俺に微笑みかけてきたのだ。
普通の男だったらイチコロだったろう。
でも、俺は元剣聖だった。今は一兵士に格下げになっているが、剣聖をしている時はパーティーなんかに出ると、必ず女どもが群がって来たのだ。女には慣れているはずだった。
ただ、そんな俺でも、美女の申し出に少しぐらりと来た。この美女はそれほど美しかったのだ。
「いや、でもそれは……」
さすがに俺は断ろうとした。
「あああら、兵隊さんともあろう方が負けるのが怖いの?」
この美女は何と俺を挑発してきたのだ。
「ふんっ、良いだろう。でも後で泣いても知らないぞ」
俺は一応忠告してみた。
「でも、兵隊さん。こちらの美女が自分の体を張ってきたのに、兵隊さんはチップだけですか? 甚だ釣り合わないと思いますが」
横からトムが言ってきた。確かにそうだ。
「そうだな。判った。俺もこの体をかけよう。あなたが勝ったら俺の体を好きにして良い」
「本当に? 私の下僕にでもなって下さるの?」
女が確認してきた。
「当然だ」
俺は酔った勢いと手持ちのカードの良さで頷いてしまったのだ。
俺のこのカードで負ける訳はないのだ。
「じゃあ、勝負だ」
俺は手持ちのフォーカードを女に見せたのだ。
これでこの女は俺のものだ。
酔った勢いで、邪な考えを持ってしまったのだ。
「ふーん」
女はそれを見て不敵な笑みをしてくれたのだ。
えっ? 何故だ?
何故慌てない?
普通このカードで負ける訳はないのだ。
例え女が4カードでも俺はエースだから一番強いはずだ。
女は手持ちのカードを俺の目の前に置いてくれた。
なんと、女が出したのは9からクイーンまでのダイヤのストレートフラッシュだったのだ。
俺は頭の中が真っ白になった。
「はい。私の勝ちよ」
女が艶然と笑ってくれた。
「そんな馬鹿な」
俺は信じられなかった。
「さあ、今からあなたは私の下僕よ」
女はそう言うと笑ってくれたのだ。俺は完全に女にはめられたのを悟った。
俺はその日からこの女の下僕になったのだった。
そう世界最凶の『傭兵バスターズ』の一員にならされたのだった。
本日2話目です。
今夜更新予定です。
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