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老魔術師に魔術を習うことにしました

「ギャーーーーー」

落ちる、落ちるじゃない。


私は地面に向けて突き落とされたのだ。

どんどん地面が近付いてくる。

今までの人生が走馬灯のように私の脳裏を流れた。

本当に死ぬ前と判ったら、今までの思い出が流れるんだ……

いや、このままでは死んでしまう。


止まれ!

心の中で呪文を唱えた。ダメだ!


止まれ!

心の中で叫んだ。ダメだ!


「止まれ!」

呟いた。ダメだ


「止まらんかい!」

私はありったけの声で叫んでいたのだ!


びたっ、と止まった。

地面が目の前にある。


ダン!

ほっとした途端、私は地面とキス、いや違う、激突していた。


「痛い!」

私は顔を抑えていた。


「お嬢様、大丈夫ですか!」

血相変えて、エイミーがすっ飛んできた。


「いきなりいなくなられて心配していたら、今度は空から落ちて来られてびっくりしました」

エイミーが私の傍で心配して悲鳴に近い声を上げてくれた。


「ほっほっほっほっ、小娘。死ぬ気になればできるだろう」

そこにジャルカの笑い声がしたのだ。


「何言っているのよ! このクソじじい! 危うく本当に死ぬところだったじゃない!」

私が怒り狂って叫んだ。


「何を言っとる。だから、儂はガキは死ぬ可能性があると警告してやったじゃろうが……そこの娘なら問題ないと言ったであろうが!

それをお主が耄碌爺などと馬鹿にしてくれたから、訓練してやったまでじゃ。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないわ」

ジャルカは笑って言ってくれたが、


「100メートルの高さから落とされたらいくらエイミーでも死んでいたじゃない」

私が文句を言うと

「何を言っている。こやつは100メートルの高さから落ちても死なんだけの訓練をしておるわ」

ジャルカは断言してくれた。

確かにエイミーなら死なないかもしれないが……


「はああああ! 何を仰っていらっしゃるのですか! お嬢様をこのような危険な目に合わすなど言語道断です。このような危険な方にお嬢様をお預けするわけにはまいりません」

エイミーが私を庇って前に出てくれた。


「何を申しておるのだ。元々、その方の主が儂に魔術を孫娘に教えてやって欲しいと頼んで来たのじゃろうが」

「しかし、このような危険な事をするなど聞いておりません」

「ふんっ、儂が書いた魔術の訓練書の最初に、魔術を発動するには『崖から飛び降りるつもりになればできる』と書いておる。ここには近くに崖が無かったから空から落としてやったまでじゃ。儂は全ての弟子にはそのようにして教えて来たのじゃ」

ジャルカはさも当然のように言ってくれた。


私は頭を抱えたくなった。

そうか、家にあった魔導書はこいつが書いたものなのか。あんな読んでも何が書いてあるか良く判らなかった本はなかったが、この老人が書いたものならば理解できた。

元が狂人だから仕方がないのだ。


「どこの世界に魔術を発動させるために崖から突き落とす人がいるんですか? そのようなこと聞いたことがありません」

エイミーがぶちぎれて叫んでいた。


「何を言うやら、魔術の訓練は最初が肝心なのじゃ。最初の発動の力が大きければ大きいほど、成長が早いのじゃ。自らを死地において最初の魔術を発動した方が良いに違いなかろう」

ジャルカはさも当然のように言ってくれたが、いかにも胡散臭かった。


「小娘よ。信じておらんな。だからガキは嫌いなのじゃ」

ブツブツジャルカは言っていたが、

「ええい、仕方がない。特別講義じゃ。小娘よ。試しに火をともしてみよ」

「火を灯す?」

「心の中で火をイメージして、灯してみるのじゃ。このように」

ジャルカは手の平を上に向けて小さな火の玉を出してくれた。


火がついた。私も出来るのだろうか?


私も半信半疑で手のひらを上に向けて火の玉をイメージしてみる。


ボオーーーー


「キャッ」

私は驚いた。

眼の前にいきなり巨大な火の玉が現れたのだ。


手を引っ込めると出した火の玉だけが残った。


巨大な火の玉がゆっくりと漂っていた。


でも、それは徐々に私に近づいてくるんだけど……


「何をやっておるのじゃ。小娘、今度はこの火の玉に水をぶっかけてみよ」

「水を?」

「そうじゃ。上から水を掛ける要領でイメージするのじゃ」

私はジャルカにそう言われてイメージしたのだ。

大量の水をぶつかけるさまを。


ザブーーーン


次の瞬間、私は自らも含めて大量の水を頭の上から被っていたのだ。


火の玉も消えたけれど、私自身もずぶ濡れになった。



「ほっほっほっほっ、自らも水をかぶるとはさすがガキだ」

そう言ってジャルカは笑ってくれた。


「何笑っているのよ。あなたの言うように水をかけたじゃない。なんとかしてよ」

ずぶ濡れの私が言うと

「煩いガキじゃの。今度は自分に温風を当てるのじゃ。熱風でなくて温風じゃぞ。それも少しずつな」

「少しずつね」

私は温風が私に当たるようにイメージした。

するとどうだろう。本当に温風が私にゆっくりと当たったのだ。


少し強くすると温風が強くなって私はあっという間に乾いたのだ。


「凄い乾いた」

私は唖然とした。


「どうじゃ、小娘よ。ちゃんと魔術は使えただろうが」

「うん」

私は満面の笑みを浮かべたのだ。

心の中で誓ったのだ。

どんな事をしても私はこの老人から魔術を習おうと。


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