お祖父様に引き取られた私は、盗賊に襲われたところを白馬の騎士様に助けられました。
『帝国のピンクのバラ』は私の学生時代に流行ったゲームで学生時代人見知りであまり友達のいなかった私がやり込んだゲームだった。
ブラック企業に勤めていたから忘れていたけれど、何回もやったゲームだった。
ゲームの開始時私は17歳、帝国貴族の通う学院で話が始まる。
私の役回りは公爵令嬢キャロライン・オールドリッチとして、皇太子ジークフリートの婚約者なのだ。
食べ物もろくに与えられないこんな状態で、どうやって皇太子の婚約者になったかは定かではないが……この時は皇太子の婚約者だったらしい。でも、そこにヒロインであり妹であるニーナが学園に入学してくるのだ。
皇太子は愛くるしい妹のニーナに惹かれて、それを見た悪役令嬢の私はニーナを虐めまくるのだ。
妹は「お姉様には家でも私のお母様の身分が低いからと虐められていて大変なんです」とか言ってジークフリ……もう面倒だからジークにしなだれかかるのだ。
ちょっと待て! 今、虐められているのは私なんかだけど、下手したら飢え死にしてしまうんですけど……、このガキは喜んで腐ったパンを持ってくるし……どういう神経して私が虐めたなんて言えるのよ! どう見てもいじめているのはあなたでしょ!
現実を知った今ならそう叫べるけれども、このゲームをしていたときはこのヒロインの言葉にそうだそうだ! なんてキャロラインは悪いやつなんだ、と娘心に思っていたのだ。
その時の私を張り倒してやりたい。
でも、ゲーム上でキャロラインは実際に取り巻きを使ってニーナを虐めていた。最後は破落戸を雇ってニーナを傷物にしようとして、ジークにそれを邪魔されたのだ。そして、逆にサマーパーティーにて断罪、処刑されてしまう。
ちょっと待て! それは確かにニーナを傷物にしようとするのは悪いがいきなり処刑はないだろう。キャロラインは公爵令嬢なのだ。それもその母は有力な伯爵家の血が流れていたはずだ。いくら皇太子と言えども幽閉が限度のはずなのに!
まあ、幽閉エンドもあったが、そのときは途中で破落戸共に襲われて行方不明。あるいは平民落ちで国外追放とか碌な事がないのだ。
キャロラインは死ぬか、娼婦落ちしかないんだけど、どういうこと? それは確かに私は前世は悪いことしていたけれど、でも、生きるためには仕方がなかったじゃない。実際、最後は殺されたし……
私はゲームで悪役令嬢が、断罪される度に、ニーナのために良かった良かったとなっていたのだが、全然良くはないではないか!
自分がまさか、その悪役令嬢になるなんて思ってもいなかった。
どうしよう。絶対に断罪は回避しないと。
でも、今はそれ以前に今を生きながらえるほうが大変なんだけど……ここで飢え死にしてしまったら意味がないじゃない。
まあ、食事は自分で作っているから飢え死にすることはないと思うけれど……
私はまだ、5歳で作るのも大変なんだから……
とりあえず、魔法を使えるようにならないと。
この世界は魔法を使えるのだ。
生き残るためには必要だろう。キャロラインもある程度の魔法は使えたはずだ。
私は図書室から魔法の本を借りてきて、読んだんだけど、良く判らなかった。
やろうにも出来ないのだ。
かかれていたことが難しすぎたのかもしれない。
「崖から飛び降りるつもりになればできる」とか、本当に訳が判らなかった。
どうしよう?
そんな私を救ってくれたのは、伯爵家出身のお母様のお父様、つまり私のお祖父様だった。
姿を全く見せない私に業をにやして、我が家に突撃してくれたのだ。
私の現状を見て怒りまくったお祖父様は私を自分の領地に連れて行ってくれた。
お父様がブツブツ文句を言ったが、
「満足に食事も与えられない甲斐性なしの貴様には孫を育てる資格はない」
と強引に連れ出してくれたのだ。
私はお祖父様の屋敷でやっと人並み、いや違う、貴族の贅沢な暮らしをできるようになったのだ。でも、これで、なんでキャロラインが、ニーナを虐めたのか良く判った。キャロラインは今までされた分の復讐をしていたのだ。キャロラインにとって、お祖父様に助けられるまでの生活は屈辱だったに違いない。
まあ、私も思うところがないわけではないが、前世の記憶が甦った私からしたら、ニーナのしてきたことなんて、可愛いものだった。別に関わりたくはなかった。浮気者の皇太子の婚約者にもなりたくなかった。
この生活が続けられたら、いうことはないのだ。私は領地でのんびりした生活にどっぷりと浸かってしまったのだ。
そんな時だ。
私は領地の隣町に出来た。おしゃれな雑貨屋さんに馬車を使って買い出しに出たのだ。
護衛の騎士も2騎付いて来ていたけれど、まさか、その馬車が盗賊に襲われるとは思ってもいなかった。
盗賊は10騎以上いて、私の騎士はあっという間に斬り伏せられて、馬車はたちまち盗賊達に取り囲まれてしまったのだ。
扉が開かれて侍女も私も引き出されてしまったのだ。
「ほう、侍女は高く売れそうだな。このお嬢ちゃんはあと10年も経てばべっぴんになりそうだな」
盗賊の親分らしい男が下ひた笑いをしてくれた。
私はナイフを突きつけられて、歯ががたがた震えるしか出来なかった。
前世殺されたのもトラウマになっていたのかもしれない。
騎士たちが買い物に出るのを躊躇した時に私も我慢すればよかったのだ。
この世界は決して前世の日本と比べて治安が安全な訳はなかったのだ。
「何をしている!」
その時、後ろから駆けてくる馬の足音がした。
そちらを見ると、白い甲冑に身を固めた騎士が白馬に乗ってこちらにかけてきた。
「騎士だ」
「お頭どうします?」
「たった一騎だ。やってしまえ」
盗賊たちは剣を抜くと騎士に斬り掛かった。
「ギャッ」
ドテッ
最初の盗賊は振り降ろした剣を避けられて騎士の剣で斬られて落馬していた。
「この野郎……ギャーーーー」
次の盗賊も斬られて血しぶきを上げて落馬する。
白馬の騎士は馬に乗った盗賊たちの剣を避けるやいなや、次々と斬り伏せていったのだ。
その剣技は見ていてもとてもきれいなものだった。
私は攫われようとしているにも関わらず、思わずその剣技に見惚れてしまったのだ。
気付いたら盗賊の親分以外は斬り倒されていた。
「おのれ! これ以上近づくな。近づくとこの子を殺すぞ」
盗賊の親分は私の首筋に剣を突きつけたのだ。
私の心臓は飛び出そうなほど鳴っていた。
「ほお、お前も死にたいのか」
でも、騎士は全く動じることがなく盗賊にそう言い放ったのだ。
私が止めて! と叫ぶ間もなく。
「な、何だと、てめえ!」
盗賊の親分はいきり立った。
「この子がどうなっても……ギャアーーーー」
しかし、次の瞬間、盗賊の親分の絶叫が響いた。
男の突きつけていた剣がいつの間にか無くなっていたのだ。
私には何が起こったか、一瞬理解できなかった。
私は騎士が目にも止まらぬ速さで、剣を持った盗賊の親分の腕を斬り落としたのを見ることが出来なかったのだ。
吹き出る血潮の中でショックで気を失おうとした私はその騎士様に抱きかかえられたのだ。
そう、白馬の騎士様の腕の中で私は気を失っていたのだ。
ついに白馬の騎士様の登場です
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