あいすくりぃむ you&me
蟻のように一日中働き詰めで、そんな自分へのご褒美は、コンビニで買ったお高めのアイス。
帰りがけ、カパッ、と蓋を開け、深夜で人目が無いのを良い事に、はしたなく上蓋をナメる。
そしてパッ、とそんな姿をハイビームに照らされて、私はドンッ!グチャッ! バタンッ!
なにが起きたのか、一瞬で理解しながら、なにも理解出来ない。なんで目の前に私のヒール? ああ、やだ。もうこんなに足がむくんじゃってる。
バタバタと慌てたような音と、キーキーと言い争うような声。そしてぐいっ、と身体が持ち上げられ、ドスン、と車の中に入れられる。
病院に連れて行ってくれるんだ。でもどんどん街明かりが遠ざかって行く。こんな所に病院があるの?
そして車が停まると、ずざぁっ! と地面に投げ出された。
ひそひそと怯えたような囁き声。それが離れようとしていたから、私は必死に手を伸ばした。
「たす、け……」
「ひいっ!?」
ゴッ!
さわさわさわ。
ぞぞぞぞぞ。
ぷち、ぷち、ぷちゅり。
ああああ、やめて、わたしをもっていかないで。
ぶぶぶぶ。
じーじーじー。
ぐち、ぐち、ぐち。
ああああ、そう、わたし、あなた、あなたたち、わたしたち、わたしあなた。
ぎちぎちぎち。
ばばばばば。
みち、みちみちみち。
ああああ、そう、わたし、かえして、あなた、いこう、あなたたちでわたしを。
あいす。あいす、すき。ばにら、ばにら、ばにらあいす。
そう、そこ。ここ。ここから、どこ?
あっち。あっち。あそこ。そこ。ここ。
こいつ。こいつら。あなたを、わたしたちを。わたし。あなたたちで。
さあ、こいつらもわたしたち。
「ねぇ、どうするの?」
「大丈夫だって、先輩がバンキンやってっから、車はさ」
「でも、目撃者とか居るんじゃないの? 監視カメラとか」
「ンなもんバレねぇって! なんならここ離れたってーー痛てっ!? なんだ、蟻?」
「ちょっと、なんでそんないっぱい、いやぁっ!?」
「なんだよこれ、どっからーーぎゃあっ!?」
「爪、なんで、取れ、指、骨ぇっ!?」
「やめろ、持ってくな、俺の脚だぞぉっ!」
「いやぁぁぁぁっ! 頭ん中ぁ、出てけぇぇぇぇっ!」
「ああああ、おれ、おまえ、たち? おれはぁぁぁぁ」
あはははは。ほら、これでもう、わたしたち。
蟻の話です。伝わってますかね?
臓器提供された人がドナーの記憶を継承する、みたいな話を聞いた事があり、それを蟻がOLさんの遺体をアレして群れがそのままOLさんに、みたいな事です。