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一人と独り  作者: 金平糖
2/2

家庭

母が父に向けて包丁を突きつけている。何かを叫んでいるが何を言ってるのか全く分からない。

多分ケンカをしているんだろうな、と今なら分かる。

夜は眠るとふすま越しに何かを言い合ってる声が聞こえる。


母は生活のために毎日、家の下が喫茶店になっている店で働き、スナックになる夜はそこでも働いていた。


ギャンブル依存症の父は毎週日曜日になるとどこかへ消える。

時々父にパチンコに連れていかれたが、中には入れないために、外で待たされることもあった。

父のタバコが無くなると、1円やら5円のかき集めた小銭で買わされにも行った。


「おい舞子、靴下に穴あいてんぞ」

服もまともに買ってもらえない靴下は、毎日穴が空いていた。この一言で舞子は、自分の家がみんなとは違うことに小学生になって初めて気付いた。

『みんなの靴下には、穴が空いてないんだ…』


それでも小学生の頃はとても楽しかった。

休みの時間、放課後、休みの日には学校でみんなと遊んだ。家で起きる何もかも忘れられる。

その頃の舞子には『忘れる』という感覚は無かったが、毎日走っていたのを覚えている。


そして、給食がない早く帰った時には喫茶店で母がよくミートソースやナポリタンのスパゲティを作ってくれた。とても美味しかった。何より、母と少しでもゆっくりと話せる時間でもあった。


しかし舞子がいちばん辛かったのは、家にいない母が、スナックでどこかのオジサンと歌っている曲が、上にある家の床から聞こえるその音が嫌いだった。

夜にも母が居なかった。

本当なら夕飯の後にたくさん話したかった。

学校であったこと、友達と話した色んなことを話すことが出来なかった。


その代わり、夜になると父が寝室にやってくる。

そういった知識がまだ無かった舞子の体や胸を一通り撫でると父は戻っていく。

舞子には当時それだけ、父に好かれているんだと思っていた。


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