最近よく聞く「気圧のせいで頭が痛い」って本当?
近年、SNS等で頭痛やめまい、倦怠感等の不定愁訴と気圧の変動を関連づけている発言をよく目にするようになった。「低気圧のせいで頭痛がひどい」「低気圧のせいで体調最悪。おとなしく寝てよう」などという言葉を目にしたり耳にしたことがある人は多いのではなかろうか。あるいは実際に症状として経験している人もいるかもしれない。
幸いにも私はこれまで一切そういった症状に悩まされたことがない。なので、当事者たちの苦しみがわからなかったし、本当に原因が気圧の変動によるものかについても懐疑的だった。少なくとも十数年前にはそのような意見を目にすることは稀で、ここ数年で爆発的に増えた印象がある。ただ、このような風説が一般に広がっているという事は、社会で一定の賛同が得られているのだろうとも推察できる。その根拠はどこにあるのかふと気になった。
そこで今回、気圧の変動と体調変化の因果関係を証明している科学的根拠をインターネットの情報から調べてみたところ、中々に興味深かったのでそのまとめとしてエッセイという形で文章にしてみた。そもそもインターネットから得られる情報自体に限りや偏りがあり、また私の情報収集力も稚拙なため、内容からすると学生のレポート未満のものなので、その妥当性は横においてあくまで読み物として目を通していただけるとありがたい。
調べるにあたってまずはざっくりと「気圧の変化 人体」とGoogleで検索した。すると、「気象病」なるワードがヒットした。これまで聞いたことのなかった病名である。どうやら正式な医学病名ではなく、「気候や天気の変化が原因で起こる体調不良の総称」をさす言葉だそうだ。意外にも最近の造語ではなく、1940年代頃から使われるようになったらしい。当時は結核が猛威をふるっており、その主症状のひとつである喀血と気象の変化の関係を中心に研究されていた。1955年に日本医科大学内科学教室の岩淵勉によって書かれた論文を読むと、同教室内では毎日気象の観察を行っていたとあり、その熱心さが伺える。とはいえ、結核は画期的な治療および予防法が確立されその数を大幅に減らすことに成功したため、このような研究は自然と下火になっていったと考えられる。ただ、以上のことから医学界では以前から気候変動と病気について研究がなされていたことがわかった。
では、実際に気圧の変動で人体にどのような変化がおこるのか。これはさまざまなサイトを要約すると「内耳が気圧変化を感じとり、それを脳に伝えることで自律神経を調節する」そうである。当たり前のようにヒトは気圧の変化を感知できると書かれていたが、私はそのことを知らなかったので驚いた。少なくとも生物の授業では習っていない内容である。なので内耳でどうやって気圧の変化を感知しているのか詳しく書いてあるものを探した。
すると、2019年に発表された中部大学の研究で、「マウスに気圧の変化を与えると、内耳からの刺激を中継する神経核細胞の興奮が見られたことがわかった」とある。そもそもこれまで哺乳類に気圧覚受容器の存在が証明されたことがなく、このマウスの実験によって初めてその存在が認められたようだ。これにより、同じ哺乳類のヒトにも同様の現象が起きると考えられる、とある。つまり、まだヒトではその存在が完全に証明されたわけではないのだ。それなら知らなくても当然である。私は安心した。
ここまで調べた私の感想は、率直に言って「なんだ、ヒトが気圧を感知できるかまだ分かってるわけじゃないんだ。じゃあ気圧で調子が悪くなるのも気のせいなのかも」だった。ただ、気のせいにして片付けるにはあまりにも症状に悩む人が多い。なので他の角度から研究している内容がなにかないか再び検索した。
するとひとつに興味深いものがあった。気候の変化による疼痛を訴える被験者を人工低気圧環境に曝露させて変化を観察したところ、疼痛の増悪が見られたというものだった。つまり、この症状には再現性が認められたのだ。
やはり、気圧によって体調が変化する人はいた。
これらの研究は2010年代から活発に行われるようになっているようだった。気圧の変化という原因と疼痛の増悪という結果には因果関係があり、そのメカニズムには内耳が関わっていることが動物実験から示唆されているがまだわからない部分も多い、というのが現状なのだろう。
私が今回簡単にではあるが調べてみて、世間の関心に研究が追いついておらず、「気候の変化で体調が崩れる」という言葉がひとり歩きしているように感じた。分かったような解説でいたずらに不安を煽っているように見えるものもあった。これからこの分野の研究が更に進み、詳細なメカニズムの解明や診断法や予防法、治療法が確立される日が来ることを願う。




