File.27 侵食
あぁぁん! 水着タキ○ン出ないよぉぉ!!(先頭狂スレンダー美女は出た)
(ん? 今の音…… )
「彩音ちゃん、どうしたの? 」
保健室の先生が聞いてくる。
「い、いえ。なんでも無いです 」
「そう。彩音ちゃんって紅茶は好きだっけ? 」
「まぁ……はい 」
「じゃあどうぞ 」
スーッと鼻に抜けるような香りのお茶。
それを綺麗な黒髪の先生が入れてくれる。
なんだか自分まで優雅になったみたいだ。
「えへへ、ありがとうございます 」
「別に良いよ、私もお茶仲間が欲しかっただけだし。それで……相談ってなぁに? 」
「えと……そのぉ、少し汚い話なんですけど…… 」
「別に大丈夫だよ。女同士なんだし 」
一口お茶を含み、舌に集まる苦味を飲み込んでから口を開く。
「…………生理が来ないんです 」
一瞬、時が止まったみたいな静寂が流れた。
「あぁごめん。えっと……体調不良? それとも誰かとハメ外しちゃった? いやハメちゃったの? 」
「違うんです! ちょっと怪異化してからそういうのが来なくって…… 」
「……なるほど 」
先生はすぐに頷くと、棚の中から小さな薬を取り出した。
「じゃあこれ、飲んで 」
「えっとぉ……なんの薬ですか? 」
「……怪異化の進行を抑えるものだよ。本格的な治療は準備が居るから、とりあえずこれ飲んで 」
「……はい 」
大丈夫……なのかな?
先生の顔、少し怖いし……もしかして重病だったりするのかな。
でも飲まないのも悪いし……
「飲んだ? 」
「はい。これちょっと甘いですね 」
「うん。そういうお薬だからね 」
先生は笑って頭を撫でてくれる。
そのおかげかな?
少し眠気がやって
「……ッ!!! 」
「へ? 」
悪寒。
次に爆音。
落ちてくる天井を蹴りで弾き、すぐ先生を抱えて廊下に飛び出す。
「大丈夫ですか!? 」
「……うん、それより今のは? 爆弾? 」
「分かりません。でもとりあえず逃げ」
「彩音!? 」
「っ!? 」
後ろ。
そこには真城さんが居た。
その背中には男の人が背負われてる。
「大丈夫か!? 」
「はい。その人は」
「腹を撃たれてる! 速く咲を呼んでくれ!! 」
「咲ならさっき忘れ物を取りに……というか誰から撃たれ」
言葉を遮る前に、フッと、窓から影が差した。
「っ!? 」
ガラスが割れる。
と同時、黒服の大人が何人も廊下に乗り込んできた。
(誰!? )
黒いガスマスクを付けた顔が向く。
黒いものも向けられる。
それは銃だ。
「子閉じ!! 」
殺そうとすぐに腕を振るう。
でも放った黒い衝撃波は、人どころか弾丸すら逸らせなかった。
(っ゛!? )
「しゃがめ!! 」
咄嗟に伏せる。
風が逆巻き、辺りの教室ごと大人たちの胴がずり落ちた。
「大丈夫か!? 」
「はい。腕で受けましたから。でも怪異が発動しな……あっ 」
怪異の出力が落ちてる。
その原因に心当たりがあった。
(救われたんだね。だからそんなに弱くなってるんだ )
『お前は独りじゃねぇ。不安だけど……生きてたらなんとかなるぜ 』
「……… 」
「痛むのか? 」
「いえ、大丈夫です。というかこの人たち、誰ですか? 」
「……ありえない 」
そう言ったのは先生だった。
血まみれの銃を持って、肩を震わしてる。
「これ……日本の銃だ。自衛隊で使われてた……なんで私まで 」
「先生? どうし」
近付こうとした。
そしたらゴンッ。
音が鳴った。
……どこから? 右耳から。
殴られた?
「おい彩音!? しっかりしろ!! 」
声が遠い。
いや違う、私が倒れたんだ。
いつ攻撃喰らったっけ?
怪異……?
手が震える。
内蔵がビクビク跳ねる。
頭がグラグラ揺れてる。
あっ……これ……まずっ…………
♦
(息はある…… )
安心した。
すぐに彩音の首から手を離し、辺りを警戒する。
(つーかアイツら誰だ? 日本の銃? 敵なのは間違いねぇ。けどなんで銃器? 怪異を使わない理由があるのか? 怪異なら怪異でしか殺せねぇのに。彩音は怪異の攻撃を受けたのか? つーかなんでコイツら黒いマスクを? 分からねぇよそんなの!! )
脳を回すが分からない。
分からないことだらけだ。
けどやる事は決まってる。
彩音たちを守る。
咲を探す。
んで歩を見つけて保護する。
アイツは怪異を持ってねぇから、銃で攻撃されりゃ死んじまう。
「っ!? 」
またガラスが割れる。
飛んできたのは、
(手榴弾か )
すぐに爪を増殖。
手榴弾を包み、外に蹴り出す。
と同時。
また黒マスクの敵がゾロゾロと飛び込んでくる。
(まぁコイツら弱ぇし)
銃弾を躱し、弾き、
「問題はねぇ 」
増殖させた爪の刃を飛ばす。
それは廊下を裂き、壁を削り、人を縦に横に、人体をケーキのように切り分けた。
「先生! 俺が守るんで彩音たちお願いします!! 」
「分かった!! 」
弾を切り、肉を切り、死体と爪でフラワーロードを作る。
その途中、
「たす……けて 」
「っ!? 」
攻撃を辞める。
ボロボロな教室の入り口に、倒れているパンドラ生徒が居たから。
(あっぶねぇ……危うく殺すとこだった )
「大丈夫か? 今助け」
手を伸ばす。
同時。
そいつは銃を構えた。
「はっ? 」
撃たれる。
そう思ってしまい、反射で顔面を突いてしまった。
「が……ばっ!? 」
(どういう事だ? )
殺してしまったなら仕方ない。
思考を切り替える。
(なんで生徒が俺を殺しに? 生かしとけば良かった。つーかコイツらの目的ってなんだ? )
ドタガタと足音。
銃を構えた大人が廊下を埋め尽くす勢いでやってくる。
(……妙だな )
数は問題ない。
でもコイツらは必死に、仲間が死んでもぐちゃぐちゃの死体を見ても向かってくる。
そう、必死すぎるんだ。
異様なほど。
何かに背中を押されてるように。
「ごっ!? 」
気が逸れた。
そのせいか一人仕留め損なった。
「……はっ? 」
割れたマスク。
その下には、唇と舌を縫い付けられた口があった。
開ければ舌がちぎれるように縫われた口が……異様な口が。
「どういう事っ」
服の下。
見えた。
見覚えがある赤い光が。
「ん゛〜!! ん゛〜!!! 」
しかもその光は、転がってる死体たちをいっせいに照らし始めた。
「っ!! 先生ふせっ」
『ピーーー 』
「はぁぁぁ。前もこんなことあったな 」
爆音で軋む耳をトントン叩き、増殖させた爪をほどいて辺りを確認する。
彩音たちは無事だ。
だが、半壊した校舎の上に人影が見えた。
「楽しんで頂けたかな? 僕のショーを 」
ぺこりとお辞儀する少年。
パッと見俺よか歳下だ。
ニタニタとした笑いも、小洒落た黒スーツも、まるでサーカス支配人のように胡散臭い。
「あぁ、クソだった。詫びはテメェの命な 」
「乱暴な客ですね。この世からご退場頂きましょう 」
パンッと、胡散臭い少年は指を鳴らした。
瞬間、
「……っ゛!!? 」
左胸に穴が空いた。
どっぷり……いや背中と胸をぐっぽり開けるような穴が。
後ろからの攻撃だ。
その奥のビル、街中の立っけぇビルの屋上に、車椅子の女が座ってるのがチラリと見えた。
「……なんかデジャヴ多いな 」
「はっ? 」
「遺棄爪 」
血を撒き散らし、地面を蹴る。
壁を駆け、飛び上がり、屋上に居るやつとご対面。
「葬爪 」
「っ!! 」
屋上を爪山に。
だが敵は飛び上がり、空中ブランコのように回転し、いつからかある黒い箱を開けた。
「正体不明で不思議なおもちゃ 」
中から出てきた小さなピエロ。
その手には見るからに分かりやすい。
導火線付きのダイナマイトが
「ピエロ爆弾 」
左腕を前。
爆音。
衝撃。
左半身が消し飛んだ。
無い腕、足。
体内の爪を増殖。
「お前……その姿 」
肥大の腕。
振り下ろす。
「っ!!!? 」
壊れた学園がさらにぶっ壊れた。
二つに割れた校舎の片割れに、冷や汗ダラダラな敵が乗ってる。
「怪異の侵食……なんて次元じゃないでしょうそれ。ほぼ怪異じゃないですか。なんでそれで……生きてるんですか? 」
「うるせぇな、今私、調子が良いんだよ 」
本当だ。
爪の義足も、義手も脳も内蔵も筋肉もぜんぶ。
全身に回って、気持ちがいい。
「さて 」
地面に落ち、顔を上げて、爪の口を開けて笑う。
「雑に行くか 」
「はぁぁ、めんどくさ 」
あははと笑う。
敵。
その顔面向けて、踵をけって、突っ込む。
皆様のお察しの通り、彩音さんにも怪異化による侵食の前兆があります
人間の細胞がどんどん無くなってく感じなので、子供作れなくなったり思考がどんどん凶暴化してったりしますね
怪異化って結構デメリットあるんですねぇ、いや〜大変だ(はなほじ)
えっ、哀花さんはバンバン怪異化してるじゃねぇかって?
あれは例外
むしろアレは怪異を侵食してます




