表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異子葬  作者: エマ
26/44

File.25 沈む日

今知ったんですがハイキューって面白いですね



 彩音と街中を歩いてると、道端の人が手を挙げるのが見えた。


「あっ、歩 」


「おう哀花一週間ぶりぃぃい!!! 」


 うひょぉぉぉ一週間ぶりの生哀花だァァァ!!?

 その髪その目その格好、最っ高に興奮してきたァァァ!!!!


「うん久しぶり。二人はデート帰り? 」


「いやまぁ……うん 」


「はい!!! 」


「そっか。じゃあ行こ 」


 相変わらず哀花は興味がなさそうに、俺たちを案内する。

 まぁそういう塩対応なとこも好きなんだけどなぁァァ!!!

 つーかあの帽子、俺がやったヤツじゃん!!

 嬉しいなぁァ贈り物使ってくれるって!!!



「ここだよ 」


 案内されたせっまい路地にある店。

 その看板には、なんか骸骨が乗ってた。


 いや看板にHellとか書いてんだけど?

 つーか周りの装飾品、海外ホラー映画でよくある占い店みたいなんだけど?

 なして鹿の頭蓋飾ってんの危なくない?


「ちなみにここなんの店? 」


「焼肉店らしいよ 」


「はえ〜これが? 」


「これが 」


「……マジかぁ 」


 とりあえず扉を開けた。

 瞬間、飛んできた何かが耳横をかすった。

 路地に突き刺さったそれはナイフだった。


「……えぇ 」


「ハッハッハ!! 大丈夫かいお客さん!!! 」


 快活な笑い声とともに奥からやってきた女。

 どう見たってソイツはヤンママだった。


 プリン頭の金髪に青い目。

 漫画のヤンママってこんな感じだよなを詰め込んだようなヤツだ。


「すまんねぇ! ビリヤードしてたら手が滑っちまったよ!! 」


(せめてダーツしろよ…… )


「いやそれは良いんですけど…………あの、なんで裸にエプロンなんですか? 」


「悪いかい? ここは私の店だからねぇ!! どんな格好をしようと自由さ!! 」


「あの……歩さん。警察呼びましょうか? 」


「いやそれは俺が困る!! 今日出所したばっか!!! 」


「なんだいボーズ? 悪いことでもしたのかい? 」


「爆弾で街ぶっ壊しました!! 」


「アホかい 」


「その格好のヤツには言われたくねぇ!!! 」


「細かい男はモテないよ。あっ、ちなみにニップレス貼ってるからこぼれてもだいじょう」


「も〜ヤダこの人!! 狂人が一番嫌いだよ俺!! 」


「あの、私たち予約してるんですけど 」


 ナイス! 話を縦からぶった切ってくれてありがとう哀花!!


「予約? あぁ、真城くんの連れかい。一番奥の席にいるからさっさと行きな!! 」


 そう言われ、とりあえず奥の席に向かう。

 つーかもう疲れた。

 帰りたい。

 帰って爆弾制作したい。

 アレ持ってないと不安なんだよなぁマジで。


「おっ、悪いな二人とも 」


 第一声謝罪で出迎えてくれたのは真城だった。

 つーかここ掘りごたつなのか。

 昔風の店だなここ。


「つーか、なんで飯? 」


「それは」


「お礼とお詫びよ 」


 真城の後ろからひょっこり、咲が顔を出した。

 いつものツインテールはなぜか下ろしてる。


「その、この前拐われたでしょ? それで助けに来てくれたからって感じ 」


「あ〜なる 」


「歩……その略し方やめた方がいいぞ? 」


 ポンっと、ビミョーな顔をされながら真城が肩を叩いてきた。

 えっ、なんで?





 




「とりあえずまっ、みんなお疲れ様! 」


「「「お疲れさま〜 」」」


 真城の掛け声とともに、咲が肉を焼き始めた。

 彩音は肉が焼けるまで待ちの姿勢。

 真城はタレを。

 哀花はお冷をくんでいる。


 俺はする事がない!!


「ほら歩、食べなさい 」


「えぇ……俺最初〜? 」


「アンタが一番、頑張ったからよ 」


「いや真城は敵引き付けたし、彩音は命かけてくれたし、なんなら咲と哀花居なきゃ俺死んでたし」


「いいから食べなさい! 」


 ポトッと、焼かれた肉を皿に投げられる。

 出されたから一応食う。

 が、やっぱり味がしない。


 柔らかい弾力が不愉快だし、噛むたびに出てくる脂が口にこびり付くし、なんなら肉の熱さしか舌で感じられない。

 その不快感が飲み込むまで続くんだ。

 やっぱ食事は拷問だ。


「美味いか? 」


 飲み込むと同時に、真城が聞いてくる。


「あ〜…………あぁ、肉が違うのか? 」


「おう、ここの店は肉の質が高ぇんだよ。高級店に引けを取らない 」


「へ〜、つーかあの痴女は真城と知り合い? 」


「痴女っておま……お世話になってる人だ。あんま言わないでやってくれ 」


「そっか 」


「ほら彩音、焼けたわよ 」


「わ〜いいただきます!! それとご飯は」


「頼んであるわよ。もちろん大盛りでね 」


「ありがとう咲! 大好き!! 」


「はいはい。ほら真城も哀花も 」


「「咲も」」

     「食べろ 」

     「食べて 」


 哀花たちは楽しそうに会話して、食事も楽しんでる。

 でも俺は肉の不快感を我慢することで精一杯だ。


「歩さんもお米どうぞ! 美味しいですよ!! 」


「……さんきゅー 」


 彩音から受け取った米を食べる。

 固めに炊いてあるせいで、昔食べた虫の卵みたいだ。

 プチプチ弾け、味のしない生暖かな汁が舌にシミ出てくる。



「そういえば真城 」


「ん? どした? 」


「私のお願い、考えてくれた? 」


「ぶっ……今!? 」


「だって今じゃないと永遠にはぐらかれそうなんだもの 」


「いやそこまでヘタレじゃねぇよ!! まぁ……2週間くらい欲しいけど 」


「なんの話ですか? 」


「いやそれは」


「私が真城に告った。それで返事待ち 」


「……なんて言うかさ、今足の周りを埋められてる気分だ 」


「あら、じゃあはやく答えないと窒息しちゃうわね 」


「………………お前ってそんなめんどくさかったっけ? 」


「良いじゃない。元はと言えばアンタのあの言葉が悪いんだし 」


「わ〜暴論 」


「真城さん、女性を待たせるって、すっごくヒドイ事ですからね? 」


「真城ってヘタレなの? 」


「お前ら…… 」


「あぁ、悪ぃけどさ!! 」


 立ち上がって、真城に声をかける。


「トイレどこだ? 」


「あっ、ここ左に行ったとこだ 」


「さんきゅー 」


 急いで右に行って店を出る。

 少し進むと、丁度良いことに排水溝もあった。










「……ェッ 」


 ドポドポ、胃液ごと食べ物を吐く。

 胃液の苦味だけが喉と口に残っていく。


(あ〜……なんでこうなんだろうな )


 俺は普通に出かけて、普通に食事をしただけだ。

 なのに吐いてる。

 バカか? アホか?

 普通に生きてるハズなのに苦しいなんて、生きてる価値なくないか?


(あ〜死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。死ねよ死ねよ、生き恥過ぎるだろクソが。哀花たちみたいになんで怪異持てねぇんだよ。さっさと寄越して人を殺させろ。んで………………アイツらの隣に立ちたい。哀花を守りたい )






「大丈夫? 」


 声。

 顔を上げる。

 そしたら……水を持った哀花が居た。


「えっ、女神? 」


「哀花だよ? 」


「いやそうだけど……つーかなんで水? 吐くこと分かってた? 」


「うん。吐きそうな顔してたし 」


「マジかぁ。そんな分かりやすかったかぁ。もうちょい隠す練習しないどっ!? 」


「良いから飲んで 」


「むごっ!? 」


 口!? 口にコップ押し付けられてる!!

 飲まなきゃ溺れるが!?

 拷問!? いや哀花に殺されるなら別にいいけどボボボボッ


「………………ぷはぁ!! 死ぬかと思った!!! 」


「大丈夫? 」


「うんエホッ! エホッ!! 肺!! 肺に水入ってげほっ!!! 」


「そそっかしいね 」


 うぉお! 罵倒されながら背中撫でられてる!!

 最高じゃねぇかオイ!!!


「あぁぁ……ありがとうな 」


「いいよ別に。僕にはこんな事しかできないから 」

 

「……こんなかそんなか知らねぇけどよ、俺を助けてくれたのは事実だ。だからありがとう 」


「……じゃあ今度からは吐かないでね。無理だったら咲に言って 」


「……前から思ってたけどさ、なんで哀花ってそんな自己肯定感低いんだ? ……あっ 」


 哀花の辛そうな顔を見て、やってしまったと悟った。

 だって自己肯定感低いのなんて、だいたい三択だ。


 過去で失敗を起こし続けたか。

 自分を信用できないか。

 他人から否定され続けたか。


 勘だけど哀花は……三番目だと思う。




「あぁぁごめんな!! ほんとごめん!! 余計なこと聞いてほんと…………ごめん 」


「そんなに謝らないでよ。むしろ鬱陶しくてごめんね、なんか不幸自慢みたいになっちゃった 」


「……それは違うだろ。自慢じゃなくて事実だ。辛いのもな 」


「……ほんと歩ってさ、自分に厳しくて他人に優しいよね 」


「…………おまえ言う?? 」


 いやマジでお前が言うのそれ!?

 だって初対面で自分の命より他人の命優先したんぞ哀花!!?

 いや……俺もか。



 まぁまぁまぁまぁ! 哀花は悪くねぇ!!

 ぜんぶこんな話に持ってたオレがわりィ!!!



「そういえば歩ってさ 」


「んっ!? なに!? 」


「怪異が無い世界を、想像した事はある? 」




「……ある。何度もな 」


「その世界で自分は……何をしてた? 」


「野垂れ死に 」


「同じだね。僕もさ、自分が普通に生きれないって分かってるんだ 」


 そう言うと、哀花は俺の隣に座り込んだ。


「怪異を滅ぼすために戦ってるのに、怪異と戦えないと生きる意味が無くなるなんて……ほんと皮肉だよね 」


「……だな 」


 そこからしばらく、無言が続いた。





「えっ、なにこの間? 」


「いや……なんというかさ、歩と僕って似てるなと思って 」


「……何回も言うけどさ、今聞く? なんつーかこう……唐突過ぎないか? 」


「いや、二人きりで話す時って少ないし。デートしてる時にこんな話するのもなぁ〜って思ってたし 」


「まぁそうだけどよ…… 」


 哀花は帽子を深く被って、照れてるようにうつむいた。

 いや照れてないわ。

 すっげぇ気まずそうな顔してるわ。


「……ごめんね。急にこんな話して 」


「いや別にぃ……気にしてないぞ? ほんとに急すぎてビックリしただけだからな? 」


「じゃあいいや 」


 わ〜いきなりハシゴ外すじゃん。

 外すというか、蹴落とされた気分だなぁ。


「ん〜、吐いたわりに元気そうじゃないかいアンタ 」


「ゲッ 」


 ガラガラと店の扉が開いた。

 かと思うと、出てきたのはあんの痴女だ。


「な、なんっすか? 」


「いやぁ別に。ほらコレ、炭酸水。吐いた時にはこれが一番だよ。隣の子にもオマケね 」


「……ありがとうございます 」


「……盗み聞きでもしてたのか? 」


「おうよ! 客から吐かれるなんて屈辱的でね、バラバラにして冷凍庫にでも並べてやろうかと思ったけど……まぁ、事情がありそうだったからね。落ち着いたら戻ってきな 」


 大人にあんまこんなこと言いたくない。

 言いたくないが、ここまで善意で色々されると……


「……ありがとうございます 」


「ん、じゃあ私は戻るよ。彩音という子がめちゃくちゃ食べるもんでね 」






「良い大人も居るもんだな 」


「うん、もちろん居るよ 」


「……あわりぃ! 口に出てた!? 」


「別にいいよ。じゃあ私は戻るから、落ち着いたら来てね 」


「おう、ありがとな 」


 俺に手を振り返しながら、哀花も戻ってた。


 一人になった路地裏で、サイダーだかなんだかを飲む。

 が、やっぱり炭酸の苦味しか感じない。

 でもさっきよりかはマシだった。


「ほんっっと、哀花好きだァァァ 」


 絞り出すように声を出して、口に溜まったゲロを吐き出して、また炭酸水を飲んで気分を落ち着かせる。


「さて……戻るか 」


「やぁ 」


 キィッと、何かが軋む音がした。

 店の前、俺の隣。

 いつからか車椅子に乗る糸目の女が居た。


 あの馬鹿ボスとか言われてた男と一緒に居たヤツだ。






「……なんの用だ? 」


「報告ですよ 」


 女は顔を上げ、白髪を揺らしながら笑う。


「計画は明日に変更。アナタの活躍を期待してますよ 」


 その糸目の隙間からは、ゆったりとくすむ、金色の瞳がこちらを覗いていた。






歩くん、厄ネタしか持ってないですねぇ……

 あっ、それと言い忘れてましたが哀花さんは歩くんの本名を知ってます

 でも『本人が言わないんだし何か事情あるよね。よしっ』って感じでガンスルーゲンスルーしてました

 あと歩くんは、脱獄の二日間のあいだに色々してます

 のちのち回収させる予定です


 あとストック切れた!!

 もうもぅマヂ無理ゲームする!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 爆弾持ってないと不安 食べ物の味しない 病んでるわ 彩音ちんはたべものに目が無いねぇ。 哀花ちんの切り替えの早さ面白すぎw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ