File.23 プリズンブレイク
3話くらい日常系ゆったりストーリーです
あと最近左手を折りました
「はい……はい……そういう訳です、後はよろしくお願いします 」
『あぁ、了解したよ学長さん 』
2時間に続く長電話の末、ようやくあの問題児を留置所から出す手続きが終わった。
いや手続きというよりコネだけど。
「はァァァ、疲れた 」
ちょっと奮発して買った椅子に寄りかかり、学長室の天井を見上げる。
目を押さえてため息。
少しは楽になった。
と思ったら学長室の扉をノックされた。
「あっ、学長居ますか? 真城です 」
「真城くんか。入っていいよ 」
扉が開いた先、そこに二人は居た。
一人は真城くん。
もう一人は……咲くんだ。
「お邪魔します 」
「………あ〜、とりあえず座ってよ 」
怪異の力で椅子を動かし、二人を30万くらいした高級の椅子に座らせる。
「で、二人はどんな用かな? 私への責任の追求かな? もちろんどんな事でもやるよ。アレは私の完全なミスだからね。キミ達から恨まれようと仕方ない事をしたからね 」
「いや別に気にしてないっすよ!? なぁ咲!! 」
「はい。アレは私が悪いので 」
「いや咲くんは被害者じゃないか!? なんでそんな考えになるのさ!? 」
「私は敵について行こうとしましたから 」
「それは過去のトラウマを思い出されたからだろう? 気にしなくていい 」
そこだけはしっかりと否定する。
彼女は悪くない。
誰だって過去の思い出をほじくり返されたら、間違った判断をしてしまうものだから。
「……話を遮ったね、ごめん。それで真城くん達の用事は何かな? 」
「えっと……俺たち帰ってきてから一週間経ったじゃないですか。その間、あの地下での出来事を整理してたんですけど、ちょっと気になる事が出てきまして 」
「……それは? 」
「俺が戦った奴、取引が終わって無い言ってたんです 」
「取引? いやなんでそんな重要な情報を、報告書に書かなかったの? 」
「歩が言ってたんです。最悪を考えれば、上流階級の奴らが関わってるかもしれないって 」
……確かにそうだ。
上流階級のヤツらは捜査の妨害を平気で行い、怪異被害を自分たちが受けなければいいと思ってる。
裏で何かしててもおかしくは
「ちょっと待って? 」
スルーした。
してたけどよくよく考えたらおかしい事があった。
「なんで歩くんの連絡とってんの? 」
「えっ、二日前に帰ってきましたよ? 」
「今日が出所予定日なんだけど…… 」
「「「……… 」」」
「一旦置いておこう。彼のことを話してたらキリがない 」
「そうっすね 」
「はい 」
「うん、じゃあその事は私が調べておく。それで咲くんは大丈夫かい? ずっと無口だけど 」
「いや……まぁ、少し考えてる事がありまして 」
「それは? 」
「空無 真……って誰ですか? 」
「っ!? 」
一瞬、頭の中で驚きが弾けた。
なぜ……ヤツの名前を、咲くんが知ってるの?
「……学長? 」
「あぁごめん。少し驚いてね 」
顔を押えながらため息を吐く。
フリをしながら、机下の録音機のスイッチを切る。
これであの監視趣味のクソジジイ共にバレる心配は無い。
「……この事は他言無用で頼むよ 」
「……? はい 」
「空無 真。彼は数年前、パンドラに所属していた生徒であり……パンドラ史上、最悪の裏切り者だ 」
「っ!? 」
「何を……したんですか? 」
咲くんが聞いてくる。
いや、そう聞くのは当たり前か。
「色々……かな。学園の破壊行為、生徒への暴行に加えて殺人未遂。でもなまじ強くてね、彼が持っていた『殺意の怪異』は……哀花くんにも引けを取らなかった。だから上の連中も手を焼いてた。もし彼を退学にでもしたら、報復されるんじゃないかってね 」
「それで……裏切りっていうのは? 」
「……学園の地下にはさ、怪異に関するものがたくさんあるよね? データ、怪異の種、拘束した怪異自身。それを彼は持ち出したんだ。465名の研究員、68人の生徒を殺してね 」
「……それで、どうなったんッスか? 」
「……分からない、彼は消息を絶ったからね。死んだという声もあれば、彼を見たという目撃証言もある。だから上のヤツらは表舞台に出てこない。彼が帰ってきて、報復されるんじゃないかってね 」
「でも、敵は空無 真を殺したと言ってましたよ。家族を含めて 」
「……驚いた。ホントのようだね 」
タラり、額から汗が流れた。
私の怪異は嘘の真偽を図る。
いやそれが無くても、今と同じ反応をしていたと思う。
彼の家族は、確かに殺されているから。
「……外の勢力が関係してたんだね。そりゃあ彼の生死があやふやになる訳だ 」
「じゃあ歩は……その事件の生き残りってことッスか 」
「エッ? 」
あまりにも突然過ぎて、真城くんのしぶそうな顔を見て、素で驚いてしまった。
「なんで……歩くんが? 」
「えっ? むしろ関係してないんっすか? アイツの苗字、空無ッスよね? 」
「……はぁ? 歩くんの苗字は、泥樂だけど? 」
「「……はい? 」」
なんでここまで話が拗れてる?
いや……まさか、
「もしかして歩くんさ、自分のことを空無だと言ってるの? 」
「「……はい 」」
「……なんでこう、めんどくさい事ばっか抱えてるのかなぁ 」
頭を抑え、今度は本当にため息を吐いてしまう。
「……歩くんの本名は泥樂だ。戸籍を調べてそれは確認してる。でもなんで空無なのかな? 彼と関わりがあるのかな? 」
「俺が聞いてきましょうか? 」
「いや大丈夫。あの事件は誰が関係してるか分からないからね。私が聞くよ 」
「……そうッスか 」
「もう一度言うよ。この事は他言無用で頼む。キミたちの命に関わるからね 」
「……ウッス 」
「あっ、それともう一つ良いですか? 」
咲くんが聞いてくる。
どこか、今までとは違う、重くて苦しそうな表情で。
「なにかな? 」
「怪異と会話って、できるものなんですか? 」
「……基本的にはムリだね。怪異は恐怖や思念の塊だから、人の言葉を発してもうわ言のように無意味なものばかりだよ。しかも聞き取れない言語で話すこともあるしね 」
「そう……ですか 」
「何かあったのかな? 」
「いえ! そういう訳じゃなくて……気になっただけです 」
咲くんが隠し事をしてるのは分かってる。
でも本人が言いたくないみたいだ。
なら無理強いする必要も無い。
「じゃあ俺たちは失礼します。咲、もういいか? 」
「うん、ありがとうございました 」
「気をつけてね 」
「失礼しました 」
真城くんたちは頭を下げて部屋を出る。
そしてガチャリと扉がしまった。
「……はぁ 」
机を開け、書類を取り出す。
生徒情報……そこにはちゃんと、名前がある。
泥樂 歩 という名がしっかりと。
別に本名を名乗らないのはおかしな事じゃない。
家族関係で何かがあった子は、苗字を捨てたがるから。
彩音くんや哀花くんもそんな感じだしね。
でも彼だけは無視できない。
寄りにもよって、空無と名乗るなんてね……
(いったい……キミは何者なんだい? )
そう呟いてみる。
でも誰が答える訳でもなく、一人の沈黙だけが続いた。
あれっは〜ダレダ? ダレダ? ダレダ?
あっ、というか皆様お気付きだと思いますが、今回からお話を小分けにしていきたいと思います
理由としては、アクセス数が増えるからです
たくさんアクセス数が増えて、そのグラフを前にワイン飲みながらニタニタしたいのです(ほろ酔いでぶっ倒れるくらい酒に弱いですが)
もちろんツマミはチーズで!!
それと明日も投稿しマース




