File.18 意味不明
メンタルガチ病みハッピファックで、少し休んでました
まだまだ病んで行きますよ〜
扉の向こうに広がる。
不衛生な部屋。
ベット。
布団。
それに包まる痩せこけた小枝のような腕。
足。
人。
虫。
ウジ。
死。
『助けて……助けて…… 』
『普通に生きたいだけなのに……なんで…… 』
『殺して……殺して…… 』
見ればわかる。
全員病気だ。
でもそこには医療道具の一つもない。
『接木くん、分かってくれたかな? キミの力が必要なんだ。私たちはただ……こういう子供を助けたいだけだ 』
ニタニタとした気持ち悪い笑みが、視界に横切った。
「っ!? 」
目が覚めた。
ここはどこ?
部屋?
朝ごはんは食べ……違う! 私は誘拐されてたんだ。
「ほんとアイツら……なんなの? 」
大理石のように磨かれた部屋。
そこに私は閉じ込められている。
拘束もなく、見張りもない。
ベットも何故かいい物だし、服もそのままだ。
(でも、アイツらが言うことが本当なら……私は)
「爆発まで! 3! 3! 3!! 」
「えっな」
「BON!!! 」
爆風に吹き飛ばされ、背中を強く打ってしまう。
(?????? )
一瞬過ぎて何がどうなってるの分かんない。
というか入ってきたコイツは何?
なんで茶色い布被ってるの?
なんで血だらけ?
怪異?
「助けに来たぜ咲! あともうそろ死ぬから助けて咲!! 」
「し、新人? 何その格好 」
「硫酸かけられてスプラッター映画顔負けグロ男になってんの! 喋ってるだけでいてぇ!!! 」
「……アイツと戦ったのね 」
布の下の肌に触れる。
私の指先も溶けるけど、それよりも治癒の方がはやい。
「よし! オレ復活!! 」
布をはぎ取る歩。
死んでなくて良かったけど、正直ここに来て欲しくはなかった。
「どした? 顔色わりぃけど 」
「顔が近いわよ新人 」
「痛い!? 助けに来たのに叩かれたんだけど!? 」
「……悪いけど私は、壁の外に行く 」
「えっなに? 進撃はじまった? 」
「漫画の話はしてない!! ただ……中の老人や政治を助けるよりも、もっと……意味ある人を助けたいの 」
「そーそー、そういう事だよ 」
「おっ? 」
歩の後ろ。
散らかった部屋の入り口。
そこには口を隠してニタニタと笑う、ボサボサな赤毛の女が立っていた。
「誰だおめぇ 」
「自己紹介は自分からするのが普通じゃないかなぁ。あぁ、この場合は私からかな? ……私はウィン。壁の外で生活してる者だよ。キミ達に仲間を沢山殺されたけどさ、私たちは怒ってない。ただ医療道具も知識もない私たちや、未来ある子供をたちに、救いの手を差し伸べて欲しいダッ!!? 」
ウィンの顔面。
歩の肘が突き刺さり、その体はバタリと倒れた。
(…………はい? )
「な、何してんの新人!!? 」
「いや、話長かったし……支離滅裂だし……爆音で敵の仲間来るし…… 」
「言い訳しない!! というか私は帰らない!! だからコイツらと戦う理由はもうなっ」
「おい 」
胸ぐらを掴まれ、グイッと詰め寄られる。
その顔は……歩にしては珍しく、怒っていた。
「彩音たちは命懸けでここに来た。命懸けて……お前を助けに来たんだ。なのになんだ? アイツらに相談もなく、言い訳もなく、自分だけ何処かに行く……そりゃワガママじゃねぇのか? 」
「っ…… 」
「お前が決めた道だ、否定はしねぇ。でも……少しくらい、アイツらくらいには伝えろよ。本音で、お前の口で、面と向かいあってな 」
「それは……困るねぇ 」
「「っ!!? 」」
ウィンの足元から広げられた空間。
それはさっき見た場所だ。
白いだけな無機質の廊下が続き、その脇に続く扉の数々。
ここは……
「追憶の怪異……シオナ・リヤ 」
「おい領域展開すんな! こちとら簡易領域もってねぇんだぞ!! 」
「危ない!! 」
「フォ!? 」
歩の足を蹴り、転ばせる。
瞬間、頭があった位置に黒い爪が通り過ぎた。
「んだアレ? 」
「猿よ 」
ケラケラ笑うウィンの両肩。
そこには異様に発達した黒い爪を持つ、泥のような猿が乗っている。
「いい? ここはアイツの精神世界。扉は私たちの過去に繋がってる。こっちは怪異を出せないし、あの猿に殺されたら現実世界で死ぬ 」
「うわ〜クソゲー 」
「説明ありがと〜。ついでに言うと、人はみんな今に繋がる過去を持ってる。その過去をこの猿が壊すと……廃人になってあの世行き 」
『ごめめめめめめめめめめメメ!!! 』
『嗣子嗣子嗣子刺史獅子死!!! 』
パンッ。
ウィンが手を叩くと共に、笑う猿たちは私たちの両脇を走り抜けた。
(マズイ…… )
「さて……猿たちはキミの過去を探る。そして大事な記憶を壊してくれるからさ、それまでお話でもするかい? 」
「新人!! それより先にあいつを殺」
「あ〜、先に忠告しとくけどよ 」
一刻を争う。
そんな状況なのに、歩はあぐらをかいて座り込んだ。
「やめとけ。俺の過去を探っていい事はねぇぞ? 」
「ハハハッ、ヤバいからって時間稼ぎ? それとも負け惜しみ? いいの? それが遺言になるわけだけど? 」
「っ!! なに諦めて」
「別に心配いらねぇって。ついでに逃げる準備しとけ 」
「だから何言って 」
苛立つ私を無視して、ケラケラニタニタとウィンは笑う。
「もう精神壊れちゃったァ? もう壊されちゃったァ?? うふふふふふ、さぁ猿たちよ!! もっともっと壊…………はっ? 」
突然、ウィンの顔から笑みが消えた。
(なに? 何をそんなに……驚いてるの? )
「空……無? なんで……いや有り得ない。だって……空無 真は殺した。家族も……子供も。なんで生きてる? なんでそれを知ってる? 」
「やっぱお前の怪異、壊した記憶を取り込むのか 」
(空無? 歩の苗字がそんなに意外? というかマコトって誰? )
何も分からない。
頭の中がぐるぐる回る。
何を驚いてるのか?
なんで歩は冷静なのか?
何も分からない状況の中、突然
「いや違う!! 空無じゃない!!! 」
ウィンは意味不明なことを言い出した。
「この過去は……ナニ? お前は……誰だ!!? 」
悲鳴にも似た叫び声。
それに歩は、
「っ!!? 」
ニタリと、歯に糸を引く気色悪い笑みを返す。
その瞬間、ウィンと私たちの間にある扉が吹き飛んだ。
『ヒヒヒヒヒ 』
『ゴメメメメメメ 』
扉からはい出てきた猿たちは涙を流し、助けてと叫ぶように、黒い爪で地面を引っ掻いていた。
『タスケケケケゲッ』
けれど猿たちは扉の中に引きずり込まれ、パチャリと……何かが潰れる音がした。
「……なんで私の怪異が 」
「あーあ、だからやめとけったのに。昔の俺は…… 」
ヌッと、扉から出てきた。
左腕のない体。
返り血まみれの体。
赤い髪を、更なる赤で染めた頭。
私にはそれが、人の形をしている怪異にしか思えない。
「少し不安定だからな 」
『なんで…… 』
血まみれの喉から鳴る、潰れた声。
それが脳の中、背骨の根元にまで、ビリビリとひびく。
『俺の家族殺したんだよぉぉ??? たった一つしかないのにさァァ……なんで……なんでぇ!!? 』
(なに……この……声!? )
「お前はほんと、なんなのかな!!? 」
ウィンの背から、影から、五匹の猿が現れる。
けれどそれは、先のない腕で、血まみれの指先で、歯で、足で、裂かれちぎられ潰された。
「なんで……怪異を素手で? 」
引きつった笑みのウィン。
落ちる冷や汗。
それに連れられ、ヤツはズルズルと近づいて行く。
「怪異は出せない。怪異じゃない。なのになんで私の怪異を殺せるの? おかしいでしょ? なになになになにどういうこ」
『お前もジャマ……するのか? 』
「構えろ咲 」
「えっ? 」
歩から手を掴まれた。
それと同時に、頭が割れるような金切り声が
「この空間……
崩
かい
する
ぞ 」
「っ!? 」
「うぅっ!? 」
目が覚めたと同時。
ウィンが頭を押えながらゲロを吐くのが見えた。
その苦しむ様子を見て、一瞬心配してしま
「はい逃げ一択!! 」
でも歩から腕を捕まれ引っ張られる。
「もう一回アレされたら負けだからな! 止まんなよ? 」
振り返る歩。
私も振り返る。
そこには血を吐きながら、口を押えながら、目と銃口を向けるウィンが居た。
「にガスか 」
(あっ )
来た。
血の気のひく感覚。
コレアレだ。
撃たれるかんか
「えっ? 」
放たれた二発。
それは歩の腕が防いだ。
でも三発目。
それは歩の横腹を貫通して、私のお腹にトプんと沈んだ。
「「っ゛!!? 」」
遅れてくる痛み。
内蔵が振り切れる痛み。
にも構う暇はなく、
「思い絵 」
頭の中に映像が映し出された。
「ここは? 」
気がつくと、映写機のある暗い部屋。
スクリーンの映像には人が出ている。
(誰の映像……また精神攻撃? いや違う、これ…… )
けれど映像には、見覚えがあった。
「これ……私の人生だ 」
怪異の貴重性、攻撃規模は基本的に苦む方向性や重みで変わります
だからウィンさんたち何気にヤバイですが、それよりもアカンのが哀花さんたちの方です
例えるなら、
ウィンさん達→クラスター爆弾
哀花さん達→制御不能な疫病
って感じです
ちなみに特別怪異討伐班(名前なが)の苦しみの重さランキングはこうです
1位 哀花
2位 真城
3位 彩音
4位 咲
怪異抜きだとぶっちぎりの歩くんが独走です
単勝0.8倍です
コインロッカーよりタチ悪いっす
それと明日も投稿します




