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怪異子葬  作者: エマ
19/44

File.18 意味不明

メンタルガチ病みハッピファックで、少し休んでました

 まだまだ病んで行きますよ〜



 扉の向こうに広がる。

 不衛生な部屋。

 ベット。

 布団。

 それに(くる)まる痩せこけた小枝のような腕。

 足。

 人。

 虫。

 ウジ。

 死。


『助けて……助けて…… 』

『普通に生きたいだけなのに……なんで…… 』

『殺して……殺して…… 』


 見ればわかる。

 全員病気だ。

 でもそこには医療道具の一つもない。


『接木くん、分かってくれたかな? キミの力が必要なんだ。私たちはただ……こういう子供を助けたいだけだ 』


 ニタニタとした気持ち悪い笑みが、視界に横切った。



「っ!? 」


 目が覚めた。

 ここはどこ?

 部屋?

 朝ごはんは食べ……違う! 私は誘拐されてたんだ。


「ほんとアイツら……なんなの? 」


 大理石のように磨かれた部屋。

 そこに私は閉じ込められている。

 拘束もなく、見張りもない。

 ベットも何故かいい物だし、服もそのままだ。


(でも、アイツらが言うことが本当なら……私は)


「爆発まで! 3! 3! 3!! 」


「えっな」


「BON!!! 」


 爆風に吹き飛ばされ、背中を強く打ってしまう。


(?????? )


 一瞬過ぎて何がどうなってるの分かんない。

 というか入ってきたコイツは何?

 なんで茶色い布被ってるの?

 なんで血だらけ?

 怪異?


「助けに来たぜ咲! あともうそろ死ぬから助けて咲!! 」


「し、新人? 何その格好 」


「硫酸かけられてスプラッター映画顔負けグロ()になってんの! 喋ってるだけでいてぇ!!! 」


「……アイツと戦ったのね 」


 布の下の肌に触れる。

 私の指先も溶けるけど、それよりも治癒の方がはやい。


「よし! オレ復活!! 」


 布をはぎ取る歩。

 死んでなくて良かったけど、正直ここに来て欲しくはなかった。


「どした? 顔色わりぃけど 」


「顔が近いわよ新人 」


「痛い!? 助けに来たのに叩かれたんだけど!? 」


「……悪いけど私は、壁の外に行く 」


「えっなに? 進撃はじまった? 」


「漫画の話はしてない!! ただ……中の老人や政治を助けるよりも、もっと……意味ある人を助けたいの 」


「そーそー、そういう事だよ 」


「おっ? 」


 歩の後ろ。

 散らかった部屋の入り口。

 そこには口を隠してニタニタと笑う、ボサボサな赤毛の女が立っていた。


「誰だおめぇ 」


「自己紹介は自分からするのが普通じゃないかなぁ。あぁ、この場合は私からかな? ……私はウィン。壁の外で生活してる者だよ。キミ達に仲間を沢山殺されたけどさ、私たちは怒ってない。ただ医療道具も知識もない私たちや、未来ある子供をたちに、救いの手を差し伸べて欲しいダッ!!? 」


 ウィンの顔面。

 歩の肘が突き刺さり、その体はバタリと倒れた。


(…………はい? )


「な、何してんの新人!!? 」


「いや、話長かったし……支離滅裂だし……爆音で敵の仲間来るし…… 」


「言い訳しない!! というか私は帰らない!! だからコイツらと戦う理由はもうなっ」


「おい 」


 胸ぐらを掴まれ、グイッと詰め寄られる。

 その顔は……歩にしては珍しく、怒っていた。


「彩音たちは命懸(いのちが)けでここに来た。命懸けて……お前を助けに来たんだ。なのになんだ? アイツらに相談もなく、言い訳もなく、自分だけ何処かに行く……そりゃワガママじゃねぇのか? 」


「っ…… 」


「お前が決めた道だ、否定はしねぇ。でも……少しくらい、アイツらくらいには伝えろよ。本音で、お前の口で、面と向かいあってな 」


「それは……困るねぇ 」


「「っ!!? 」」


 ウィンの足元から広げられた空間。

 それはさっき見た場所だ。


 白いだけな無機質の廊下が続き、その脇に続く扉の数々。

 ここは……


追憶の怪異(ついおくのかいい)……シオナ・リヤ 」


「おい領域展開すんな! こちとら簡易領域もってねぇんだぞ!! 」


「危ない!! 」


「フォ!? 」


 歩の足を蹴り、転ばせる。

 瞬間、頭があった位置に黒い爪が通り過ぎた。


「んだアレ? 」


「猿よ 」


 ケラケラ笑うウィンの両肩。

 そこには異様に発達した黒い爪を持つ、泥のような猿が乗っている。


「いい? ここはアイツの精神世界。扉は私たちの過去に繋がってる。こっちは怪異を出せないし、あの猿に殺されたら現実世界で死ぬ 」


「うわ〜クソゲー 」


「説明ありがと〜。ついでに言うと、人はみんな今に繋がる過去を持ってる。その過去をこの猿が壊すと……廃人になってあの世行き 」


『ごめめめめめめめめめめメメ!!! 』

『嗣子嗣子嗣子刺史獅子死!!! 』

 

 パンッ。

 ウィンが手を叩くと共に、笑う猿たちは私たちの両脇を走り抜けた。


(マズイ…… )


「さて……猿たちはキミの過去を探る。そして大事な記憶を壊してくれるからさ、それまでお話でもするかい? 」


「新人!! それより先にあいつを殺」


「あ〜、先に忠告しとくけどよ 」


 一刻を争う。

 そんな状況なのに、歩はあぐらをかいて座り込んだ。


「やめとけ。俺の過去を探っていい事はねぇぞ? 」


「ハハハッ、ヤバいからって時間稼ぎ? それとも負け惜しみ? いいの? それが遺言になるわけだけど? 」


「っ!! なに諦めて」


「別に心配いらねぇって。ついでに逃げる準備しとけ 」


「だから何言って 」


 苛立つ私を無視して、ケラケラニタニタとウィンは笑う。


「もう精神壊れちゃったァ? もう壊されちゃったァ?? うふふふふふ、さぁ猿たちよ!! もっともっと壊…………はっ? 」


 突然、ウィンの顔から笑みが消えた。


(なに? 何をそんなに……驚いてるの? )


(から)……(なき)? なんで……いや有り得ない。だって……空無 真(からなまこと)は殺した。家族も……子供も。なんで生きてる? なんでそれを知ってる? 」


「やっぱお前の怪異、壊した記憶を取り込むのか 」


(空無(からなき)? 歩の苗字がそんなに意外? というかマコトって誰? )


 何も分からない。

 頭の中がぐるぐる回る。

 何を驚いてるのか?

 なんで歩は冷静なのか?


 何も分からない状況の中、突然


「いや違う!! 空無(からなき)じゃない!!! 」


 ウィンは意味不明なことを言い出した。


「この過去は……ナニ? お前は……誰だ!!? 」


 悲鳴にも似た叫び声。

 それに歩は、


「っ!!? 」


 ニタリと、歯に糸を引く気色悪い笑みを返す。

 その瞬間、ウィンと私たちの間にある扉が吹き飛んだ。


『ヒヒヒヒヒ 』

『ゴメメメメメメ 』


 扉からはい出てきた猿たちは涙を流し、助けてと叫ぶように、黒い爪で地面を引っ掻いていた。


『タスケケケケゲッ』


 けれど猿たちは扉の中に引きずり込まれ、パチャリと……何かが潰れる音がした。


「……なんで私の怪異が 」


「あーあ、だからやめとけったのに。昔の俺は…… 」


 ヌッと、扉から出てきた。

 左腕のない体。

 返り血まみれの体。

 赤い髪を、更なる赤で染めた頭。


 私にはそれが、人の形をしている怪異にしか思えない。


「少し不安定だからな 」


『なんで…… 』


 血まみれの喉から鳴る、潰れた声。

 それが脳の中、背骨の根元にまで、ビリビリとひびく。


『俺の家族殺したんだよぉぉ??? たった一つしかないのにさァァ……なんで……なんでぇ!!? 』


(なに……この……声!? )


「お前はほんと、なんなのかな!!? 」


 ウィンの背から、影から、五匹の猿が現れる。

 けれどそれは、先のない腕で、血まみれの指先で、歯で、足で、裂かれちぎられ潰された。


「なんで……怪異を素手で? 」


 引きつった笑みのウィン。

 落ちる冷や汗。

 それに連れられ、ヤツはズルズルと近づいて行く。


「怪異は出せない。怪異じゃない。なのになんで私の怪異を殺せるの? おかしいでしょ? なになになになにどういうこ」


『お前もジャマ……するのか? 』


「構えろ咲 」


「えっ? 」


 歩から手を掴まれた。

 それと同時に、頭が割れるような金切り声が


「この空間……

         崩


    かい

             する

        ぞ           」







「っ!? 」


「うぅっ!? 」


 目が覚めたと同時。

 ウィンが頭を押えながらゲロを吐くのが見えた。

 その苦しむ様子を見て、一瞬心配してしま


「はい逃げ一択!! 」


 でも歩から腕を捕まれ引っ張られる。


「もう一回アレされたら負けだからな! 止まんなよ? 」


 振り返る歩。

 私も振り返る。

 そこには血を吐きながら、口を押えながら、目と銃口を向けるウィンが居た。


「にガスか 」


(あっ )


 来た。

 血の気のひく感覚。

 コレアレだ。

 撃たれるかんか


「えっ? 」


 放たれた二発。

 それは歩の腕が防いだ。

 でも三発目。

 それは歩の横腹を貫通して、私のお腹にトプんと沈んだ。


「「っ゛!!? 」」


 遅れてくる痛み。

 内蔵が振り切れる痛み。

 にも構う暇はなく、

 

思い絵(おもいえ)


 頭の中に映像が映し出された。




「ここは? 」


 気がつくと、映写機のある暗い部屋。

 スクリーンの映像には人が出ている。


(誰の映像……また精神攻撃? いや違う、これ…… )


 けれど映像には、見覚えがあった。


「これ……私の人生だ 」








怪異の貴重性、攻撃規模は基本的に苦む方向性や重みで変わります

 だからウィンさんたち何気にヤバイですが、それよりもアカンのが哀花さんたちの方です

 例えるなら、


 ウィンさん達→クラスター爆弾

 哀花さん達→制御不能な疫病


 って感じです


 ちなみに特別怪異討伐班(名前なが)の苦しみの重さランキングはこうです


 1位 哀花

 2位 真城

 3位 彩音

 4位 咲


 怪異抜きだとぶっちぎりの歩くんが独走です

 単勝0.8倍です

 コインロッカーよりタチ悪いっす


 それと明日も投稿します

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 咲さんが「新人!」じゃなく「歩!」って呼んだ!いきなり名前呼び!フラグ立ったぁぁぁぁぁ!!(誰やお前 いっや歩くん過去やっば 怪異を喰らう怪異? 上位存在? そんなかんじですかね!?(…
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