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怪異子葬  作者: エマ
16/44

File15 oh......なんてこったいジーザス!!



「あぁ……(さき)様、ありがとうございます 」


「……いいえ 」


 秋の枝のような老人の手。

 それを握りながら、ベットで微笑む老人に頭を下げる。


「病を治す力……それはなんと素敵な事でしょうか 」


「……では仕事がありますので 」


「あぁ、あなた方は多用ですものね…… 」


 かすれた声から逃げるように、病室を後にしようと


「風の噂ですが 」


 すると、さらに声をかけられた。


「最近、ここの近くで殺人鬼が出たと聞きました。赤い髪をした男が、笑いながら人を殺していると……どうか、気をつけてくださいませ。あなたが居なければ……私は死んでしまいます 」


「……ありがとうございます 」


 そう言って、病室を後にした。



(はぁ…… )


 ここは東京屈指の大病院。

 お金持ちや権力者が入院する場所。

 私の怪異の力を使って、そんな人たちを治しているけど、モヤモヤって心が曇っていく。


(私だけこんな安全な場所に居て……良いのかな )


 真城も哀花も彩音も、みんな命を削って戦ってる。

 なのに私だけ……私だけが、安全な仕事ばかりしている。

 そりゃあ治癒できる怪異なんて貴重だから仕方ないけど、なんだか、


(卑怯者みたい…… )


「あっ、咲様。送迎の準備が整いました 」


「……分かりました、すぐ行きます 」


 そう伝えてくれナース服を着た女性に頭を下げ、さっさと病院を出る。

 病院は苦手だ。

 昔から。


「咲様、お待たせしました 」


「ありがとう 」


 学園の送迎車。

 その運転手にお礼を言いながら、一歩……車に乗


「……えっ? 」


 ったハズなのに、落ちた。

 落ちた?

 ここは何処?


(暗い……箱? 怪異? )





 おかしい。

 おかしい!!

 これは怪異だ。

 明らかに攻撃を受けてる!!

 なのに意識がフワフワしてる。

 焦れない。

 走れない。

 体が勝手に、動いてる。


(あぁ……行かなきゃ )


 勝手に首が回る。

 後ろには、三人の人影が見える。

 あれは敵だ!!

 殺さなきゃ


『さぁ、おいで 』


「……はい 」


 口が勝手に!?

 何コレ!?

 なんで体が動かな


『今は……微睡んでて 』


 眠……け?

 薬……じゃない。

 これ……は……


『夢の中に……ずっと居ようよ 』






 さな……ぎ……










ーーー



「はぁぁ 」


 学長室。

 に積み上げられた書類。

 それを前に頭を抱えてみる。


「前田がくちょ〜! また書類とクレームっす!! 」


 そしたら新しい書類が増えちゃいました。

 ハハッ、魔法みたいだネ〜。


「……槌子(ついこ)。念の為聞くけど」


「また歩くんのヤツっすね! 救助者撃ったり建物壊したとかで!! 」


「はァァァァ!! 元気だねぇあの子は!!! 一発殺そうかしら!!!! 」


 もう三徹目だからテンションがおかしい。

 つーかあのクソガキは大人をなんだと思ってるのかなぁ!!

 これ私たちがやってるから良いけど、他のヤツがやったら即刻クビだよ!?

 あー頭が回ってな


「学長 」


「今度は何かなぁ!? 歩くんが人でも殺した!!? 」


「いえ、咲隊員が行方不明だとの連絡が 」


「……すぐに通信を回して 」


 顔を叩き、机の下にあるボタン。

 それを押す。

 すると学長室は暗くなり、四つの映像が空中に浮かんだ。

 そのどれもには、人型の白いアイコンが浮かんでいる。

 顔の見せないクソ野郎どもだ。




「それで、どういう状況ですか? 」


「咲隊員が世羅(せら)議員の治療後、姿を消した。運転手が言うには、病院から出てこなかったと 」


「時計の発信機は? 」


「反応はない、盗聴器の方もだ。これでは利用される前に殺すこともできん…… 」


 あぁ、コイツらはこういう奴だ。

 子供の安全よりも、子供の力が利用されることを、ずっと恐れている。

 いや……その力を自分たちに振るわれる事を、だ。


「では真城く……真城副隊長に連絡します。彼らのチームですので 」


「いや、しなくていい 」


「…………はっ? 」


 コイツは何を言ってるの?

 仲間が行方不明になった。

 それは伝えなければいけない事なのに……


「それよりも先に、他の議員、資産家からの依頼を受けるべきだ。その後に行方不明になったとした方が都合がいい 」


「………………正気ですか? 」


「あぁ正気だとも。金がなければ学園は回らない、回らなければ国を守れない。傷を治すという怪異を失ったのは痛手だがな……それよりも、消えた『ボス』と呼ばれる男は見つけたか? 一人の生徒よりもそいつらの行方を探さなければ、我らの安全は」




 そこから先は、よく聞こえなかった。

 というか聞きたくなかった。

 コイツらは……いやこの老害どもは……死ぬべきだ。




「という訳だ 」


「分かりました。すぐに手配します 」


 口角だけを無理やりあげ、すぐに映像を切る。


 明るくなった学長室。

 もう……ため息しか出てこない。


「学長……これからどうするんですか? 」


 そんな中、槌子が聞いてくる。


「決まってるだろう。真城くん達に状況を伝えに行く 」


「いやダメでしょう 」


「……キミは、知らないのかな? 」


 立ち上がり、槌子の肩に……手を置く。

 反論が来ても、黙らせられるように。


「何も知らないという、恐怖を 」


「でーもーでーすーね、今伝えて真城くん達が暴走したらどうするんですか? 伝えるならある程度位置を把握した後でしょ? 少し冷静になってください 」


「んっ 」


「街中で怪異を使ったなら、周りの電化製品に影響が出るハズです。それを辿ればある程度の位置は絞られる……伝えるのはそれからでしょう。昔と重なって辛いのは分かりますけど、子供より大人が暴走してどうするんですか 」


「…………ほんとキミには叶わないよ 」


 その説教のおかげで、少し冷静になれた。

 そうだ。

 私は大人なんだから、子供を守らないといけない。


「ありがとう槌子。冷静になれた 」


「いいえ。学長の補佐を務めるのが私の役目ですからね!! 」


「とりあえず……絶対に学生にバレないようにしなきゃね 」


「はい! まぁバレないと思いますけどね〜、聞き耳でも立ててない限り 」


「そんなこと言ってないで、さっさと絞込みに取り掛かろう 」


「ハイっす!! 」


 しばらくは寝れそうにない。

 でも良いんだ。

 その程度で、子供を守れるのなら。



ーーー



『じゃあ真城、夕方の6時にね 』


『おう!! 』




「はぁぁ……おせぇな咲 」


 寮の自分の部屋。

 椅子にもたれ掛かりながら天井を眺める。


 今は6時半。

 咲との約束の時間はとっくに過ぎてる。


(何かあったのか? いやアイツ色んな任務で忙しいしなぁ……つーか男側が連絡していいものなのか? 女子って色々時間かかるみたいだけど……うーん、でも連絡したら気が小さい男だって思われるか? でも心配……だけどなぁ )


 頭を抱え、捻り、スマホに電源を入れたり消したり。

 そうやって悩み続けていると、


「オース! 真城!! 」


「うぉ!? 」


 ドアが急に開いた。

 そのせいで椅子から落ちそうになる。


「あ、歩? ノックくらいしろよ 」


「いやーごめんごめん。それとさ、時計借りるぞ 」


「いやちょ」


 止める暇もなく、歩は俺の腕時計を奪った。

 そして、


「あーっと!! テガッ! スベッター!!! 」


 思いっきり地面に時計を投げつけた。

 ガラスが割れ、部品が飛び散り、フローリングにふっかい傷がついた。





 いやいやいやいや、


「な、ナニしてんだテメェ!!!! 」


 歩から部屋入られて時計壊されたんだけど!?

 意味わかんねぇだけど!?

 何コイツとうとうイカれたのか!!?

 元々イカれてたか!!


「なんかさぁ、咲が拐われたらしいぞ? 」


「……はっ? 」


 拐われた?

 咲が?

 いや急に……つーかなんでそんな事を知ってんだコイツは。


「だから行こうぜ! 」


 歩はグイッとスマホの画面を見せてくる。

 顔の近くに。

 それには街中の地図……と、ピンク色の信号が映っていた。


「囚われのお姫様救いによ 」


 ニッと、歯茎を見せて歩は笑う。

 けど、


「確証はあんのか? 咲が拐われたって 」


「このGPSしかねぇ。あとは俺を信用しろ 」


「信用って……そりゃあ 」


 コイツは得体の知れないヤツだ。

 でも……俺はこいつに救われた事がある。

 一度死線を共にした友でもある。

 なら答えは決まってる。


「信じるに決まってんだろ 」


「そう来なくっちゃなぁ 」


「あっ、じゃあ私も信じます 」


「「んっ!!? 」」


 後ろ。

 部屋の外。

 には、彩音がピアスを弄りながら立っていた。

 それを見て歩はあんぐり、顎が外れたように口を開いた。


「すぐ! 時計!! 外すか壊せ!!! 」


「あっ、声聞こえてたので時計壊してますよ 」


「お〜ないすぅ!! あぶねぇぇ、バレるとこだったァァ!! 」


「話見えてこねぇんだけど……時計の何がマズイんだ? 」


「あれ盗聴器になってんだよ。通信機能付いてんだから不思議じゃねぇだろ? 」


「まぁ任務上仕方ねぇだろうけど……つーか、なんでバレたらマズイんだ? 普通助け呼ぶべきだろ 」


「あー………………そりゃアレだよ。アイツら居場所分かっても待つつもりなんだ。確実に咲を救うため、戦力を集めてな。でもそれじゃ遅い 」


 歩は部屋から走り去り、今度はパソコンを持ってきた。


「咲に仕込んだ盗聴器で聞こえたんだよ。壁の外に連れてくって、だから」


「ちょっと待て…… 」


 聞き間違いか?

 聞き間違いだよな?

 うん……気のせいだよな?


「えっ、なん……盗聴器!? 」


「あぁ。つーかお前ら全員に着けてるぞ。GPS込みで 」


 そう言いながらパソコンの画面を見せられる。


 マップで示される寮の中。

 そこには青とピンクのシグナル、何処かの街中で白いシグナルが動いていた。




 えっ?


「おまっ……ちょっ……いつ仕掛け」


「ん〜? 部屋に鍵がないからさ、お前らが寝たあとにコソコソって 」


「……… 」


 一旦。

 息を吸う。

 そして、


「はァァァキッショ!! お前キッショ!!! 」


 叫ぶ。

 だいぶ我慢したがもう無理だ。

 おかしい奴とは思ってた。

 でもここまでとは思ってなかった。

 

「おまっ……ちょ、一旦死ねぇ!! 」


「えー、ヤダよ今は死にたくねぇもん!? 」


 俺が掴みかかる。

 よりはやく、彩音がパソコンにゲンコツを落とした。


「あー俺のパソコンがァァァ!! まぁスマホの方にも情報が」


 取り出されたスマホ。

 それは蹴りで吹き飛ばされ、部屋の壁に突き刺さった。


「スマホぉぉぉぉ!!! 」


「歩さん…… 」


 胸ぐらを掴まれながら、彩音は歩に詰め寄る。

 その顔はどこか赤く見えた。


「あの……盗聴器ってことは……どこまで聞いて」


「あぁ大丈夫。夜中とかは電源切ってるぅ」


 ケラケラ笑う歩。

 その体は放り投げられ、風を切りながら壁に打ち付けられた。


「背骨ぇぇぇ!! 」


「死んでくださいよもう!!! 」


「ここ俺の部屋!! 暴れるなら向こう行け!! つーかお前らのせいで床壁メンタル、ぜんぶ傷付いたわ!!! 」


「まぁジョークはこの辺にしてさぁ 」


「あぁ!? 」


 勝手に冷静になりやがった歩の手には、あたらしいスマホが握られていた。


「とっとと行こうぜぇ。土管工事のヒゲオヤジみたいに、お姫様救いにさ 」




「というか 」


 歩に着いて街中を進む中、ちょっと気になったことを聞いてみる。


「哀花に連絡しなくていいのか? 」


「あぁ、あの能力は救出に不向きだろ。向いてない任務させて危険に晒したくねぇもん 」


「まぁ……そうだな 」


「あっ、でも偶然集まって偶然見つけたってことにしといてくれよ? 哀花のことだからすぐ自分責めっから!! 」


「お前……哀花と会ってどのくらいだっけ? 妙に理解してるみたいだけど…… 」


「一週間くらいだな。まぁ盗聴器で理解してっからぁ!? 」


 無言のまま、彩音がゴスンッと殴る。

 正直いってナイスだ。

 一旦こいつは黙ってた方がいい。

 つーか彩音が殴んなかったら俺が殴ってた。


「あっ、ここココ 」


「えっ? 」


 急に足が止まる。

 指さされたそこは、普通のビルだった。

 街中にあっても不思議じゃない、ほんとに普通のビル。

 というかここラブが付くホテルじゃないか?


「ここの屋上か? 」


「いんや。たぶん地下だ 」


「地下か、まぁ隠れるならそこだろうが……というかどれが敵か分かるのか? 客とか居るみたいだけど 」


「そんなの分かんねぇよ。だから 」


 ニイッと、歩は笑う。

 赤と青の配線が繋がった袋のようなものを持って。


「これで確かめる 」


「……おいお前まさか」


「あー! 怪異が現れましたァ!!! 危なァァァァい!!! 」


 ぶん投げた。

 爆破した。

 サイレンやスプリンクラーが作動し、ピンク色のオーラを出していたホテルは、一瞬で悲鳴と困惑の声に包まれた。



「さー行こうぜぇ 」


「あーもう……俺知らね!! 」


「ここまで来たらヤケクソですよもう!! 」


 コスプレした女やらバスローブを着たおっさんが出てくるホテル。

 その中に三人で突っ込む。


「お客様!? ここは危険で」


 曲がり角。

 現れたホテルの従業員。

 そいつに歩はノータイムで銃を向けた。


「敵か! 一般人か!! どっちなんだい!!!? 」

 

「っ!? 」


 一瞬の間。

 それを突き破るように、従業員の背からは植物の蔓が、


(遺棄爪)


「やっぱ敵じゃねぇかお前!! 」


 俺が刀を抜くよりはやく、歩はドロップキックを従業員に打ち込んだ。

 そのまま足で首を抑え、銃を後頭部に突きつけた。


「5秒で答えろ。入り口はどこだ? 」


「入り口!? そんなのしらない 」


「ごーお、よーん、さーん、にーい、いーち」


「まっ、待て! そ、そこだ。そこの扉の裏だ 」


「あっ、そなのね。ありがとな 」


 ズドンッと……無機質な何かが従業員の頭を貫いた。





「えぇ……おまっ、言ったんだから助けてやれよ 」


「助けるとは言ってねぇ! さぁ行くぞ!! 」


「相変わらず容赦ねぇなアイツ…… 」


「ですね……私との任務の時とか、平気で避難者殺そうとしてましたし 」


「うわぁ…… 」


 二人で歩の行動にドン引きしながら、どんどん突き進む後ろ姿を追い続ける。


「あっ、ここか!! 」


 歩の蹴り。

 それは扉裏の壁を貫通した。


 その奥には、長い長い階段が続いている。

 どうやらあいつの言葉は本当だったようだ。


(なんか……妙だな )


 階段を降りてる途中、ふと思った。


 ここの壁、妙に新しい。

 上のホテルはどちらかと言えば古びてたのに。


(後付けで造られたのか? 怪異の力なら簡単だろうけど……なんでホテルの地下なんかに )


「あっ、光見えたぞ! こういう時はだいたい」


 階段の果て。

 そこには広い空間が広がっていた。

 けれどその中央には、


「敵いんだよなぁ 」


 一人の女が立っていた。


「やぁ、敵さんかな? 」


 だぼだぼの白いパーカーに手を突っ込みながら、ニコッと明るく笑う金髪の女。

 その両手は包帯でぐるぐる巻きにされている。


「おう敵。咲って迷子を探してるんだが? 」


「あぁ咲ちゃんね。ここの地下にいるよ 」


(あっ? )


 一瞬、熱い何かが心臓を駆けた。


「でもいいタイミングだね〜。あともうちょっとで輸送しようとしてたのに 」


「ご親切にどうも。じゃあ通してくれ 」


「えー……それはヤッ」


 プンっと、空気が弾ける音がし


「ダ!! 」


 目の前に拳が




「おぉ……やる〜♪ 」


 俺が刀を抜く前に、彩音が敵の腕を掴んでいた。

 彩音。

 は、その腕だけで敵を持ち上げ。

 タオルを振り回すように敵を地面へ叩きつけた。


 異音。

 砕け散る破片。

 けれど敵は潰れておらず、器用に空中で回転し、着地した。


「いった〜、死ぬかと思った!! 」


「歩さん、真城さん……先に行ってください 」


「彩音? お前囮に」


「時間が無いんでしょう!? それに私が行ったら足でまといになります!! 」


 確かに彩音の言う通りだ。

 今は時間が無い。


「じゃあ任せた。死ぬなよ 」


「死んだら殺すからな!! 絶対に……死ぬな 」


「はい!! 」


 二人でそのまま奥に突き進む。

 その間にも後ろからは鈍い音が響き、地下全体がグラグラと揺れる。


「私ね〜、あなたと戦ってみたかったの!! 」


「初対面なのに馴れ馴れしいですね!! 」


 後ろからの声。

 振動。

 破裂音。

 それらが聞こえなくなるほど、長い長い廊下を突き進む。




「っ!! なんだお前らは」


「邪魔!! 」


 角から飛び出してきた二人の男。

 その首を歩はナイフで裂き、体を持ち上げ、


「いっけなーい遅刻遅刻!! 」

 

 もう一人の男を死体で押し潰した。


「ガハッ!! 」


「咲どーこ? 知らない? 」


「言うはず……が……無いだ」


「じゃあ死ね 」


 男の首。

 それを歩は裂いた。

 そして二人で突き進む。


「つーか歩、発信機は!? 」


「わからん! 通信が途絶えた!! 」


「じゃあこっからは…… 」


 足を止める。

 二つに別れた廊下で。


「二手に別れるか 」


「俺右で真城は左な 」


「あぁ……けど一つ頼みがある 」


 歩の顔。

 それをじっと見つめながら、一枚の紙を手渡す。


「んだこれ? 電話番号? 」


「俺のな。もし咲を見つけて外に出たら連絡してくれ、それが合図になる 」


「なんのって聞きてぇけど……時間ねぇな 」


「助かる。逆なら絶対助けに行くから……諦めらないでくれよ? 」


「はっ、頼みごと二つじゃねぇか 」


「強欲なもんでな。じゃ、」


 お互いに片腕を立て、コンっとぶつけ合う。


「「死ぬなよ 」」





 そこから二手に別れた。


(あぁ……気が楽だな )


 進み続ける廊下の奥から、敵がわんさか湧いてくる。


「敵だ! 排除しろ!! 」

「ノコノコ現れたんだ! 今ここで殺せ!! 」

「おい待て! アレ……"速贄”じゃないか? 」


(仲間を巻き込まないってのは )

 




「あっ、何体か生かしとくべきだった 」


 死体が壁に、天井に、へばりつく廊下を進む。


 ネチャッと靴底に絡む血は気色悪い。

 苦悶の表情で死んでいるヤツらは気持ち悪い。

 返り血が気持ち悪い。

 でもコイツらは死んでいいヤツだ。

 わざわざ心を痛める必要は無い。

 

「……… 」


 廊下の奥に、南京錠や鍵がついた鋼鉄の扉があった。

 それを切り崩し、足で吹き飛ばし、その奥にある広い空間に足を進める。


「えっ、誰? 」

「知らない 」

「侵入者? 」


 そこには前後反対のパーカーで隠す、三人がいた。


「さっきまで現実感なかったけどよ、今ならハッキリ言える 」


 異音とともに刀を抜き、ジャリジャリと擦れ合う爪の刀身を、ヤツらに向ける。

 いやヤツらじゃない。

 敵だ。


「俺の仲間に手を出したんだ。楽に死ねると思うなよ? 」


「「「怖いねぇ 」」」


 敵を殺すために、今……剣を振り抜いた。



 


 




歩くんの言う通り、あの時計には学生監視用に盗聴器が仕掛けられています

 ですがムカ着火ファイヤー(前話)での歩くんの戦いは、上のおクズ共は知りません

 デキる男歩くんは、ちゃんと壊して戦ってましたので

 えっ、いつの壊したかって?

 咲さんのテントに肉ダルマが落ちてくる時です


 あのどさくさで肉ダルマの下の方に時計を投げて、ぶっ潰してもらってます

 ちなみに紛失届けは槌子に渡してます

 学長に話すと嘘がバレるので!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 犯罪者丸出し歩クンwww 夜中電源切ってるとか間違いなくウソだわそんなマメなことするはずないw 咲ちゃん無事でありますよーに!
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