File15 oh......なんてこったいジーザス!!
「あぁ……咲様、ありがとうございます 」
「……いいえ 」
秋の枝のような老人の手。
それを握りながら、ベットで微笑む老人に頭を下げる。
「病を治す力……それはなんと素敵な事でしょうか 」
「……では仕事がありますので 」
「あぁ、あなた方は多用ですものね…… 」
かすれた声から逃げるように、病室を後にしようと
「風の噂ですが 」
すると、さらに声をかけられた。
「最近、ここの近くで殺人鬼が出たと聞きました。赤い髪をした男が、笑いながら人を殺していると……どうか、気をつけてくださいませ。あなたが居なければ……私は死んでしまいます 」
「……ありがとうございます 」
そう言って、病室を後にした。
(はぁ…… )
ここは東京屈指の大病院。
お金持ちや権力者が入院する場所。
私の怪異の力を使って、そんな人たちを治しているけど、モヤモヤって心が曇っていく。
(私だけこんな安全な場所に居て……良いのかな )
真城も哀花も彩音も、みんな命を削って戦ってる。
なのに私だけ……私だけが、安全な仕事ばかりしている。
そりゃあ治癒できる怪異なんて貴重だから仕方ないけど、なんだか、
(卑怯者みたい…… )
「あっ、咲様。送迎の準備が整いました 」
「……分かりました、すぐ行きます 」
そう伝えてくれナース服を着た女性に頭を下げ、さっさと病院を出る。
病院は苦手だ。
昔から。
「咲様、お待たせしました 」
「ありがとう 」
学園の送迎車。
その運転手にお礼を言いながら、一歩……車に乗
「……えっ? 」
ったハズなのに、落ちた。
落ちた?
ここは何処?
(暗い……箱? 怪異? )
おかしい。
おかしい!!
これは怪異だ。
明らかに攻撃を受けてる!!
なのに意識がフワフワしてる。
焦れない。
走れない。
体が勝手に、動いてる。
(あぁ……行かなきゃ )
勝手に首が回る。
後ろには、三人の人影が見える。
あれは敵だ!!
殺さなきゃ
『さぁ、おいで 』
「……はい 」
口が勝手に!?
何コレ!?
なんで体が動かな
『今は……微睡んでて 』
眠……け?
薬……じゃない。
これ……は……
『夢の中に……ずっと居ようよ 』
さな……ぎ……
ーーー
「はぁぁ 」
学長室。
に積み上げられた書類。
それを前に頭を抱えてみる。
「前田がくちょ〜! また書類とクレームっす!! 」
そしたら新しい書類が増えちゃいました。
ハハッ、魔法みたいだネ〜。
「……槌子。念の為聞くけど」
「また歩くんのヤツっすね! 救助者撃ったり建物壊したとかで!! 」
「はァァァァ!! 元気だねぇあの子は!!! 一発殺そうかしら!!!! 」
もう三徹目だからテンションがおかしい。
つーかあのクソガキは大人をなんだと思ってるのかなぁ!!
これ私たちがやってるから良いけど、他のヤツがやったら即刻クビだよ!?
あー頭が回ってな
「学長 」
「今度は何かなぁ!? 歩くんが人でも殺した!!? 」
「いえ、咲隊員が行方不明だとの連絡が 」
「……すぐに通信を回して 」
顔を叩き、机の下にあるボタン。
それを押す。
すると学長室は暗くなり、四つの映像が空中に浮かんだ。
そのどれもには、人型の白いアイコンが浮かんでいる。
顔の見せないクソ野郎どもだ。
「それで、どういう状況ですか? 」
「咲隊員が世羅議員の治療後、姿を消した。運転手が言うには、病院から出てこなかったと 」
「時計の発信機は? 」
「反応はない、盗聴器の方もだ。これでは利用される前に殺すこともできん…… 」
あぁ、コイツらはこういう奴だ。
子供の安全よりも、子供の力が利用されることを、ずっと恐れている。
いや……その力を自分たちに振るわれる事を、だ。
「では真城く……真城副隊長に連絡します。彼らのチームですので 」
「いや、しなくていい 」
「…………はっ? 」
コイツは何を言ってるの?
仲間が行方不明になった。
それは伝えなければいけない事なのに……
「それよりも先に、他の議員、資産家からの依頼を受けるべきだ。その後に行方不明になったとした方が都合がいい 」
「………………正気ですか? 」
「あぁ正気だとも。金がなければ学園は回らない、回らなければ国を守れない。傷を治すという怪異を失ったのは痛手だがな……それよりも、消えた『ボス』と呼ばれる男は見つけたか? 一人の生徒よりもそいつらの行方を探さなければ、我らの安全は」
そこから先は、よく聞こえなかった。
というか聞きたくなかった。
コイツらは……いやこの老害どもは……死ぬべきだ。
「という訳だ 」
「分かりました。すぐに手配します 」
口角だけを無理やりあげ、すぐに映像を切る。
明るくなった学長室。
もう……ため息しか出てこない。
「学長……これからどうするんですか? 」
そんな中、槌子が聞いてくる。
「決まってるだろう。真城くん達に状況を伝えに行く 」
「いやダメでしょう 」
「……キミは、知らないのかな? 」
立ち上がり、槌子の肩に……手を置く。
反論が来ても、黙らせられるように。
「何も知らないという、恐怖を 」
「でーもーでーすーね、今伝えて真城くん達が暴走したらどうするんですか? 伝えるならある程度位置を把握した後でしょ? 少し冷静になってください 」
「んっ 」
「街中で怪異を使ったなら、周りの電化製品に影響が出るハズです。それを辿ればある程度の位置は絞られる……伝えるのはそれからでしょう。昔と重なって辛いのは分かりますけど、子供より大人が暴走してどうするんですか 」
「…………ほんとキミには叶わないよ 」
その説教のおかげで、少し冷静になれた。
そうだ。
私は大人なんだから、子供を守らないといけない。
「ありがとう槌子。冷静になれた 」
「いいえ。学長の補佐を務めるのが私の役目ですからね!! 」
「とりあえず……絶対に学生にバレないようにしなきゃね 」
「はい! まぁバレないと思いますけどね〜、聞き耳でも立ててない限り 」
「そんなこと言ってないで、さっさと絞込みに取り掛かろう 」
「ハイっす!! 」
しばらくは寝れそうにない。
でも良いんだ。
その程度で、子供を守れるのなら。
ーーー
『じゃあ真城、夕方の6時にね 』
『おう!! 』
「はぁぁ……おせぇな咲 」
寮の自分の部屋。
椅子にもたれ掛かりながら天井を眺める。
今は6時半。
咲との約束の時間はとっくに過ぎてる。
(何かあったのか? いやアイツ色んな任務で忙しいしなぁ……つーか男側が連絡していいものなのか? 女子って色々時間かかるみたいだけど……うーん、でも連絡したら気が小さい男だって思われるか? でも心配……だけどなぁ )
頭を抱え、捻り、スマホに電源を入れたり消したり。
そうやって悩み続けていると、
「オース! 真城!! 」
「うぉ!? 」
ドアが急に開いた。
そのせいで椅子から落ちそうになる。
「あ、歩? ノックくらいしろよ 」
「いやーごめんごめん。それとさ、時計借りるぞ 」
「いやちょ」
止める暇もなく、歩は俺の腕時計を奪った。
そして、
「あーっと!! テガッ! スベッター!!! 」
思いっきり地面に時計を投げつけた。
ガラスが割れ、部品が飛び散り、フローリングにふっかい傷がついた。
いやいやいやいや、
「な、ナニしてんだテメェ!!!! 」
歩から部屋入られて時計壊されたんだけど!?
意味わかんねぇだけど!?
何コイツとうとうイカれたのか!!?
元々イカれてたか!!
「なんかさぁ、咲が拐われたらしいぞ? 」
「……はっ? 」
拐われた?
咲が?
いや急に……つーかなんでそんな事を知ってんだコイツは。
「だから行こうぜ! 」
歩はグイッとスマホの画面を見せてくる。
顔の近くに。
それには街中の地図……と、ピンク色の信号が映っていた。
「囚われのお姫様救いによ 」
ニッと、歯茎を見せて歩は笑う。
けど、
「確証はあんのか? 咲が拐われたって 」
「このGPSしかねぇ。あとは俺を信用しろ 」
「信用って……そりゃあ 」
コイツは得体の知れないヤツだ。
でも……俺はこいつに救われた事がある。
一度死線を共にした友でもある。
なら答えは決まってる。
「信じるに決まってんだろ 」
「そう来なくっちゃなぁ 」
「あっ、じゃあ私も信じます 」
「「んっ!!? 」」
後ろ。
部屋の外。
には、彩音がピアスを弄りながら立っていた。
それを見て歩はあんぐり、顎が外れたように口を開いた。
「すぐ! 時計!! 外すか壊せ!!! 」
「あっ、声聞こえてたので時計壊してますよ 」
「お〜ないすぅ!! あぶねぇぇ、バレるとこだったァァ!! 」
「話見えてこねぇんだけど……時計の何がマズイんだ? 」
「あれ盗聴器になってんだよ。通信機能付いてんだから不思議じゃねぇだろ? 」
「まぁ任務上仕方ねぇだろうけど……つーか、なんでバレたらマズイんだ? 普通助け呼ぶべきだろ 」
「あー………………そりゃアレだよ。アイツら居場所分かっても待つつもりなんだ。確実に咲を救うため、戦力を集めてな。でもそれじゃ遅い 」
歩は部屋から走り去り、今度はパソコンを持ってきた。
「咲に仕込んだ盗聴器で聞こえたんだよ。壁の外に連れてくって、だから」
「ちょっと待て…… 」
聞き間違いか?
聞き間違いだよな?
うん……気のせいだよな?
「えっ、なん……盗聴器!? 」
「あぁ。つーかお前ら全員に着けてるぞ。GPS込みで 」
そう言いながらパソコンの画面を見せられる。
マップで示される寮の中。
そこには青とピンクのシグナル、何処かの街中で白いシグナルが動いていた。
えっ?
「おまっ……ちょっ……いつ仕掛け」
「ん〜? 部屋に鍵がないからさ、お前らが寝たあとにコソコソって 」
「……… 」
一旦。
息を吸う。
そして、
「はァァァキッショ!! お前キッショ!!! 」
叫ぶ。
だいぶ我慢したがもう無理だ。
おかしい奴とは思ってた。
でもここまでとは思ってなかった。
「おまっ……ちょ、一旦死ねぇ!! 」
「えー、ヤダよ今は死にたくねぇもん!? 」
俺が掴みかかる。
よりはやく、彩音がパソコンにゲンコツを落とした。
「あー俺のパソコンがァァァ!! まぁスマホの方にも情報が」
取り出されたスマホ。
それは蹴りで吹き飛ばされ、部屋の壁に突き刺さった。
「スマホぉぉぉぉ!!! 」
「歩さん…… 」
胸ぐらを掴まれながら、彩音は歩に詰め寄る。
その顔はどこか赤く見えた。
「あの……盗聴器ってことは……どこまで聞いて」
「あぁ大丈夫。夜中とかは電源切ってるぅ」
ケラケラ笑う歩。
その体は放り投げられ、風を切りながら壁に打ち付けられた。
「背骨ぇぇぇ!! 」
「死んでくださいよもう!!! 」
「ここ俺の部屋!! 暴れるなら向こう行け!! つーかお前らのせいで床壁メンタル、ぜんぶ傷付いたわ!!! 」
「まぁジョークはこの辺にしてさぁ 」
「あぁ!? 」
勝手に冷静になりやがった歩の手には、あたらしいスマホが握られていた。
「とっとと行こうぜぇ。土管工事のヒゲオヤジみたいに、お姫様救いにさ 」
「というか 」
歩に着いて街中を進む中、ちょっと気になったことを聞いてみる。
「哀花に連絡しなくていいのか? 」
「あぁ、あの能力は救出に不向きだろ。向いてない任務させて危険に晒したくねぇもん 」
「まぁ……そうだな 」
「あっ、でも偶然集まって偶然見つけたってことにしといてくれよ? 哀花のことだからすぐ自分責めっから!! 」
「お前……哀花と会ってどのくらいだっけ? 妙に理解してるみたいだけど…… 」
「一週間くらいだな。まぁ盗聴器で理解してっからぁ!? 」
無言のまま、彩音がゴスンッと殴る。
正直いってナイスだ。
一旦こいつは黙ってた方がいい。
つーか彩音が殴んなかったら俺が殴ってた。
「あっ、ここココ 」
「えっ? 」
急に足が止まる。
指さされたそこは、普通のビルだった。
街中にあっても不思議じゃない、ほんとに普通のビル。
というかここラブが付くホテルじゃないか?
「ここの屋上か? 」
「いんや。たぶん地下だ 」
「地下か、まぁ隠れるならそこだろうが……というかどれが敵か分かるのか? 客とか居るみたいだけど 」
「そんなの分かんねぇよ。だから 」
ニイッと、歩は笑う。
赤と青の配線が繋がった袋のようなものを持って。
「これで確かめる 」
「……おいお前まさか」
「あー! 怪異が現れましたァ!!! 危なァァァァい!!! 」
ぶん投げた。
爆破した。
サイレンやスプリンクラーが作動し、ピンク色のオーラを出していたホテルは、一瞬で悲鳴と困惑の声に包まれた。
「さー行こうぜぇ 」
「あーもう……俺知らね!! 」
「ここまで来たらヤケクソですよもう!! 」
コスプレした女やらバスローブを着たおっさんが出てくるホテル。
その中に三人で突っ込む。
「お客様!? ここは危険で」
曲がり角。
現れたホテルの従業員。
そいつに歩はノータイムで銃を向けた。
「敵か! 一般人か!! どっちなんだい!!!? 」
「っ!? 」
一瞬の間。
それを突き破るように、従業員の背からは植物の蔓が、
(遺棄爪)
「やっぱ敵じゃねぇかお前!! 」
俺が刀を抜くよりはやく、歩はドロップキックを従業員に打ち込んだ。
そのまま足で首を抑え、銃を後頭部に突きつけた。
「5秒で答えろ。入り口はどこだ? 」
「入り口!? そんなのしらない 」
「ごーお、よーん、さーん、にーい、いーち」
「まっ、待て! そ、そこだ。そこの扉の裏だ 」
「あっ、そなのね。ありがとな 」
ズドンッと……無機質な何かが従業員の頭を貫いた。
「えぇ……おまっ、言ったんだから助けてやれよ 」
「助けるとは言ってねぇ! さぁ行くぞ!! 」
「相変わらず容赦ねぇなアイツ…… 」
「ですね……私との任務の時とか、平気で避難者殺そうとしてましたし 」
「うわぁ…… 」
二人で歩の行動にドン引きしながら、どんどん突き進む後ろ姿を追い続ける。
「あっ、ここか!! 」
歩の蹴り。
それは扉裏の壁を貫通した。
その奥には、長い長い階段が続いている。
どうやらあいつの言葉は本当だったようだ。
(なんか……妙だな )
階段を降りてる途中、ふと思った。
ここの壁、妙に新しい。
上のホテルはどちらかと言えば古びてたのに。
(後付けで造られたのか? 怪異の力なら簡単だろうけど……なんでホテルの地下なんかに )
「あっ、光見えたぞ! こういう時はだいたい」
階段の果て。
そこには広い空間が広がっていた。
けれどその中央には、
「敵いんだよなぁ 」
一人の女が立っていた。
「やぁ、敵さんかな? 」
だぼだぼの白いパーカーに手を突っ込みながら、ニコッと明るく笑う金髪の女。
その両手は包帯でぐるぐる巻きにされている。
「おう敵。咲って迷子を探してるんだが? 」
「あぁ咲ちゃんね。ここの地下にいるよ 」
(あっ? )
一瞬、熱い何かが心臓を駆けた。
「でもいいタイミングだね〜。あともうちょっとで輸送しようとしてたのに 」
「ご親切にどうも。じゃあ通してくれ 」
「えー……それはヤッ」
プンっと、空気が弾ける音がし
「ダ!! 」
目の前に拳が
「おぉ……やる〜♪ 」
俺が刀を抜く前に、彩音が敵の腕を掴んでいた。
彩音。
は、その腕だけで敵を持ち上げ。
タオルを振り回すように敵を地面へ叩きつけた。
異音。
砕け散る破片。
けれど敵は潰れておらず、器用に空中で回転し、着地した。
「いった〜、死ぬかと思った!! 」
「歩さん、真城さん……先に行ってください 」
「彩音? お前囮に」
「時間が無いんでしょう!? それに私が行ったら足でまといになります!! 」
確かに彩音の言う通りだ。
今は時間が無い。
「じゃあ任せた。死ぬなよ 」
「死んだら殺すからな!! 絶対に……死ぬな 」
「はい!! 」
二人でそのまま奥に突き進む。
その間にも後ろからは鈍い音が響き、地下全体がグラグラと揺れる。
「私ね〜、あなたと戦ってみたかったの!! 」
「初対面なのに馴れ馴れしいですね!! 」
後ろからの声。
振動。
破裂音。
それらが聞こえなくなるほど、長い長い廊下を突き進む。
「っ!! なんだお前らは」
「邪魔!! 」
角から飛び出してきた二人の男。
その首を歩はナイフで裂き、体を持ち上げ、
「いっけなーい遅刻遅刻!! 」
もう一人の男を死体で押し潰した。
「ガハッ!! 」
「咲どーこ? 知らない? 」
「言うはず……が……無いだ」
「じゃあ死ね 」
男の首。
それを歩は裂いた。
そして二人で突き進む。
「つーか歩、発信機は!? 」
「わからん! 通信が途絶えた!! 」
「じゃあこっからは…… 」
足を止める。
二つに別れた廊下で。
「二手に別れるか 」
「俺右で真城は左な 」
「あぁ……けど一つ頼みがある 」
歩の顔。
それをじっと見つめながら、一枚の紙を手渡す。
「んだこれ? 電話番号? 」
「俺のな。もし咲を見つけて外に出たら連絡してくれ、それが合図になる 」
「なんのって聞きてぇけど……時間ねぇな 」
「助かる。逆なら絶対助けに行くから……諦めらないでくれよ? 」
「はっ、頼みごと二つじゃねぇか 」
「強欲なもんでな。じゃ、」
お互いに片腕を立て、コンっとぶつけ合う。
「「死ぬなよ 」」
そこから二手に別れた。
(あぁ……気が楽だな )
進み続ける廊下の奥から、敵がわんさか湧いてくる。
「敵だ! 排除しろ!! 」
「ノコノコ現れたんだ! 今ここで殺せ!! 」
「おい待て! アレ……"速贄”じゃないか? 」
(仲間を巻き込まないってのは )
「あっ、何体か生かしとくべきだった 」
死体が壁に、天井に、へばりつく廊下を進む。
ネチャッと靴底に絡む血は気色悪い。
苦悶の表情で死んでいるヤツらは気持ち悪い。
返り血が気持ち悪い。
でもコイツらは死んでいいヤツだ。
わざわざ心を痛める必要は無い。
「……… 」
廊下の奥に、南京錠や鍵がついた鋼鉄の扉があった。
それを切り崩し、足で吹き飛ばし、その奥にある広い空間に足を進める。
「えっ、誰? 」
「知らない 」
「侵入者? 」
そこには前後反対のパーカーで隠す、三人がいた。
「さっきまで現実感なかったけどよ、今ならハッキリ言える 」
異音とともに刀を抜き、ジャリジャリと擦れ合う爪の刀身を、ヤツらに向ける。
いやヤツらじゃない。
敵だ。
「俺の仲間に手を出したんだ。楽に死ねると思うなよ? 」
「「「怖いねぇ 」」」
敵を殺すために、今……剣を振り抜いた。
歩くんの言う通り、あの時計には学生監視用に盗聴器が仕掛けられています
ですがムカ着火ファイヤー(前話)での歩くんの戦いは、上のおクズ共は知りません
デキる男歩くんは、ちゃんと壊して戦ってましたので
えっ、いつの壊したかって?
咲さんのテントに肉ダルマが落ちてくる時です
あのどさくさで肉ダルマの下の方に時計を投げて、ぶっ潰してもらってます
ちなみに紛失届けは槌子に渡してます
学長に話すと嘘がバレるので!!




