File.12 裏切り中なう
新章スタートです!!
「あら〜!! カワイイじゃないあなた〜 」
路地裏にひびくはオネェの独特な高音。
その逞しい腕は一人の生徒を壁にめり込ませ、ピンクの唇はちゅぱちゅぱ鳴り、無駄に長くしたまつ毛はパチパチとウィンクしている。
「っ……ぐ!! 」
「なぁに? その反抗的な目は? 」
馬の尾のように美しい金髪を撫でながら、黒いスカートを履いた男は笑う。
それとは正反対に、赤髪の生徒はギロリとオネェを睨んだ。
「テメェらが居るから……人が死ぬんだ 」
「あら〜何? 自分たちの事は棚に上げて、正義をきどってるつもり? 」
「死ね!! 」
死にかけの人間が放つ、渾身の蹴り。
それはオネェの顔面を深々と抉った。
が、
「あら。蹴られる私も美しいわね 」
「っ!? 」
ノーダメージ。
鼻血どころか、瞬きすらせず、オネェは攻撃を受け止めた。
「さて取引。パンドラの情報をくれるなら逃がしてあげても良いわよ? 」
「テメェらに渡すとでも思」
「まぁそうよね 」
図太い血管が浮かぶ腕。
その指先は頭蓋にめり込み、
「がっ……あぁ!! 」
グチュ……生々しい水音が路地裏にひびく。
「うーん、血に濡れる私も美しい 」
人間だった者を捨て、オネェは手を叩いた。
すると路地裏の影から、一人の男が現れる。
「うわグッッロ。脳みそ出てるじゃないっすか!! 」
「私の美貌を傷付けた報いよ。さっさとその死体を運びなさい 」
「う〜いめんどくせぇ 」
「少しくらい本音は隠しなさ……あら? 」
オネェは首を傾けた。
仲間の顔をすべて覚えてる自分が、この男の顔を知らなかったから。
「あなた……新人? 」
「えぇそうっすよ。それが何か? 」
「なら合言葉くらい分かるわよね? 」
オカマはカマをかけた。
新人であれば、自分が知らなくても納得ができる。
だがもし合言葉すら知らないのであれば、こいつはスパイと言う事になると。
そう一瞬で判断した。
「……急に何を」
「次誤魔化したら殺すわよ? 」
「……はぁ 」
ピンクの髪を持つ男、空無 歩は観念したように手を合わせ、
「誰もが住める楽園へ。我が魂たちを導き、零れた悪意を正したまえ……これで良いっすか? 」
その黒い目でオネェを睨んだ。
「……あらごめんなさい。私ったら勘ぐりすぎたみたい 」
申し訳なさそうに謝るオネェに対し、歩はケラっと、幼い子供がするような笑みを浮かべた。
「お気にならず。じゃあ死体片付けるので、足元失礼しますね 」
「あーごめんなさいね〜 」
そうして歩は死体を引きずり、路地裏の闇に消えていった。
「私ったら、柄にもなく緊張してるのかしらねぇ 」
一人残った路地裏で、オネェは笑う。
「まぁ今焦っても仕方ないわね。計画はもう始まってるんだから 」
そう、オネェの言う通りだ。
計画はもう、始まっている。
ーー
「飯はうまいか〜? 」
リビングの方に目をやると、美味そうに肉を食べる咲たちが目を輝かせていた。
「美味しいわよ 」
「美味しい。やっぱり真城のご飯は美味しいね 」
「変わらない味で安心します!! 」
咲に哀花に彩音。
三人からいっせいに褒められ、俺も鼻が高い。
「ありがとよ。そう言ってくれると作ったかいがあった 」
咲の隣に座り、俺も飯を食う。
だし巻き玉子に鶏モモ肉のスパイス焼き。
あと咲の入れたコーヒーに焼かれたパン。
そして周りには仲間が居る。
これ以上幸せな飯を、俺は知らない。
「そいや彩音、なんか凄いイメチェンしたな 」
「えっ、そうですかね? 」
「いやほら、髪とか耳とか 」
彩音の耳にはたくさんのピアスが開けられ、綺麗な紫色の髪には、黒い髪が入り交じっている。
あれ、どうやって染めたんだろうか。
「確かに急だね。大丈夫? 何か悩みごとでもあるの? 」
「いや違いますよ哀花さん!? あっ、悩みごとと言うか……迷いごとはありますけどぉ 」
「……? 」
「そういえば、歩と任務行った後からだよね? ピアス開けたいって言い始めたの 」
哀花の何気ない一言で、リビングはピシッと凍り付いた。
「……やめときなさい 」
「えぇ!? 」
「否定はしねぇけどよぉ……もうちょっとゆっくり決めたらどうだ? 」
「いや何がです!? というかなんで知ってるんですか!!? 」
わっかりやすく騒ぐ彩音。
その肩を優しく、哀花の腕が掴んだ。
「歩はやめといた方がいいよ。ちょっと気持ち悪いから 」
「いやそれはそうですけど!! でもあの歩さん!!? 」
彩音の目線の先。
俺の後ろ。
いつからか、ダルそうな歩が立っていた。
(えっ、いつから!? 気配まったく感じなかったぞ!! )
「いやぁ……悪いな。人の悪口で盛り上がってる所に来ちまって 」
「いや……すみません 」
「ごめん 」
「それは悪い 」
「新人、さっさと朝ごはん食べなさい 」
「あっ、うっす 」
ブレない咲の言う通り、歩は白い食器に卵と肉を乗せ、哀花の隣に座った。
(気まず…… )
俺たちの自業自得とは言え、ふっつうに気まずい。
しかも歩とは付き合いが短い。
この状況、どういう話題振ればいいんだ……
「ご馳走様でした〜 」
気まずさの中、歩が手を合わせた。
「はっ? もう食い終わったのか!? 」
「あぁ 」
「新人……もうちょっと味わって食べなさい 」
「え〜、だって 」
『緊急任務発生!!! 』
頭蓋にひびくような警報。
それは俺たちの時計から、いっせいに鳴り響いた。
『至急、中央グラウンドに集合。これは全生徒に向けての任務である。繰り返す、全生徒に向けての任務である 』
「ただ事じゃないみたいだな 」
「そうね、急ぎましょう 」
バタバタ飯をかき込み、すぐにグラウンドに走る。
そこには数千の生徒たちが、キッチリ等間隔に並んでいた。
まるで軍隊みたいだ。
「え〜、全員集まったかな? 」
その中央で、前田学長がメガホンを持って話している。
学長直々に、しかもこんなに生徒を集めて。
こんなこと今までで一回も無かった。
(今から何が起こるんだ…… )
「え〜、混乱してるだろうけど結論から言おう。今日この東京に敵が攻めてくる。数は二万ほど、その全員が怪異を宿してる犯罪者たちだ。東京を守るためにそいつらを殺して欲しい 」
「……はっ? 」
いきなりの大規模任務。
とうぜん生徒たちは理解できないようにザワついた。
正直俺もびっくりしてる。
けれど学長は平然と話を進める。
「根拠は二つ。最近パンドラの学生が殺される事件があってね、その犯人の死体の記憶を調べた所、大規模進行が起こると分かった。二つ目は、今日だけ異様に怪異の出現率が低い。なんならボーダーライン出現の怪異はゼロだしね 」
言わんとしてる事は分かる。
むしろ事前に察知できて助かったまである。
だがなぜ、なぜ今なんだ。
こういうのは前から確認しておくもんだろ普通。
「さて、君たちに問おう 」
そんな困惑をよそに、胡散臭く笑う学長はそっと手を伸ばしてきた。
「この任務は人を殺すもの、だから強制じゃない。それでもこの東京を守りたいという生徒だけは残りたまえ。それ以外は……ゆっくり休むといい。今日は休校にするからね 」
その言葉と共に、ほとんどの学生がグラウンドから姿を消した。
俺たちはとうぜん残るが、その中に歩も残ってるのが意外だ。
「歩、危ねぇから帰ってた方がいいぞ? これ普通に危険な任務だからな 」
「それならいつもと変わんねぇじゃん。あと殺しは俺の得意分野だ 」
「うーん……まぁ辞めろとは言わねぇけどよぉ 」
「大丈夫ですよ! 歩さんめちゃくちゃ強いですから!! 」
隣から割り込んできた彩音。
俺たちの中で2番目に強い彩音がそう言うのは、凄い意外だ。
「じゃあ……まぁ、自分が助かることだけ考えろよ 」
「あぁ、お前もな 」
「残ったのは1000人くらい……かぁ。じゃあ、作戦を説明しよう!! 」
残った俺たちはグラウンド中央に集められ、作戦を言い渡された。
『中央突破隊』
敵軍に突っ込み、数減らしと敵の統率を崩すことが目的。
メンバー
俺。
『待機隊』
統率が乱れてから行動。浮いたコマの殺害が目的。
メンバー
彩音 知らない生徒五人。
『空襲隊』
敵の行動次第、あるいは敵陣壊滅のための部隊。
メンバー
哀花。
『最終隊』
任務のボーダーライン。負傷者の治療および、後方射撃による援護を目的とした部隊。
メンバー
歩 咲 その他全員の生徒。
「おいちょっと待て!! これ哀花たちの負担デカすぎだろ!!? 」
そう叫んだのは歩だった。
その手はすでに学長の胸ぐらを掴んでいる。
「そうは言ってもねぇ……正直これがベストだと思うんだけどなぁ 」
「はぁ!? これあれだぞ!? 新人に仕事押し付けて先に帰るクソ上司じゃねぇか!! 」
ますますヒートアップする歩。
ひとまずその両腕を掴み、とりあえず学長から手を引かせる。
「大丈夫だ。むしろ俺たちの怪異は単騎の方が動きやすい 」
「……そうなのか? 」
「あぁ。パンドラ一の討伐隊の実力……あんまりなめんなよ 」
そこから作戦は実行された。
向かった先は怪異と人間の国境……その近くの街。
そこで俺はひたすら走り続けている。
『あーあー、聞こえるかな真城くん 』
「あっ、はい聞こえます 」
耳に入れた通信機からは学長の声が聞こえる。
『街の避難は済んでいるからね。一般市民のことは心配しなくてもいい。自分が生き残ることだけ考えなさい 』
「えっ、いつの間に済ませたんですか? 」
『君の報告を聞いて過去の事件を思い出してね。警察やら国に要請して手早く終わらせたよ……もうあの事件は繰り返したくないからね 』
「さっすが学長。じゃあ」
『ヒィン!! 』
異音。
風が逆巻く。
というより風が斬れるような音。
が、近付いて
「よぉ!!! 」
「っ!! 」
骨の髄が軋むような蹴りが、頬を抉った。
「おっ? 」
間一髪。
手をクッションにした。
敵を。
男を投げ飛ばす。
「ハハッ! 今の防ぐとかやるな!! 」
着地した男は緑色の髪をした青年だった。
歳は俺と同じくらい。
服は薄汚れた白いシャツと青いズボンを履き、その顔はニタニタと笑っている。
「俺の名は」
「いや名乗らなくていい 」
だが興味は無い。
「あっ? 何言って 」
「これから死ぬヤツの名前なんか、聞く価値ねぇよ 」
抜いていた刀を納める。
そこでやっと気がついたらしい。
小さな小さな傷が、自分の左足にある事に。
「俺の怪異は増殖と感染……まぁ言わなくても分かるよな? 」
そう聞くと、名前の知らない男は青ざめていく。
「ふ、ふざけるんじゃねぇ!! こんな終わり方」
『真城くん!? 大丈夫かい!! 』
「あっ、平気っすよ学長 」
耳の通信機に手を当て、もがき苦しむ男の隣を通り過ぎる。
「アっ」
「今終わったとこなんで 」
バチリ……男の体は弾け、体内から現れた五本の刃が首や足を串刺しにした。
『さすが"速贄”、頼りになるね 』
「その異名、ダサいからやめません? それより目的地は」
『あぁ。そのビルの屋上だよ 』
ビルの壁に刀を刺し、壁を蹴って刺し、それを繰り返す。
そのまま屋上を登りきると、向こう側に見える道路。
そこに不審な集団が見えた。
その数は二千ほど……いやその奥にまだ居る。
「学長、ほんとに良いんっすか? 」
『あぁ。水路も止めてある……思う存分にやるといい 』
「了解 」
刀についた人の爪。
それを指先で抜き取り、ピンッと街中に弾く。
「遺棄爪 」
風が舞い上がり、ヒラヒラと回りながら落ちる爪は、地面に落ち、弾けた。
そして無音が、死の音が、ゆっくりと街を呑んだ。
「『鳥葬』 」
一人、先頭の誰かが喉を押えて苦しみ始めた。
それに二人、近付いた。
そして弾けた刃が二人を傷付け、そいつらも弾け、それに巻き込まれた奴らも弾け、弾け弾け弾け弾け弾け。
鳥も、虫も、ありとあらゆる生命が弾け続け。
赤い液体と串刺しにされた肉片を残して、人の命は街から消えた。
今の感情は……派手な花火を見終わった後みたいだ。
『おつかれ真城くん 』
「俺はこれからどうしたら良いですか? 」
『一旦待機でお願いできるかな? 何か変わった事があれば可能なかぎり通信で伝えて欲しい 』
「了解 」
そこで通信が切れた。
「……ふぅ 」
何もすることが無くなったからか、手が震え始めた。
俺が殺した。
その重みがズッシリと手に乗っかってきたから。
「……でもコイツらを生かしておけば、何人も死んだかもしれねぇんだ。誰かの家族を……俺の仲間を……咲を、傷付けたかもしれねぇんだ 」
そう言い訳したら、震えはいくらかマシになった。
でも胸には違和感が残ってる。
これを続けてたら、俺の心は壊れるんだろうか?
……殺しておいて壊れるか。
身勝手だな。
「……クソ 」
震える右手。
その伸びた親指の爪。
それを噛み切り、吐き出し、湿った爪を刀にくっ付ける。
あぁクソ……こういう時、傍に誰か居て欲しい。
独りは……辛いんだ。
ーーー
『真城…… 』
『ん? あぁ咲、見送りか? 』
『絶対……帰ってきなさい。手足もげてでもね。いくらでも治してあげるから 』
『……ははっ、頼もしいな 』
「うーん…… 」
落ち着かない。
貧乏ゆすりも止まらない。
作戦が始まってからずっとこんな調子。
(真城と彩音は無事かしらねぇ )
ここは最終隊の医療テントの中。
どんな傷でも治せる私は、この中で待機を言い渡された。
私が死ねば大きな戦力ダウンになるのは分かるけども、自由がないのはちょっと落ち着かない。
それに仲間が命をかけてるのに、自分だけ安全地帯に居るのは、薄情者な気がしてならない。
「おーす 」
そんな憂鬱も知らず、ズカズカとテントに入ってきたのは歩だった。
「ほい咲、水 」
「ありがとう。でも新人……私の方が先輩なんだから敬語使いなさい 」
「お前だって人の名前呼ばねぇじゃん。もっかい自己紹介してやろうか? 」
「……覚えてるわよ 」
「じゃあ名前で呼べよ!! 」
「……嫌よ 」
ペットボトルを回し、中の水を飲む。
新人の名前は呼びたくない。
だってせっかく覚えて、仲良くなったとしても……死ぬかもしれないんだから。
死ぬのなら、知らない人の方が良い。
知らなければ、新人が死んでも辛いだけで済む。
「ちぇ〜 」
「……新人。一つ約束しなさい 」
「んっ? 」
「死にそうになったら、私を囮にしてでも逃げなさいよ? 」
「へいへ〜い。つーかそれ真城からも言われた 」
「そう…… 」
ケラケラ笑う歩をほっとき、椅子に座り込む。
そのままロザリオを握りしめ、真城たちの無事を祈る。
「あぁそれとさ 」
ふと気が付くと、新人が背後に居た。
その手には何か光るものが握られている。
「このテント、少し不用心過ぎないか? 」
「……っ!? 」
立ち上がろうとした瞬間、椅子を蹴られた。
そのまま転ぶ。
バンっと風船が破裂するような音と共に、頭上を何かが通り過ぎた。
「……えっ? 」
「狙撃だ! 隠れろ!! 」
テントの外では生徒たちが騒ぎ始めた。
なのに歩は……転ぶ私をずっと見ている。
薄気味悪い笑顔で。
「……あんた 」
「よっ 」
歩は手を横に伸ばす。
それには飛んできた剣が突き刺さり、その剣先は私の目の前で止まった。
「はやく治して〜。痛いから 」
「えっ……あっ 」
剣を引き抜いて血まみれの腕を突き出す歩。
すぐにその傷を触れて治す。
でもその間にも、歩は瞬き一つしてない。
前もそうだった。
片腕がないと言うのに、騒ぐわけでも悶えるわけでもなく、ただ冷静に治るのを待つ歩の姿が。
いやそれよりも、
「あんた……なんで狙撃されるって分かったのよ? 」
「いやぁそれは……勘? 」
「とぼけるんじゃ無いわよ!! そもそも……っ!? 」
音が。
何か重たいものが落ちてく、
「危ない!! 」
「うぉ!? 」
腕を引っ張り、二人でテントから転がり出る。
すると爆音と共に落ちてきた。
「……んだあのダルマ? 」
それは皮膚のない筋肉に包まれた赤い肉塊。
ネチョリと糸を引く肉は動き、3メートルほどはある人の形となった。
その顔にも皮膚は無く、むき出しの目玉がギロリとこっちに向いた。
「お前が……接木 咲か? 」
「あぁそうだぜ? 俺が咲だ 」
「……ん? 」
突然名乗り出た歩に対し、巨人は焦るように首を傾げた。
「いや待て、女と聞いたが…… 」
「こういう見た目の女だって居るだろ? 」
「しかし俺と」
「俺っ娘って知らね? 」
敵が侵入してきたという一大事なのに、歩が喋ってるとなんだか緩くなっていく。
だが、
「まぁ良い…… 」
巨人は蠢き、人を容易く握りつぶせる両腕が、グパリと開かれた。
「全員殺せば、済むことだ 」
「新人、下がってなさい 」
歩の肩を掴み、前に出る。
見た感じ、こいつは相当強い。
だから新人には任せられない。
「私が殺る 」
両手に注射器を生み出し、巨人に突っ込む。
けれど、
「医療道具……そうか 」
気がつけば、巨大な腕が目の前にあった。
(はやっ)
「お前が接木か 」
バキリ、握り潰された。
そのまま投げられ、六つの家を突き破り、硬い何かにぶつかって止まった。
暗い……
車がある。
ここは地下駐車場だ。
(背骨骨折……アバラ粉砕……危なかった。心臓は無事 )
怪異は心臓に宿る。
だからそこさえ無事なら、
『再構成』
パキパキ。
折れ曲がった腕やちぎれ掛けた下半身も、一瞬で再生した。
「むっ、ここか? 」
駐車場の壁が砕けた。
差し込まれる日光と共に、巨大な肉の塊が入り込んでくる。
「治っている……やはりお前か 」
「あら、私って人気者ね 」
「当然だ。傷を治せる怪異など貴重だ。稀有だ。だから殺す……貴様を 」
正直、私を追ってきてくれて助かった。
あの場で暴れていたのなら、何人もの仲間が、人が、死んで居ただろうから。
「さぁお前は……何度自分を治せる? 限界があるハズだろう? 」
「えぇ。でも…… 」
もう一度両手に注射器を構える。
死にかけてアドレナリンが出てるせいか、楽しくて、笑ってしまった。
「あんたを解体す方が速いわよ 」
私の目的はただ一つ。
全員生きて、あの寮に戻る。
それだけよ。
咲さんが哀花さんを心配してないのには理由があります
_人人人人人人人人人人人人人_
> 心配する必要がないから <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
DES!!!!




