人の星/Optimistic suicide その2
私の創造主によって生み出されたウイルスから、ワクチンを作ることは人類をもってしてでもできませんでした。
それほどに彼の執念は深かった。ドライオプティミズムが起こる前から彼はすでにそういうものに取り憑かれていたのでしょう。
でも気まぐれに、私の容姿を殺された博士の幼馴染に似せて作ったり、人間のような心をもたせて遺したのは少し不可解でした。
時として動物や私に見せた優しい笑顔も違和感がありました。あの狂気を帯びた白衣の人と同一人物のようには思えなかったから。
最期の言葉も含めてロボットにさえ、わからないことはあるのだと、私は過ぎ去った時間をセピア色におとし込みました。
結局、氷河期の到来も重なり、混乱の末に人間は成す術もなく数を減らしていき、人類は5億ほどまでになりました。
幸運なことに、少しオカルティックではありますが、星と月のバランスが整うと言われる新月に生まれた人だけは救われました。
私は彼があれだけ憎んだ人類に対して、どうすべきか悩みましたが、生きる意味を知りたくて正体を隠し、人だと偽って人間に協力しました。
少しずつ消えていく人間を助けるための鍵は、星にありました。
隕石の中に含まれる、人類の祖に近しいという特定の波長を示すアミノ酸が希望の光になりうるかもしれない。
私の隕石を探す旅が始まったのです。