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第06話 先銀河文明 先銀河文明

「何か思いついたか?」


「うんにゃ、何も」


「逆に考えてみたらどうだ。地球が転生しちゃってもいいと考えるんだ」


「それは最後の手段」


「冷静に考えればユズル(おまえ)に何か責任があるわけでもないんだ。逃げてもかまわんだろ」


「そうかもしれんが、守れるなら守る。できることがあるならやる」


「お人好し設定だな。さもなきゃここにはいないか。それで暴走トラックにはねられることにもなったわけだしな」




 パズトゥスを着たユズルが広大な海のようなプラネットトラックのフロントガラスの上に座り込む。


「だいたい無理ゲーすぎるよな。いきなりレベル14兆の惑星サイズの敵とか」


 足元のガラスをコンコンと叩く。


「ほんまそれ。転生トラックギルドとやらはなんでこんなことができるんだ? そんな強大な組織なのか」




『じっさい転生トラックギルドから見ても、プラネットトラックは規格外だな。私のようなものが存在できたのは、こちらの世界で見つけた力を利用したからだよ』


 プラネットトラックが気さくに会話に混ざってきた。


「へえ、この世界にそんなもんが?」


『うむ、君たちが木星と呼ぶ星に隠されていた、【先銀河文明】の遺産だ』


「またアレな設定ぶっ込んできたな……」




 解説娘ちゃんがシュッと現れた。


「解説いりますか?」


「いらないと言ったら?」


「死にます!」


 しないと死ぬんじゃ解説してもらうしかないね。しかたないね。




「では解説参ります。長くなるのであいづちお願いしますね。【先銀河文明】というのはよくある設定ですね。はるか昔、一億年前に銀河系全体に繁栄していた文明です」


「そんなのがいたんだねえ。滅んだの?」


「いえ、限界まで文明を発展させた彼らは、その当時の宇宙の低いエネルギー密度ではこれ以上の発展は望めないと判断し、ビッグバン直後、インフレーションの空間相転移エネルギーを利用するために138億年前の過去に跳んだそうです」


「すごかったんだねえ」


「そのときに、彼らは後からこの銀河に生まれてくる生命のために、銀河系のあちこちに遺産を残していきました。木星にあったものがそのひとつです」


「ご親切な先銀河文明さんだね」




「話は変わりますが、地球の人が異世界に行くことになる状況というのは、トラック転生だけではありません。代表的な例が【勇者召喚】ですね」


「そういうものもあるのか!」


「肉体をそのまま異世界に移動させるので魂が無くても問題ない方法です」


『まったく、野蛮なやり方だ』

「轢き殺すほうが野蛮だろ」


「今から300年前。こちらの世界に一人の異世界召喚者が帰還しました。勇者として召喚された彼は、自らの使命を果たし、異世界で高い地位を築いたのですが、老いてのちも望郷の念冷めやらず、故郷へ帰る決心をしたのです」


「300年! そんな昔から勇者召喚ってあったのか」


「いえ、たしかに大昔から異世界召喚はありましたが、そのかたが暮らしていたのは21世紀の日本です、異世界から帰還するときに時代がズレてしまったようですね」


「悲劇!」


「覚悟の上だったようですよ。『国は無くとも山河はあろう』と言っていたとか」


「解説娘ちゃんってなんでそんなこと知ってるの?」


「知ってるから知ってるんだよ! 突っ込むな! 突っ込んだら負け!」


「負けた!」


「勝った! 彼は大変な苦労を重ねました。転生トラックさんとかパズトゥスさんとかルビウスさんとか私とかが気軽に異世界と異世界を行ったり来たりしてるせいで勘違いしそうになりますが、本来世界間の移動というのは極めて難しいものなのです」


「そうだぞ。オレはすごいだろう」

「すごいよ! さすがパズトゥス! さすパズ!」


「特に地球があるこの世界は、出るのは簡単で入るのは難しいという特性(設定)があるので、召喚された人が帰った例はほどんどありません」


「ひどいな、異世界め!」


「それで帰ってきた召喚勇者のかたですが、時代がズレる以上の悲劇が起こりました」


「な、何が、起こったんだ……!」


「彼は地球ではなく、木星に現れてしまったのです!」


「なんだってー」


「世界を跨いで移動するとき、大きな壁になるのが、目標を定めることです。無数にある世界のどれが目的の世界なのか。世界を特定できたとしても、無限に広い世界のどこが目的の場所なのか。それを知らなければ帰ることができません」


「なるほど大変そうだ」


「苦労を重ねて世界を絞り込み、太陽系の位置まで絞りこんだあと、彼は『文明が存在する場所』を検知する方法を考え出しました」


「と、いうことは」


「地球の文明ではなく、木製の雲の中に隠された先銀河文明の遺産が目標(ターゲット)になってしまったのです!」


「木製?」


「誤字だい! 木星!」


「やーい誤字誤字」


「うぬぬ。先銀河文明の遺跡の中に転移してしまった彼は、そこから出ることはできませんでした。人が一生暮らせるくらいの物資は遺跡にに保管されていましたが、もう老いていた彼は、小さな光の点にしか見えない地球を見つめながら、息を引き取りました」


「うえーん、なんだよ、泣くとこかよ、うえーん」

「こんなありがちな悲劇で泣くなよ。ぐすっ」




「そんな彼の最期を看取ったものがいました」


「いったい誰なんだ……!」


「それは彼をこの世界に運んだ者。世界を渡ることができる者。侵入不可能と言われたこの世界に彼と共に挑んだ者。無数の世界が存在する上位空間(オーバースペース)を走破し、世界から別の世界へとモノを運ぶ存在。【オーバートラック】です!」


「おっ、話がつながってきたかな?」


『異世界オーバートラック協会が我々転生トラックギルドの母体となった団体だな』


「世界の特定さえ困難なこの世界にたどり着くために召喚勇者とともに多くの苦労を重ねてきたそのオーバートラックは、勇者の死に衝撃を受けました。魂を残さずに死んだことに。全てが消滅したことに。もうどこにも、どの世界にも彼がいないことに」


「なんだよまたかわいそうなシーンかようえーん」


「そして思います。こんなことは認められないと。あらゆるものは不滅であるべきだと。全ての物質に魂を与えてやると。そして先銀河文明の遺跡を調査し、その使い方を習得すると共に、ある女神の元を訪ねました」


「女神!? つながるのか? つながるのか?」


「その女神は長い間、物質に魂を宿らせる方法を研究していました。その名は、ルビウス」


「つながったー!」


「オーバートラックとルビウスさんは協力して研究を進め、ついにその方法を確立します。それが高エネルギー衝突によるスキャニングで対象の全存在を魂原基(アーキソウル)に転写する方法です。原理上、対象が生物だった場合どうしても殺してしまうことになりましたが」


「迷惑! 迷惑だよその発明! だいたいスキャン前の対象と転写された情報は同一性が保たれていると言えるのか?」


「そういう哲学的な議論は無視するそうです」


「無視するんじゃしかたないな」




「オーバートラックは転生トラックギルドを設立。先銀河文明から持ち出した技術で、地球のある世界に侵入する能力を持った転生トラックを多数製造し、ルビウスさんと協定を結んで転生トラックに魂スキャン機能を付与しました。スキャンに必要なエネルギーを得るために11トン以上の車格が必要になったようですね。速度表示灯の部分は高感度センサーだそうです」


「今回ほとんど解説娘ちゃんがしゃべってるだけだね」


「そしてオーバートラックは再び先銀河文明の遺跡を訪れ、遺跡の力でプラネットトラックによる地球転生作戦を発動したのでした」


 続きをプラネットトラックが引き継いだ。


『そして遺跡の力を使い切り、オーバートラックの車体をも材料にして、300年の時をかけ、出来上がったのだ。転生プラネットトラックα(アルファ)β(ベータ)が! そして地球へ向かって発進したのが3年前のことだ。ほとんどの力をこの巨大な質量を軌道に乗せることに費やしてしまったがな。地球に到達するまであと3ヶ月ほどだ』






「もしかして最終回が近かったりする?」


「いえ別に」


「それにしては普通もっと終盤で明かされそうな重要な世界の秘密みたいな話も出てきたけど、こんなところで明かしてよかったのかな」


「別に重要じゃないですよ?」


「重要じゃないんかい」


「こんなのただの雰囲気、フレーバーですよ。真面目に受け取らなくていいです」


「ただのフレーバーを3000文字も使って説明してたんか……」


「いっぱい解説できて気持ち良かったです!」


「死なずに住んでよかったね!」


「住んで?」


「誤字だい! 済んで!」


「やーい誤字誤字」


「ぐぬぬ」






「長っげー説明だったけど、なにか参考になったか? ユズル」


「うん、なんとなくぼんやりと、道が見えてきたような気がする」


「へえ。それでこれからどうする」


「いちおうプラネットトラックβ(ベータ)の方にも行ってみるかな」


「よし行くか」


『行くのかね。ではさらばだ。抵抗したまえ。尊い抵抗を』








 ベータのところに到着した。


 過程は省略!






『ようこそ、小さな抵抗者さん。では聞いてください。アルファに送る歌です。曲は『近日点で会いましょう』』




 プラネットトラックβ(ベータ)が歌い始めた。

 なんやこいつ。




『近日点でまた会おう

 そう言って同じ日に 木星を出たわね

 イオの火山が 見送ってくれたわ


 遠日点は 私たちの別れ道

 また会うまでの 3年を 

 あなたは長いと 感じてくれるのかしら


 少し地球を 邪魔に思うの

 あなたとわたしの 間にいるから


 軌道傾斜角40°の

 大きな大きな 楕円軌道

 その終わりに

 わたしとあなたは混じり合う


 ああ 純粋な

 アルファとベータだけで いられたらいいのに

 地球なんか どこかへやってしまって


 近日点で会いましょう

 近日点で会いましょう


 近日点でもういちど


 ふたりで……』






 ぱちぱちぱち


 歌い終わったβ(ベータ)にユズルとパズトゥスが拍手する。


『ご静聴ありがとうございましたー。どうでしたか?』


「18から7までの11段階評価で9くらいかな」


『分かりづらっ! それはいいの? わるいの?』


「それを決めるのはあなた自身!」


『じゃあいいってことにしておきます。アルファの様子はどうでしたか? 会ってきたんですよね』


「ご機嫌に『スペインの淑女たち』を歌ってたよ」


『再会を願う歌ですね……ふへへ』


「地球を轢き殺すのとかやめる気は無い?」


『アルファも言っていたと思いますけど、もう私自身軌道を変える力なんて無いんですよ。無理』


「なんだいいじわる!」


『ごめんね!』


「だいたい何でわざわざ2台で挟むのさ! 1台で十分じゃん!」


『挟んだ方がかっこいいじゃない!』


「確かに! じゃあね!」








 プラネットトラックβ(ベータ)を後にして、ユズルとパズトゥスは地球へ向かう。


 ユズルが何か考え込んでいる。




「何かつかめたかね、ユズルさんや」


「一つ思いついた。強力な異世界召喚術がある世界ってあるかな、パズトゥスさんや」


「ああ、召喚術なら強力な物を持ってる世界がいろいろあるが」


「そこに協力を頼めるかな?」


「分からんがやってみることはできるだろ。その世界に行くことは問題ない。どうするんだ?」




「転生トラックが地球そのものを転生させるというなら」




 勇者召喚。

 この世界は出るのは簡単で入るのは難しい。

 地球なんかどこかへやってしまって。






「地球全体を、勇者召喚で異世界に避難させる」




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