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第41話 テストコース テストコース


「ダンジョンに入るには、まず冒険者登録をしないとダメだぞ!」

 レイミーが言った。


「へー、さすが異世界。定番だね」

 と菜月。


「カーナ様と私はもう登録してるから他のみんなだな!」


「おっさんは?」


「俺は如意宝珠( 石ころ )だったから登録してないよ」


「ああ、そっか」






 メデュアの町のはずれに口を開けるトンネルの出入り口のすぐ横にダンジョン管理ギルドの大きな建物がある。

(↑句読点がないと読みづらいね!)


 ギルドは、出入りする、たくさんの、冒険者たちで、(にぎ)わって、いた。

(↑だからって付けすぎてもダメだね!)




「けっこう人いるけど、酸化ダンジョンって何の得があって潜るんだ?」

 菜月が疑問を(てい)する。


「酸化物って宝石になるのがけっこうあるんだよ。酸化ケイ素は水晶だし酸化アルミはルビーやサファイアだし酸化ミスリルはシルマリルだし」

 ユズルが答えた。


「なるほど」


「価値の高い宝石は深層に行かないと採れないけど、浅層で採れる酸化鉄とか酸化銅とかもつまり鉄鉱石や銅鉱石だからね」


「そーゆーダンジョンかあ」

「そういうダンジョンだよ」






「いらっしゃいませ、カーナ様、レイミー様。本日はどのようなご用件でしょうか」


 ダンジョンギルドのカウンターで受付嬢がにっこりと笑う。


「後ろのみんなの冒険者登録を頼む!」


「はい、(うけたまわ)りました。ただいまキャンペーン中でテンプレが無料になっておりますが、ごいっしょにいかがですか?」


「じゃあ、それも!」


「ではテンプレーター、起動します」






《テンプレイベント 絡んできたゴロツキをぶちのめせ!》




「それでは主人公の方は、こちらの《能力の強さを測定する水晶玉》に手を置いてください」


「出番だぞ、ユズル」

「俺でいいんかな……」


 いまひとつ主人公っぽくない主人公、ユズルが前に出る。


「この水晶玉はなぜか全然光らずに割れます。ゴロツキ冒険者がそれを見てあなたを無能だと思って絡んできますので、ぶちのめしてください」


「ヤラセかあ」

「テンプレです」


 ユズルが水晶玉に手を乗せる。

 何の反応も無いまま、水晶玉はバキッと割れた。


「あれれー、おかしいですねー、故障でしょうかー(棒読み)」

 受付嬢が台本を見ながらセリフを読む。




「ギャハハー、無能じゃねえかー、てめーみたいなゴミは、女を置いて田舎に帰りなー」


 テンプレゴロツキが絡んできた。


「ぶちのめしちゃっていいの?」

「どうぞ。テンプレですから」


「じゃあオレやるー!」

 菜月が張り切る。


「私もやります!」

 クグも出てきた。

 ちょっと珍しいな。なんか怒ってる。


「グヘヘー、ねーちゃんたち、そんな冴えねーおっさんはほっといて、俺たちとイイコトしよーぜー」




「うるせーボケェ! インフェルノエパラディーゾ!!!」


「ユズルさんはゴミじゃありません! インフェルノエパラディーゾ!!」


「グギャアアアアア!」


 菜月とクグがテンプレゴロツキたちをぶっ飛ばした。


「敬徳さまに無礼な口をききやがって! 死ね! けあーっ! けあーっ!」


 ぶっ飛ばされたゴロツキを工藤鈴がさらにボコボコにする。




「通りすがりのヒーラーですぅ、ゴロツキさんたち大怪我でかわいそうですぅ、治してあげますぅ、治療費をぼったくりますぅ」


 ゴロツキさんたちの怪我はたまたま居合わせたヒーラーさんに治してもらえたようだ。


 よかったね!






《イベントクリア! おめでとうございます。クリア報酬としてヒロインが支給されます》


「支給て」




「やるじゃない。さっきの水晶玉、人間には光ってないように見えただろうけど、エルフであるあたしには見えたわよ。人間には見えない波長の紫外線とX線とガンマ線で光ってたわ」


 クリア報酬として『自分だけは実力を見抜いてた』系のヒロイン女エルフが現れて、ユズルに話しかけてきた。


「ど、どうしてもって言うならあたしが仲間になってあげてもいいんだからね!」


「あー、いらんいらん」


 仲間になりたそうにこちらを見ている女エルフを、パズトゥスがすげなく拒絶した。


「ハーレムはもう間に合ってます。お引き取りください」


「しょぼん」


 女エルフはしょんぼりと去った。

 ちょっとかわいそう。




「もうハーレム増やさなくていいの?」

「ああ、俺の勘ではもう足りてる」


 ユズルの疑問にパズトゥスが答える。


 これ以上増えると書くのが面倒になるから助かるや。




「ご苦労様でした。テンプレは以上になります。では冒険者登録試験を受けていただきます」


「試験なんてあるんだ。さっき水晶玉で測ったのは?」


「ただの無意味なテンプレです」




「試験って何すんの?」

 菜月が尋ねた。


「ダンジョンの一部が試験用のテストコースになっていますので、ゴールまで踏破すれば合格です。

 最低限生き延びる能力があるかどうか確かめるための試験ですね。ダンジョン内であまり死なれても困りますので」

 受付嬢が答える。


「そーゆー試験かあ」


「そういう試験です。試験官として冒険者が一人同行します。受験者が危険な状況では護衛も勤めますので。ではパパローナさん、試験官を頼みますね」


「え、あたし? 気まずいんだけど」


 受付嬢が試験官として指名したのは、さっきパズトゥスに拒絶された報酬ヒロインしょんぼりエルフだった。


 気まずいな!


「気まずいな。チェンジ!」


「チェンジは無しです。使い捨てキャラの再利用(リサイクル)です。資源は大切に! では試験開始! さっさと行け!」


 ギルドから放り出された。




「指名依頼じゃしかたないわね、やりますか。あなたたちなら一層試験は楽勝そうね。あたしはパパローナ。よろしく」


「パズトゥスだ。よろしく」

「高橋ユズル敬徳です。よろしく」

「クグですよ!」

「菜月だよ」

「工藤鈴です。けあー!」

「いもうと!」

『【ぬ2772】です。よろしく』


「そのでっかい荷車ゴーレムもダンジョンに入るの? 通れない通路とかあるかも」


『では小型化しますね。クラスチェンジ!《ピックアップトラック→軽トラック》』


 発光する演出とともに、【ぬ2772】の車体が小さくなっていく。




「あらかわいい」


 光が消えるとそこには、白く小さな車体に丸いヘッドライト、意外と広い荷台、黄色ナンバーの軽トラックがいた。


「こんなことできるんだ」

 とユズル。


『やってみたらできるものですね。女体化するのもアリかと思いましたけど、安易な気がしたのでこちらにしてみました』


「これなら大体の通路は通れるわね」




「では行こう! ダンジョンの入り口はメデュアトンネルの中にあるぞ!」


「レイミー様とカーナ様もついてくるんですか? 緊張するなあ」


 領主の娘に侯爵令嬢だもんね。




「私はジュール(ユズル)と離れることはないぞ! 生まれた時からいっしょだからな!」


「私は転生する前のユズルさんといっしょの時間を過ごしていい雰囲気になったこともありますよ!」


 レイミーの自慢にクグが対抗してユズルとの仲をアピールする。


「信心の深さでは負けません! けあー!」


「今のところおっさんとの縁は薄く見えるオレも、実は親密なエピソードがあったんだぜ! そのうち幕間でやると思う」


 工藤鈴と菜月もアピールしてきた。




「モテモテで結構だな、ユズル。ハーレムも安泰だ」

「安泰かなあ」


 ヘルメットもプシュプシュだ。






「なかなか立派なトンネルだな」


 軽トラ化して手狭になった【ぬ2772】にみんなで箱乗りして、メデュアトンネルの中を進む。


 アルファとベータはすでに冒険者資格を持ってるということで、同行していない。


「トンネルを掘る時はジュールが伝えてくれた知識を元に作ったゴーレムが役に立ったぞ!」


「シールドマシンゴーレムでも作ったのか?」


「いや、提案したのはドリルジャンボゴーレムだよ。なぜなら、かっこいいから!」




 今すぐ『ドリルジャンボ』で画像検索してそのかっこよさにむせび泣くがいい!




「おっさんって、道路とかトンネル関係の仕事してたの?」

「いんや? ただの地方スーパーの従業員だったよ」


「それにしちゃ詳しいじゃん。ドリルジャンボとか知らないだろフツー」


「YouTubeのおすすめに出てきたから……」

「おすすめされたんじゃ見るしかないな」






 そうしてるうちに目的地に着いた。


「さ、ここがテストコースの入り口よ」


 試験官(パパローナ)が受付に試験の申請をする。


「受験者はパズトゥス、高橋譲敬徳、ベテルギウス・クグ、高瀬菜月、工藤(りん)、工藤(まい)、【ぬ2772】の7名。カーナ様とレイミー様は参観者です」


「クラスはどうしますか?」

「忘れてた。あなたたち、どこまで潜る予定なの?」


 受付からの質問に、パパローナがユズルたちに確認する。


「ショートカットで第5層に行く予定だから、クラス5で!」


 受験者でもないレイミーが答える。いいけどね。


「ではあちらのクラス5コースへお進みください」




《この先へ進むもの、一切の希望を捨てよ》




 と書かれた入り口がある。


「物騒な」


「これをクリアすれば5層に入る資格が得られるわよ」


「このダンジョンって、5階までしかないの? 浅いんだな」

 と菜月。


「そうでもないわよ。説明は解説娘ちゃんにお願いしよっか。死にそうだし」




「助かります! では解説させていただきます。このメデュアダンジョンは、一層降りるごとに深さが10倍になるのです!」


 読みやすいように区切るぜ!


「層と層との間は大階段で仕切られていて、第1層がおよそ50メートルほどの深さで、2層が500メートル、3層が5000メートル、4層が50キロメートルとなって現在到達されている最深の第5層は500キロメートルの深さになります」


「そりゃすごい」


「ダンジョンで生計を立てている酸化物採集業者はだいたい2層までしか潜りませんね。冒険的探索者は主に3層で活動していて、4層5層に潜るのは到達深度チャレンジャーの人たちだけです」


「たかが寄り道イベント用のダンジョンにそんな()った設定作らなくてもいいだろうに」


 まったくだ。




「それでは行きましょう!」


 珍しくクグが前に出てテストコースの入り口を(くぐ)る。


 どういうことだ?


「きゃあ!」


 そして落とし穴に落ちた。


 こういうことか。




 落ちる寸前でユズルがクグを抱き止める。


 ぎゅっとね。ぎゅっとね。


 プシュプシュと鎮静剤を噴霧されながらクグを持ち上げて、ゆっくり降ろす。


 クグはしばらく赤くなって照れ照れしていたが、気を持ち直すとパッと手を挙げて言った。


「罠は全部私が踏みますね! ドジっ娘ですから!」




 こんなところで忘れてた設定が……!




「ずりーぞ! おっさんに助けてもらえるならオレも踏む!」


 そう言って菜月が罠っぽいところに足を置いた。


 ロープが飛び出てきて菜月が逆さ宙吊りになる。


「あーれー♪」


 ユズルが跳び上がってロープを切り、落下した菜月を抱き止めた。

 お姫様抱っこでね。


「でへへ」




「おねえちゃんも がんばれ!」


 妹ちゃんが工藤鈴をドンと押した。


 壁のスイッチにぶつかって発射された槍をユズルが叩き落とす。


「ありがたや、ありがたや、けあー!」




「余裕ね、あんたたち」


 パパローナさんが呆れておるわい。




「うらやましいです、カーナ様! 付き添いの私たちは参加できません!」


「そーだねー。あとでジュールさんに二人で抱きつこう。レイミー、おんぶ」


「はっ!」


 一応受験者の一人である【ぬ2772】に乗っているわけにもいかず、自分で歩いていたカーナをレイミーが背負う。


 甘やかしてるなあ。




「しかし、暑ちーな、ここ」

 菜月が汗を拭きながら言う。


「5層は地熱でかなりの高温になってるからね。これに対処できるかどうかもテストよ」


 他の者は大丈夫そうだが、レベルが低めの工藤鈴と妹ちゃんがキツそうだ。


「狂信者ねーちゃんと妹ちゃん、これ着な」


 菜月がポータブルストレージから『ひんやりローブ』を取り出して鈴と舞に渡す。


「地球にできたいろんなダンジョンを攻略した時の戦利品だよ」


 地球そのものを異世界召喚した影響で地球にダンジョンが発生するようになったって設定だよ。

 忘れてない忘れてない。


「おありがとうございます。同じ敬徳さまの信徒としてこれからも崇め奉りましょう!」


深謝(しんしゃ)(感謝のより深い言葉)!」




「工藤鈴と工藤舞はちょっと寄生気味かな。ま、パーティ単位の試験だからいいけど」


 試験官(パパローナ)が冷静に評価している。






 その後は特に困難なこともなく。


 罠を踏んだり酸化モンスターを倒したりしながら進んでいき、まもなくゴールにたどり着いた。


 ゴールには、冒険者カード発行機が置いてある。


 順番に発行機の前に立つと、パシャっと証明写真が撮られて顔写真付きの冒険者カードが発行された。


「ヘルメットつけたままでいーの?」

「そこはテキトーだから」


 テキトーだなあ。




『合格おめでとうございます。では良い冒険を。楽しいこと、嬉しいことにたくさん出会えますように。悲しみや苦しみは乗り越えられますように。Have a nice adventure !』


 発行機から機械音声が流れた。




 冒険者カードの裏には《メデュアダンジョン:クラス5》と書かれている。


「このカードは他所(よそ)のダンジョンでも通用するわよ。メデュアの5ならたいていのダンジョンで最下層まで行けるわね」


「邪神が封印されているベルエゼラーダンジョンに入る時も使えるな!」

 カーナをおんぶしながらレイミーが言う。


 だいぶ脇道に()れちゃってどうしようかと思ったけどそういうことにしとけば先につながるな!




「試験は合格ね。そこに帰還ゲートがあるから帰りはすぐよ」


「便利だな」




 帰りを描写するのがめんどくなったわけじゃないよ。

 信じて。




 帰還ゲートをくぐると、そこはダンジョン管理ギルドの横にある広場だった。


「ほら、邪魔になるから場所空けて」


 広場ではダンジョンから帰ってきた人たちがひっきりなしにゲートから出てくる。




「お疲れ様。これであたしの役目も終わりね。ど、どうしてもって言うならヒロインになってあげてもいいんだからね!」


「いりません、お引き取りください」


「しょぼん」


 しょんぼりエルフはしょんぼりと去っていった。






「では町外れの井戸から地下5層までショートカットだ!」

 レイミーが元気に言う。


「じゃあ行こうか。でも5000文字超えちゃったし、次話に回した方がいいかな」


 うーん、確かに、ここからも長くなりそうだしな。


「では井戸へ向かうシーンで次回に続くとするか。またな!」




 またな!




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