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第25話 ありがたいこっちゃ ありがたいこっちゃ

「インフェルノエパラディーゾ!」


「ベテルギウスナグラー!」


「ディストルツィオーネ!」




 ユズルとクグとパズトゥスは、異世界に転移してきた地球で、出没する転生トラックを撃破して回っていた。


 どこからかワラワラと集まってきた転生(させない)軽トラックの群れが、転生トラックの残骸や荷台からこぼれたアーキソウルストレージやらを運び去っていく。






「また出ましたか。増えましたねえ」


「あの、すみません、私よく知らないんですけど、増えたんですか?」


「おや、新規の読者さん。お久しぶりです。増えたんですよ、転生トラックが。いま地球がいる異世界は、拒絶空間に包まれていないので入りやすいんでしょうね」


「なるほどそういう設定ですか。ところで最近変わった軽トラックを見ますね」


「あの転生(させない)軽トラックさんたちは、法整備されて特別に公道を走れるようになったそうですよ。青色の回転灯の装着を義務付けられたみたいですね」


「なるほど、ところで最近」


「そこらに建ってる偶像のことですね? あれは高橋(たかはし)(ユズル)敬徳(けいとく)尊像です。どこかの狂信者が勝手に置いているようですね。けっこう拝むひとがいますよ。このあいだの地球召喚に関するアナウンスで有名人ですからね」


「なるほど分かりました。よく知らない (ふりをしてた)ので助かりました!」


「知らない人にも知ってる人にも壁にも岩にも勝手に解説! それが解説娘ちゃん! ではまた!」








「けいとくさまー、かっこいいー」


「眉間の傷みせてくださーい」


「鎧さーん、頭とってみせてー」


「ドジっ娘さーん、マンホールに気をつけてねー」


「財布ちゃーん、100円あげるー」




 転トラ撃破の様子を歩道橋から見物していた女子高生の集団が手を振ってきた。


 財布が投げ銭を背中でキャッチする。


 ユズルはヘルメットを脱いで傷を見せて軽く手を振ると、すぐにまたヘルメットをかぶった。


 パズトゥスは頭を外して優雅に一礼してみせる。


 クグは何かしようとして転んだ。

 その拍子にユズルに抱きついてしまう。


 ヘルメットが鎮静剤を噴霧した。




「やったー! ぷしゅぷしゅだー!」

「ぷしゅぷしゅが出たー! けいとくさま照れてるー!」

「いいもの見た! ドジっ娘あざとい!」

「とうといね! とうといね!」

「こいつあ朝から縁起がいいや!」




 きゃっきゃと騒ぐ女子高生たちをあとにユズルたちはそそくさと立ち去った。


「はー、なんでこんなことに」


「大人気だな、ユズル。ああいうのには緊張しないのか?」


「してるけどね。呪いが出るほどじゃないだけで」


「意識してなきゃ呪いは出ないか。良かったな、クグ。意識されてるぞ」


「ありがとうございます! ユズルさん! 呪いを解いて、結婚しましょうね!」


 プシュプシュ。


「それにしても何なんだあちこちに建ってる俺の像は」


「そっくりですね!」


「アナウンスで有名人になったからな。だが姿を知ってるやつはそういないはずだが。第一ヒロインのしわざかな?」


「解説しますか? ちなみにかなりヤバいひとですよ! 先日10メートルユズル像を完成させて現在300メートルユズル像の建立に着手してます!」


「ウオァ……聞かないでおこう。あとで聞こう。『あとで聞く』リストに入れたまま忘れてしまおう」






 りんりん


 澄んだベルの音がした。


 ユズルたちの前にオーバー軽ワゴンが停まる。

 助手席の窓から幼女が顔を出した。


「おしらせだよ! ゆうしゃチェコから、さくせんが、つぎのフェーズにはいるから、こいって」


 分厚い資料の束を渡してきた。


「はんこください」


 こんなこともあろうかと用意してある。

 受領証に押してやった。


「ゆびはんこもいる?」


「やって!」


 拇印も押してやった。

 危険なかわいい幼女は満足顔だ。


 きゃわわ。


 ベルを鳴らしてオーバー軽ワゴンは去っていった。






「次って何かあるっけ」


「地球を太陽系に戻す算段だろ」


「そんなのがあったね……こっちで問題なく過ごせてるから忘れてたよ」




 太陽と星が別のものに変わっても、人間の日常にはほとんど変化がなかった。

 天文学者たちはむしろ嬉々として異世界の天体のデータを集めている。


 星座を頼りにする渡り鳥には深刻な影響がありそうだが、今の時期に渡りを行う鳥はあまりいない。


 モンスターが出るのが以前と違うところだが、早々と魔王が死んだせいか強力なモンスターは出てこない。

 よわよわモンスターが経験値目当てに狩られたり、ペットにされてハートフル異種族ふれあいストーリーが始まったりしている。


 ペットモンスターを太陽系に連れて帰れるのかな?




「渡り鳥のためにも太陽系に帰らにゃならんか。じゃあ行こう。ヘイタクシー! 地球召喚作戦本部まで!」


「はいはいパズトゥスタクシーでございますよっと」


「お世話になります!」






 オーバーハイウェイを三人が疾走する。


 どう走っているのかというと、パズトゥスがどこからか出した4輪のついた台車に乗っている。パズトゥス(ちから)でタイヤが回るそうな。


 屋根もフロントガラスも無いのでなかなかスリリングだ。


 パズトゥスが気を利かせて台車を狭くしているので、ユズルとクグがけっこうくっついている。


 クグはニコニコ、ユズルはプシュプシュだ。






 勇者の屋敷についた。




「来ましたー」


「ああ、おかえり。聞いたよユズル、自分の像を作らせて町に置くとか、あんたけっこうアレなんだねえ」


「俺じゃない! 俺じゃない!」




 勇者の誤解を解いて、仕事の話だ。


 異世界冒険物語なのに仕事仕事でなんだか社畜みたいだね!




「もうすぐ惑星トラックアルファとベータが衝突する。その勢いはトラックの形を保っていられるようなもんじゃない。運動エネルギーは熱に変わって、どっちも溶けて混じり合い、鉄の塊になるだろう」


「そんなことになるんですね。しかし、間に地球があってもそうなったんじゃないですかね」


「なったろうね。自分が壊れてでも情報スキャンできるような作りになってるんだろうさ。地球ほど大きなものの全存在を読み取るためには、惑星トラック二台が潰れるほどの高エネルギー衝突が必要だったってことだろう」




「なるほど。そういえば拒絶空間の向こうの情報をどうやって?」


「この前の召喚魔法陣の一部は地球があった軌道に残ってるのさ。自動的に向こうの状況を送ってくるようになってる。中から外へ信号をおくるのは比較的容易だからね」


「なるほどそういう設定ですか」


 そういう設定だ。

 どれだけの設定が今考えたものなんだろうね!




「やつらは鉄の塊になる。以前言ったように、それをターゲットにして地球とリンクし、位置を取り替えるようにして地球を太陽系に戻すからね。これで拒絶空間を越えられるはずだ」




 何の実現方法も考えずに『地球を勇者召喚で異世界に避難させる』とかほざいたユズルの戯言(ざれごと)を、他のひとたちが発展させ、補完し、完成させ、実行する。


 ありがたいこっちゃ。ありがたいこっちゃ。




「あんたらの仕事はまた同じさ。鉄の塊になった惑星トラックの成れの果てに、召喚魔法陣ジェネレーターを設置する。運搬用のオーバートラックも呼んであるよ」


『ひさしー。元気してたー?』


 以前召喚魔法陣ジェネレーターを運んでくれたオーバートラックがいた。


「こんにちは。ルビウスに追われてたけど、逃げ切れた?」


『だいぶ壊されたよー。軽油飲んで直した!』


「大変だったね。自業自得だけど!」


『じゃー積んで積んで』




 以前と同じく三つの立方体を積み込む。


『しゅっぱーつ! たのむよパズトゥスぴょん』


「ぴょんのままか……まあいい。アンインストール、パズユズクグ&オバトラ!」


 めんどうになって短縮!




 三人が乗ったオーバートラックが光に包まれて消える。


 地球召喚作戦も最終フェーズだ。


 さあ、どうなるかな。





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