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第18話 飛べる 飛べる

 しばしの休息が終わる。




 次の仕事だ。

 

 召喚引力を拒絶空間を越えて通し、地球に繋げる。


 地球にリンクを作る仕事だ。


 パズトゥスがいれば間に合う作業だが、例によってユズルとクグも同行する。

 行きたいからいくのさ。必要なくてもね。




「こいつを地球に設置してきてくれ。1万以上の世界の召喚術を結集した召喚魔法陣ジェネレーターだ。この規模だと私らじゃ拒絶空間を通せない。たのむよパズトゥス」


 と勇者チェコが言う。


「あっちで魔法陣が展開されちゃえば引っ張り込むのは比較的簡単だからねー。比較的だけど」


 とこの世界の創造神エメルディアスが言う。


「でかいな。運ぶのが面倒そうだ」


 とパズトゥスが言う。


 一辺2メートルほどの大きさの立方体が三つある。


「お(ふだ)に変えて持っていけるんじゃ?」

「こいつは圧縮した状態でこれだ。これ以上小さくはならない」

 ユズルの言葉にパズトゥスが答えた。


「運搬手段も用意してあるよ。オーバートラックが一台同行するから」




『やっほー、オーバートラックだよー。よろしくー。運ぶよー。積んで積んでー』


 ボンネットのある巨大なトレーラーヘッドにさらに巨大なトレーラーを連結したオーバートラックが馴れ馴れしくあいさつしてきた。


「そんなら楽だな」


 パズトゥスが立方体を一つひょいと持ち上げる。

 続いてユズルとクグもひとつずつ持ち上げた。


 忘れられてそうだけど二人のレベルは10000。

 スーパーユズルとベテルギウス・クグだ。

 10トンほどの重さを持ち上げるくらいは造作もない。


 オーバートラックの荷台に積み込む。


『ウヒョヒョ、30トン積み! わたしすごいね!』


「日本の公道は走れないなー」


『オーバーハイウェイはこれくらいザラに走ってるよー』


「なにを運んでるんだ」


『いろいろだよ! 細かく突っ込むと泣くよ?』


「親睦も深まったところで、そろそろ出発しな。召喚魔法陣ジェネレーターは赤道上のなるべくお互い離れた場所に置いとくれ。詳しい扱い方はこの資料を読んでな」


 パズトゥスとユズルとクグがトラックに乗り込む。

 運転席後部のキャビンは小さなリビングと言えそうなほど広い。


「広いなー」


『中で生活できるよ! ではアンインストールは任せた。パズトゥスちゃん』


「ちゃんづけするなよなれなれしい」


『じゃあパズトゥスぴょん』


「……文句をつけるともっとひどくなりそうだからそれでいいや。アンインストール、パズトゥスユズルクグアンドオーバートラック」


 巨大な光の直方体がトラックを包み込み、小さくなり、消える。


「いってらっしゃー」








 オーバーハイウェイを走る。


『誰か運転してみるー?』


「いいの? 大型免許とか無いけど」


『だいじょぶだいじょぶ。ヤバい時は私が引き継ぐしー』


「じゃあやってみようかな」

 ユズルが手を挙げた。


「オレはいい」


「私はお茶を入れてますね! ユズルさん!」




 ユズルが運転席に座る。


『色々あるけど基本ハンドル、アクセル、ブレーキしか使わないよー、簡単簡単。じゃあまずアクセル床までベタ踏みしてー』


「こう?」


 オーバートラックがぐんと加速した。


『いいよー、そこで思いっきりブレーキ踏んでハンドルを右に!』


 急激な制動と方向転換でトラックが大きく横滑りした。

 ヘッドとトレーラーは連結部で折れ曲がり、いわゆるジャックナイフと呼ばれる形になる。


 振り回された荷台が、近くを走っていた転生トラックを跳ね飛ばした。


「ちょ! いいの!? これいいの!?」


『ヒャッホー! 楽しー! 暴走たのしー!』


 こいつ暴走トラックだ!


「今ぶっとばした転トラは地球に行くとこだったみたいだから魂は積んでなかったろ。問題ない。問題なかった。そうとも」


「お茶入りましたよ! ユズルさん!」


 クグは激しい揺れの中でもお茶を淹れられたようだ。

 さすがはレベル10000。


「もう運転しない! お茶飲む!」


『その前にそっちの道に入ってー』


「いいんだろうな? 何か企んでないよな?」


『大丈夫、そっちは地球運搬用に開通した専用オーバー道路(ドーロ)だよー。通っていいってさ』


「そっか、この任務も地球召喚作戦の一環だもんな。使わせてもらえるか」


『運転引き継ぐよー。よっしゃー、飛ばすぜー!』


「もうちょっとマシなオーバートラックさんはいなかったのかな」




 真っ直ぐなオーバー道路を走り続けて、拒絶空間が近づいてきた。


『あの中が地球かー』


「正確には、地球がある宇宙全部があの中ですよ。解説娘ちゃんからのひとこと解説でした」


「そう聞くとパズトゥスってすごいんだな。広い宇宙から地球の場所を特定できるわけだ」


「すごいだろう。ほめろ!」


「パズトゥス最高! 天才! 大統領!」 




『もうすぐ拒絶空間に突っ込んじゃうよー。パズトゥスぴょん道作ってー』


「また合体でもする?」


「あれはその場限りのノリでやっただけだから……今回はいいや」


 パズトゥスは窓から外に出るとボンネットの上に立った。

 まず腕組みをして迫る拒絶空間を見据える。


「む、かっこつけてるな。かっこいい!」




(つらぬ)け! ペネトラーレ!」




 拒絶空間に穴が空いた。オーバートラックが通り抜けていく。


『こんな感じかー。わりとあっさりだね』


「続けてインストール! パズトゥスユズルクグアンドオーバートラック!」








 北米中西部の大平原に、光の点が現れた。

 瞬く間に大きく広がり、砕け散る。


 巨大なトラックがそこに出現した。




『ここが魂の無い世界かー。別に変わったところもないね』


「ここはどこ?」

 ユズルが周りを見回す。


「アメリカだ。でかいトラックがあっても邪魔にならない所と思ったらここになった」


「そっか。それで召喚ジェネレーターを設置するわけだけど……赤道上に出来るだけ離してか。どうしてもひとつは海の上になりそうなんだけど」


「むしろ三つとも海上に設置するのが望ましいと資料にあるぞ。太平洋と大西洋とインド洋でだいたい等距離で置けそうだ」


「海の上って、どうやって運ぶの」


 パズトゥスはユズルとクグを見る。


「おまえらはレベル10000もあるんだ。もう空を飛ぶ能力も得てるはずだぞ」


「あれ!? ほんとだ! 飛べる! 俺、飛べる!」


「私も飛べます! すごいです! 知らなかったです!」


 二人はしばらく空を飛び回った。


「わーい」


「おもしろいですー」




「それくらいにしとけ。じゃあ手分けしてジェネレーターを運ぶぞ。無意味についてきたわりに役に立ちそうじゃないか」


「なにが役に立つか分からないものだね!」


「ユズルを一人にするのがちょっと不安だな……ルビウスが襲ってきたら」


「あれ以来音沙汰無いのが不気味だね。レベル10000でも対抗できないかな?」


「できないだろうな。ルビウス警報機を持たせてやる。鳴ったら逃げろ。逃げるだけなら十分可能だ」


「わかった」


「じゃあ、パズトゥスGPSとパズトゥス通信で位置を指示してやるからな。クグが大西洋、ユズルが太平洋、オレがインド洋に行く」


「能力名を考えるのが面倒になってない?」


「最初からだぞ」




『わたしはこのへんで暴走してていいー?』

 オーバートラックが尋ねてきた。


「オーバートラックは帰っちゃってもいいぞ。拒絶空間から出る場合はオレがいなくても大丈夫だろう」


『そっかー、じゃあてきとーに暴走してから直帰するー』


「ご苦労さん」


 オーバートラックは大平原を楽しそうに走り始めた。

 決まったコースなんてものがなければ暴走も快走も同じものだね。


「では行くか」






『赤いのが来ます 赤いのが来ます』






 ルビウス警報が鳴り始めた。


「のわ!?」


「いきなりかい。この反応は近いぞ! 隠れろ! パズトゥス隠れの術!」


「インフェルノエパラディーゾ迷彩(カムファーレ)!」


「インビジブルクグ!」


 レベル10000もあるといろいろ覚えてるもんだね。


 ……その場の都合が全てに優先するのさ!






 赤いのが飛んできた。

 実に赤い。


 ルビウスは楽しげに走り回るオーバートラックを睨みつけた。




「転生トラックさんを当て逃げしたのはきさまかああああ!」




 そんなこともありましたっけねえ。

 そんときにハンドルを握っていたユズルがビクッとする。


「かわいそうなことを! 許しません! ぶち壊してやります!」


『うわー、赤いねー、あなた赤すぎ。もしかしてレーゾンデートルは英語だとか思ってない?』


「……(チリ)も残さん」


「あははー、鬼さんこちらー、クラクションの鳴るほうへー」


 オーバートラックはトレーラーを切り離して走り去った。

 ルビウスはその後を追いかけて行く。


 やがて、視界から消える。






「行ったか……とりあえず、こっちは大丈夫かな……?」


「俺じゃない俺じゃない、オーバートラックがやれって言うから」


「大丈夫ですユズルさん! 交通刑務所に入れられても私はいつまでも待ってます!」


 プシュプシュ


 やましい思いをヘルメットが落ち着かせた。


「うむ、俺の責任じゃないな! 無罪!」


 いいのかなー。






「んなことはどうでもいいから今のうちに出発するぞ。トレーラーからジェネレーターをおろせ」


「そういえば積み込んだままだったな」


「よいしょー! 軽々です!」


 それぞれが10トンの立方体を持つ。

 持ち手がついてるから意外と持ちやすいよ。


「持ったまま飛べそうか?」


「問題ないな」


「大丈夫です、飛べます!」


「よし、出発だ」






 三人が飛び上がり、それぞれの方向へ別れて飛んでいく。




 さて、設置はうまくいくかな。


 アザラシに妨害されないかな。




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