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第17話 閑話は無駄話という意味だ 閑話は無駄話という意味だ

 ひとときの休息。




 ユズルとパズトゥスとクグは特に用もなく野原を歩いていた。


 三人の前に特に意味もなくアザラシが現れる。




「やあ。君たち、地球を動かそうとしてるね」


「うん」


「そういうことするとね、意味もなくアザラシに妨害されるんだよ」


「なんで?」


「意味もなく」


「そっかー。困るなー」


「妨害するよ」


「意味もなく?」


「意味もなく」


「古典映画のマネだろ」


「違うよ。あっちは爬虫類。こっちは哺乳類。違うよ。ぜんぜん違うよ。関係ないよ。ないんだ!」


「分かったよ、そんなに言うな」


「妨害されたくなかったら、寝ていて暮らせるところを紹介して」


「そんな極楽みたいなところ」


「紹介しないと妨害するよ」


「うーん、水族館は?」


「水族館は寝ていて暮らせる?」


「うん、イルカやアシカは芸の道がキビシイけどアザラシはゴロゴロしてればウケるから」


「じゃあそれにする」


伝手(つて)とかないから紹介とか無理だよ」


「しかたないな、自分で何とかする。楽するためならどんな苦労も(いと)わないよ」


「えらいな」


「じゃあね」


 アザラシは履歴書を持って水族館へと旅立った。

 うまく行くといいね。




 どうでもいいエピソードだったね。


 こういうのを閑話(無駄話)っていうのだ。








「さて! いよいよ、地球召喚作戦の本番が迫ってまいりました! そこでこちらに特別コメンテーターをお呼びしています。古代ギリシャの賢人、万学の祖と呼ばれた、アリストテレスさんです!」




 解説娘ちゃんがなにか始めたぞ。


 閑話だからね。

 無駄話だからね。

 本編と何の関係もなくていいのさ。




「うん、ワシ、アリストテレスじゃけど、何でワシ呼ばれたの?」


「アリストテレスさんは昔、『しっかりした土台と曲がらない長い棒があれば、地球をも動かしてみせる』とおっしゃったとか」


「それ言ったのワシじゃなくてアルキメデスなんじゃけど……」


「あれ? ほんとだ! 間違えた! もう! なんでアリストテレスさんが来てるんですか!」


「呼ばれたからだよ!?」




「はあ、まあいいです。名前も似てるし、たいして変わらないでしょう。みんな違いなんかわかりませんよね」


「大違いだよ!? 名前も別に似てないじゃろう」


「アで始まってスで終わってれば十分似てますよ! もうアリストテレスでもアルキメデスでもアリスタルコスでもいいですから何か面白いことを言ってください」


「ワシそういう芸人じゃないからね!?」


「つまんない人ですねー、じゃあ何で来たんですか、呼ばれてもいないのに!」


「呼ばれたよ!?」




 今回の解説娘ちゃん、攻撃的だね。何かあったの?


「ワクチンの副反応がキツくてイライラです!」


 そっか。大変だね。




「他人事だと思って! まあいいです。次に行きましょう。『地球』『動く』このキーワードで真っ先に出てくるのがこの人! ガリレオ・ガリレイさんです! あれ? ガリレオで合ってるよね? ガガリーンじゃないよね?」




「どもー、ガリレオでーす。……ひー! アリストテレスがいるー! 何で!? アルキメデスじゃなかったの!?」


「おー、ガリレオくん。君の『天文対話』読ませてもらったよ」


「そういえばガリレオさんは、『天文対話』の中でアリストテレスをけちょんけちょんにこき下ろしていましたね!」


「してたのう」


「してませんよ! ちょっとこの説は違うんじゃないかなー、ってところをやんわり指摘しただけです!」


「分かっとるて。『アリストテレスが望遠鏡を持っていたら意見を変えただろう』という君の見解はそのとおりじゃよ」


「へっへっへ、さすがはアリストテレスの旦那、ご見識が高い! いよっ! 大賢人!」




「教会の圧力にも屈しなかったガリレオさんも万学の祖の前では大きな顔はできないようですね」


「ぼく教会にも屈したんですけど」


「あれ? 焼き殺されてませんでした?」


「それはブルーノ」




「真理への道は険しいもんじゃて。ワシも間違っとったがガリレイ君にも間違いはあったし、ニュートンやアインシュタインにも足りない部分はあるんじゃしな」


「全くその通りでございます。先生の偉大さが損なうことなどこれっぽっちもございません! へっへっへ」




「間違いと言えば、ファンタジーでいまだに四大元素説が幅を利かせとるのはどうにかならんかのう。提唱者の一人としては間違いがいつまでも晒されとるようで恥ずかしいんじゃが」


「感覚的に分かりやすいですからね。意外と上手く現象を説明できる理論ですし。先生の理論が2000年後でも通用するってことですよ! さすがアリストテレス! さすアリ!」




「話が逸れてますよ! 脱線はそこまでにして、地球を動かす話をしてください! 本題に戻って!」


「……」

「……」


「どうしました? 何かしゃべってください」


「いや、だって」

「本題に戻るならワシら丸ごといらないじゃろ」


「確かに」






 これまた閑話(無駄話)だ。


 別に無くてもいいもの。いらないもの。


 この世にそんなものはいくらでもあるけど、いらないからって消える必要はない。

 無駄と言われてもいらないと言われても在りたければ在ればいい、やりたければやればいい。


 存在する意味なんてものはそれ自身の中にあれば十分さ。








 つかの間の休息。


 ユズルとパズトゥスとクグは、日本のユズルの家でくつろいでいた。


「家が新しくなってありがたいなー。隙間風も無くなったし階段も軋まなくなった」とユズル。


「いい家です!」とクグ。


「オレのだからな。オレの家」とパズトゥス。




 ピンポーン




 誰か来た。


 玄関の前に数人の人がいる。




「はじめまして。私は学園超能力ものの主人公です」


「おれは巨大ロボットものの主人公だ」


「僕はサスペンスSFものの主人公です」


「グルメものの主人公やってます」


「女子高日常ものの主人公だよー」




 色々な物語の主人公さんたちのようだ。




「どうも、異世界トラック転生ものの主人公です」


 ユズルは訪問者たちをリビングに招き入れる。




「さて、現在、惑星サイズの転生トラックが地球に接近中なわけですが」


 代表して超能力少女が話し始める。

 転生設定も把握してるみたいだね。


「私たちはそれぞれのストーリーで、この状況を独自の手段で解決しようと動いているところです。主人公はあなただけではないんですよ」


「そうでしたか。頼もしいですね」




「私は世界中の超能力者が同調して惑星トラックを押し返す展開を予定しています」


「おれのところは月面で発見した先銀河文明の遺跡を利用して太陽ビーム砲で惑星トラックを破壊する予定だ」


「僕の場合は未来の地球人が助けに来るんです。助けてもらったあとで、過去の地球を助けに行く未来に到達するために全人類が一丸となって発展していく予定です」


「わたしの場合は夢オチですね。起きたら夢で、惑星トラックなんていなかった、となる予定です」


「わたしたちはねー、このままおとなしく転生しちゃおっかって話になってるー」




「なるほど。こちらは勇者召喚で地球そのものを異世界に避難させる予定です」




「こんなふうにそれぞれがそれぞれのやりかたで行動しているわけですが、どれが成功しても地球は救われます」




 ダメなのもあるんじゃ?




「問題は、全部成功したらどうなるのか、ということです」


 いろいろと矛盾しそうだね。すでに矛盾してるし。


「なのでこの際、ストーリーごとに世界を分けてしまってそれぞれがそれぞれの地球を救うパラレル展開にしたらどうかと思います」


 いいんじゃない。それで行こう。


「いいんじゃないですか。それで行きましょう」


「では決まりですね」




 ふと、超能力少女の目が優しくなった。


「ですからね。今のあなたの役目をあまり重荷に感じる必要はありませんよ。ひとりじゃないんです」


「仮にあんたが失敗しても、おれは成功させてみせるからな!」


「失敗した世界はシレッと成功した世界に合流すればいいです」


「いないんです。惑星トラックなんていないんです」


「べつに転生しちゃってもいいからねー」




 主人公さんたちが帰っていく。






 世界は回る。


 たとえユズルがいなくても。




 それでもユズルはここにいる。存在理由(レーゾンデートル)はユズル自身の中にある。




「私はユズルさんがいないとダメですよ! 私が必要としています! 結婚しましょう!」


「お前はオレの所有物だ。それだけでも価値があるさ」


『待ってろよおっさん! 今にでかくなって、しっかり意識させてやるぜ! 電撃(呪い)をくらえ!』


『まだお礼もできてませんよ、高橋譲敬徳さん。いてくれないとこまります。いてください。ずっとずっと』


『まだ出てきてないヒロインだ! 早く来い、私の元に!』


『あらまあ。いてもいいんですよ。よしよし』




 閑話だからってここにいない人間や未登場キャラまでが主張し始めた。


 ちゃんと出てくるんだろうな。






 閑話もここまでだ。


 無駄でもいらなくても、もうここにある。ここにいる。




 それでいいのさ。




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