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日本最強の部隊③

この物語はフィクションです。




◯ ◯ ◯ ◯ ◯






「中川椿が出発した。出番だぞ、メイリン君」

「エー、今いいとこなのに!」


 おひさま。きらきら。げんきいっぱい。


「弟子の活躍を見られないなんて、あんまりネ!」

「我慢したまえ。こっちで録画しておくから」

「ヤダヤダヤダヤダ!」

「君は子供か......」


 ぼぶ。しゅうさん。みんななかよし。


「ほら、君のせいでエヴィエラ君はあんなふうになっちゃったんだから、その分働いてもらうよ」

「うっ。私、ボタン押しただけネ......」

「......早くしないと君の実年齢をみんなに公表する」

「い、いってくるアル」


 ーーハッ!? あれ? 私は一体、今まで何を?


「ちなみに、中川椿は転位能力持ちの魔法少女らしき人物と行動を共にしてるから、よろしくね」

「ええっ!? ヘリじゃないアルか!?」

「ヘリじゃないあるよ」


 確か......メイリンさんができるだけ押すなと書かれたボタンを押したら、なんかビームが出てきて......。


「むしろ、SATの方がヘリを使いそうなんだよね。窓は全部塞いでるし、市街地だからヘリが降りる場所なんて無いんだけど......」

「おー? まあ、細かいことは少年に任せるヨロシ」


 むむっ、なんだか不穏な気配を感じます。

 これはもしや......朱羽さんがピンチなのでは!?


「じゃあ、行ってくるネ」

「私も行ってきます」

「やりすぎないよう気をつけてね」

「「はーい」」


 今助けに行きますよ、相棒!






◯ ◯ ◯ ◯ ◯

 


 



『第一陣、来ます!』

「見えてるよ」

 

 芦屋邸一階。

 エントランス前に陣取る俺は、ニコと一緒に大量の警察官と対峙していた。


「一班は人質の救出。他の班で犯人を確保する」

「「「了解」」」


 階段の方に向かう人たちを止めることはしない。

 もうこうなったら、芦屋さんがここにいても怪我をさせる危険があるだけだし、それなら早く持っていってもらった方がありがたい。


 けどまあ、ちょっと嫌がらせはしておこうか。


「ようこそ、日本警察の諸君! この度は、ワガハイの主催するゲームにご参加いただきありがとう! ワガハイ、感謝感激! わざわざお越し頂いた皆々様には、ワガハイからプレゼントを用意させていただいた!」


 あらかじめ考えていたセリフをある程度省略した上で、早口で捲し立てる。

 いや、だってあいつら今にも突撃してきそうなんだもん。口上中はやめてね? 空気読んでね?


「諸君、ワガハイの右手にご注目だ」


 握った手には、黒と赤というこれ見よがしに危険な色合いで彩られたスイッチが一つ。


「こいつを押すとーー」


 何人かの反応が早い警官が動こうと身を捩るが、まだ比較的離れた位置にいる俺には関係なく、余裕を持った動きで親指で押し込んだ。瞬間。


「くっーー」

「な、なんだ!?」


 衝撃。

 後に、天井からパラパラと塵が落ちてくる。


「このように、屋敷のどこかが爆破されてしまうので、なるべく早くワガハイを討伐することをオススメするぞ」


 やっぱり、テロリストといえば爆弾だよね。

 人質だけ回収して終わりにされても面白くないので、脅す用にあらかじめ一つ、仕込んでおいたのだ。さっき芦屋さんに許可をもらえたので、せっかくだし早めに使っておくことにした。芦屋さんや警察の人が近くにいたら危ないしね。


 無駄になるかとも思っていたけど、挑発としてはそれなりに有効だったようだ。


「確保!」

「「「了解」」」


 ......取り敢えず、銃を撃ってはこないのかな?

 ならまずは、体術で圧倒しようか。


「んんっ」

 

 わざとらしく咳払いをして、注目を集める。

 先ほどいきなり爆破した前科があるからか、警戒した視線が集まるのを感じた。俺はただ口元に手を当てただけの、直立した状態。手には武器もない。


 しかし、次の瞬間にはーー。


「なにっ!?」


 いいね、その驚いた顔。


「さあ、シュータイムだ」


 さっきまで5メートルはあったはずの距離が、息を呑む間に0へと縮まる。さっきまで直立だったはずの俺は、気づけば右足を引き絞っている。

 受ける体勢が全く整っていない警官に突き刺さったのは、当然の結果だった。


「まずは一人」


 声を置き去りにして、吹っ飛んでいく。


 しかし、思ったよりも硬いな。

 多分、防弾チョッキかな? この感触だと、気絶までは持っていけてない気がする。


「ニコ」

『了解』


 まあ、削りきれなかった分はニコが「丁度いい具合の電気ショック」で気絶させてくれるから、問題はない。俺はこの調子で、どんどんダメージを稼いでいこう。


「次」


 足を振り切った姿勢から、次の瞬間には、数メートル先で拳を振りかぶっている。


「次」


 かと思えば、包囲されないよう場所を変え、壁キックからの踵落とし。


「次」


 慣性を全く感じさせない動きで、また走り出す。


 メイリンさんとの訓練で、戦いで重要なのは「速さ」だと学んだ。そしてその速さにおいて、俺は警察を圧倒的に突き放している。


 警視庁の精鋭部隊であっても......いや、精鋭部隊だからこそ、俺の動きを捉えることが出来ていない。


『ーー後ろ!』

「おーらいっ!」


 倒れた警官に電気ショックを浴びせながらも、ニコが警告の音声をくれる。ナイス報告だ。


 無防備な背中に攻撃を食らってしまう......いやまあ、メイリンさんとの特訓を重ねた俺なら多分受けても割と大丈夫だと思うけど、それはパフォーマンスとして美しくない。


 ーーというわけで、液体化。再構成。


「やあ、目が合ったね」

「な、なんで!?」


 さっきまで無防備に背中を向けていたはずの俺が、右手一本で警棒を受け流している。しかも、向かい合った状態で。


 この人の驚きも尤もだろう。普通、人が振り返るにはまず足を動かし、それに合わせて下半身を捻り、次に上半身ーーと、さまざまな予備動作を必要とする。走り出す時、攻撃する時も同様だ。


 ーーしかし、俺にはその予備動作の一切がない。


 受け流した右手を液体化し、再構成。

 肩からを作り直せば、一瞬で相手の袖を取り、


「はあっ!」

「うわああっ!?」


 このように、投げることができる。

 

「次」


 人間というのは無意識に、その予備動作から相手の動きを予測している。


「次」


 そして、戦闘に慣れた人間であればあるほど、その予測から先手を打つように行動を計画する。

 

「次ィ!」


 俺はそれを利用する。

 「まだ背中を向けている」と相手が思っているうちに反撃し、「今はまだ蹴り終えたばかりだ」と、思われているうちに走り出す。一つ一つの動作に液体化・再構成を入り混ぜることで動きにかかる時間を大幅に短縮・削減し、相手の予測する数倍の速さで翻弄する。


『半分の無力化に成功しました!』


 ーーよし! このまま押し切る!

 

「くっ......『発砲を許可する!』」

「ハハッ、馬鹿め! そのように大声で作戦を伝えて、ワガハイに対策されないとでも思ったか!?」


 液体化すれば多分撃たれてもなんとかなるけど、この戦いはニコの内部カメラで全国に中継されている。軽やかに全弾返し切って、俺たちの組織の強さをーーな!?


「なにぃ!?」


 視界が、真っ白に染まった。




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