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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第四章 平安カプチーノと魅惑のマリトッツォ

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秘密の物を持ってきました

 

 発酵中の酒粕が入った瓶を立派な塗りの箱に収めて女房たちに持たせ、鷹子たち一行は陰陽寮を訪ねた。


 帝からの預かり物を持ってくるということで、内密に、という形をとっていたが。


 鷹子が移動すると大行列になってしまうので、なにも内密にはなっていなかった。


「女御様がわざわざ運ばれてくる帝からのお預かり物。

 一体どのようなものなのか」

と陰陽寮の中でも噂になっていたようだ。


「引き受けるのは晴明なのか。

 それでなくとも、女御様のところに入り浸っているという噂なのに」


 やれ、うらやましや、という声を聞いた晴明が、陰陽頭(おんようのかみ)の許を訪れていた鷹子に文句を言ってくる。


「……あの、女御様がおかしな計画を立てるから、みなに妬まれて困っているのですが」


「ああ、帝の覚えがめでたいと思われて?」


 そんなの元からなのにね、と言ったが、晴明は、


「いえ、帝のことではないですよ」

と言う。


 鷹子と接触が多すぎるので、他の陰陽師たちがうらやましがっているのだと言う。


「どの辺がうらやましいのか、わからないのですが」

とハッキリ言う晴明を陰陽頭が、これっ、と叱っていた。




「ところで青龍はどちらに」


「青龍の許に参られますか?

 牛車は通れないのですが」

と言われたが、ついていく。


 この間の冷蔵庫になっている洞穴とは違う洞穴に連れていかれた。


「穴は短いです。

 が、お気をつけを」


 灯りを手に先導する晴明がそう言ってくる。


「……虫でも出るとか?」

と鷹子は警戒して言ったが。


「いえ、虫すら出ませんよ、此処は。

 ただ……、出口をお間違えなきように」


 そう晴明は念を押した。


「みな、お互いの身体の何処かに触れてください。

 誰か、私の身体にも触れておいてください」


 そう晴明が言うや否や、女房たちが争い出した。



 結局、命婦が晴明に触れ、鷹子が命婦に触れ、その鷹子に、


「恐れ多いことでございます」

と言いながら、伊予が触れていたが。


 おそらく、私なんかより、晴明に触れる方が恐れ多いんだろうな、と鷹子は思っていた。



 穴をくぐり、明るい場所に出る。


 そこはあまり木の茂っていない林の中だった。


 突然、山中に出たようだ。


「内裏の近くにこんな山あったかしら?」


 そう鷹子が呟くと、晴明が、


「いえ、此処は内裏からは遠いです」

と言う。


 ……二分も歩かなかった気がするんだけど、と思ったが、まあ、陰陽寮にある謎の穴だ。


 少々のことがあっても驚かない。


「卵が部屋には置いておけない大きさになってしまったので、仕方なく、此処に連れてまいったのです」

と先を歩きながら晴明が言う。


 木々の隙間に莫迦デカイ卵が見えてきた。


 少し黄色がかった白い卵だ。


「なにこの、今にも恐竜とか(かえ)りそうなの」


「これが青龍ですよ」

と卵からちょっぴり距離をとり、晴明は言う。


「……なんで離れてるの?」


「いえ、なにが出てくるのかわからないので」


 入ってんの、あなたの小間使いというか、弟子ですよね……?





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