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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第四章 平安カプチーノと魅惑のマリトッツォ

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パン作り、第一段階です

 

 晴明がもらってきてくれた酒粕を鷹子たちは仕込んでみた。


「密閉容器がないけど。

 まあ、古代で発酵パン作るようになったときにもなかったはずだものね」


 とりあえず、玻璃のグラスを煮沸してみる。


 昔は土器でやってたわけだから、陶器でもいいかな、とも思ったのだが。


 ガラスの方が外から見えるし、いいだろうと思い、やってみた。


「雑菌が入らないよう、密閉した方がいいのですが」

と女房たちが煮沸してくれたグラスを見ながら晴明が言う。


「でも、間で空気を入れてやらないといけませんけどね」


 ややこしいな……。


 密閉も必要だけど、空気も必要なのか。


「現代のパン作りの知識、あるんですか?」


「古代や中世のパンを調べたときに。

 現代の作り方も少し」


 此処はしらばっくれるべきところではないと思っているのか、晴明は素直にそう答えてきた。


 うーん。

 私はたぶん、その少し、な感じのあなたから聞いたわずかな知識と、家庭科の知識しかありませんけどね、と鷹子はちょっと不安になる。


「まあ、密閉とまではいかないけど。

 とりあえず、皿で蓋してみましょうか」


 すごく発酵して、カタカタ震えて、蓋が外れたりしないだろうか。


 なにかで押さえつけとくか……。


 それはそれで、ひっくり返るかな。


「でも、発酵って、難しそうね。

 家庭科の先生が転生しててくれないかな」


 ぼそりと鷹子はそんな言葉をもらした。


 いや、世界史の先生じゃ役に立たないと言っているわけではないんですけどね、と思っていると、


「何故、先生限定なのですか」

と晴明が言ってきた。


「パン職人でいいんじゃないですか?」


 ……そういや、そうだな、と鷹子は気づいた。


 学生だったせいか。

 物を教わる イコール 先生、と今でもまだ思ってしまっているようだ。


「でも、それを言うなら、スイーツ職人を探せばいいのでは」

と言ってみたが、


「職人が居ても材料があまりないですけどね」

と言う。


「それに、そんなにたくさん、この世界に転生しているのですか?

 あなたの世界の人が」


 まあ、今のところは怪しいのは、晴明以外だと、帝と中宮様。


 ……命婦は宇宙人かもしれないからな。

 うつろ舟だか、うつぼ舟だかに乗ってたらしいし。


 まあ、宇宙人もあの世界の人間と言えなくもないけど。


「あやかしでもいいな。

 転生したスイーツ職人のあやかしとか居ないの?」


 すごい技とか使えそうだ。


 そんな現実逃避をしていたが、そうそうそんなモノに出くわすこともないので、地道にガラス瓶で酒粕を発酵させることにした。


 酒粕とぬるま湯だけでもよかったようだが、


「砂糖か米を入れた方が良いと聞いた気がします。

 女御様は湯水のように砂糖を使える立場ですので、入れてみてください」

と晴明に指示され、入れてみた。


 いや、湯水のようには使えませんよ。


 いつもビクビクしてますよ、と思いながらも。


 失敗するかもしれないので、何個か作って、いろんな場所に置いてみる。


 何処が一番発酵に適した温度かわからないからだ。



 夜、渡ってきた吉房は簀子縁に置かれた皿の載ったガラス瓶に小首を傾げ、御簾を入ってすぐの場所にあるガラス瓶に小首を傾げ、部屋の隅にあるガラス瓶に小首を傾げ。


 鷹子の両脇に置かれているガラス瓶に叫んだ。


「結界!?」


 あちこちに置かれている、皿が上に載った不思議なガラス瓶が、清涼殿や斎宮で寝所を守るように置かれている狛犬と獅子のように感じられたのだろうか。


「そうじゃ、お前を阻む結界じゃ」


 鷹子の肩に乗っている小さな神様が楽しそうに笑う。


「……いや、結界じゃないだろう。

 女御に、物騒なお前に近づけている時点で」

と吉房は神様をつまんで、


「なにがこれじゃっ。

 祟るぞっ」

と叫ばれていた。



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