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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第四章 平安カプチーノと魅惑のマリトッツォ

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女御様は中宮様に呪詛をかけておいでです


 鷹子が無事に寿子の許を出て、居室に戻ったあと、伊予は用事をするフリをして、外に出、左大臣、実朝と庭の隅で落ち合った。


 表向き、普通の挨拶をしながら、伊予は実朝に告げる。


「斎宮女御様は中宮様に死に至る呪詛をかけておられます」


 実はこの伊予は、実朝が情報を得るため、鷹子の許に潜入させた女房であった。


「なんとっ、斎宮女御が中宮に呪詛をっ」


 一度は驚いた実朝だったが、納得いかないような顔をする。


「……かけるか?

 あの中宮の座よりも甘いものに興味のある女御が」


 自由にできる今の立場が気に入っておるようだが……と実朝は呟く。


「ですが、わたくし、確かに聞いたのです。

 女御様が中宮様に呪詛をかけていらっしゃるのを。


 女御様はおっしゃられました。

 いつか、不老不死のコッコーの実を中宮様に召し上がっていただきたいとっ」


「……コッコーの実?

 そんなものがあったのか。


 というか、何故、不老不死の実を中宮に勧めるのが呪詛なのだ」


 不本意だが、良い話ではないか、と実朝は言ったが、伊予は、いいえ、と首を振る。


「左大臣様はご存知ないのですか。

 あのような言葉を言ったり言われたりしたものは必ず、それを成し遂げる前に死んでしまうのですっ」


 そういう呪いですっ、と伊予は主張した。


「いつか、この願いが叶ったら、とか。

 これが終わったら結婚しよう、とか、大変危険な言葉ですっ」


 伊予は最早、周りに勘づかれまいとすることを諦めたように身を乗り出す。


「女御様と中宮様のすっかり打ち解け、楽しげな様子と。

 そのあとにつづく未来への希望の言葉」


 間違いありません、と伊予は言った。


「あれは『死亡フラグ』です」


「……死亡ふらぐとはなんだ」


「わかりません。

 でも、お二人の言葉を聞いていた私の心に、そう響いてきたのですっ。


 ……いつ、何処で聞いた呪いの言葉なのかは思い出せませんが。

 大変危険なものであると、私の心が告げています」


 わかった、わかった、と伊予の語りを話半分に聞いて、実朝はさっさと行こうとする。


「お待ちください、左大臣様っ」


「大きな声を出すなっ。

 みなに知れるであろうがっ、私がお前を女御の許に潜ませておることがっ」


 そう小声で叫びながら、実朝は戻ってくる。

 周囲を気にして、顔だけ笑顔を取り繕いながら。


 彼に付き従う者たちは苦笑いして、二人のやりとりを聞いていた。


 そして、離れた場所で、晴明も聞いていた。


 なんの話をしてるんだ……という顔をして。



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― 新着の感想 ―
[一言] 転生者、実は、ものすごく多いのでしょうか? 伊予、あなたもですか?
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