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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第三章 あやかしは清涼殿を呪いたい

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この人も持っていました


「チョウマメ、左大臣様にいただいたものの、つぼみだし、まだ使えないな~と思っていたのですけどね」


 鷹子は翌日の昼、ふたたび訪ねてきた晴明に向かい、そんな話をはじめる。


「ところが、とある人物がこれを隠し持っていたのです」


 鷹子が控えていた若い女房を振り返ると、彼女は頷き、一度、奥へと引っ込んだ。


 やがて、持ってきたのは大きなザル。


 晴明に見せたその中には、乾燥させた大量のバタフライピーの花が入っていた。


「誰がこんなものを……?」


 晴明が連れてきていた青龍も物珍しそうに身を乗り出して眺めていた。


「それが……」


 鷹子は眉をひそめて言う。


「実は、私の父、右大臣なのです。


 美しい花だから、乾燥して保存させていたと言ってましたが。

 だったら、何故、黙ってたんですかね?」


 左大臣と同じく、堕胎に使えると思っていたのでは、と鷹子は思う。


 実際、バタフライピーがそのような用途に使えることはないだろうが。


 そう思って、左大臣より早くから、たっぷり保存しておいたことが怖い。


「恐ろしいですね、宮中の権力闘争……」

と鷹子が呟くと、晴明は、なにを今更、という顔をする。


「まあ、とりあえず、帝の熱が下がったことはよかったですが」


 鷹子のその言葉に晴明は言う。


「東宮様を探して祟っていただきましたからね」


 もっとも祟っているはずの東宮が、もっとも御しやすいと言うのも不思議な話だ。


 東宮様の性格の良さが、彼的には災いしているのだろう。


 根本的な解決にはならないが、とりあえず、吉房の状態は落ち着いた。


「ありがとうございます、東宮様」

と鷹子が清涼殿の方を向いて拝むと、晴明が嫌な顔をする。


「あなたが拝むと東宮様、成仏してしまわれそうなのでやめてください。

 ところで、中宮様がおっしゃっていた、帝を呪う女の正体はわかりましたか?」


「……そうですね、たぶん」

と鷹子は言葉を選びながら答えた。


 晴明は初めからわかっていたのかもしれないが。


 それでも黙っていたのは、彼なりの情けなのだろう。


「でも、本人はきっと、ただ私を羨ましいと思っているだけで、呪っている自覚はないのですよね」


 難しい話ですね、と鷹子は言った。


「でもまあ、とりあえず」


 クリームソーダを作ってみましょうか、と鷹子はバタフライピーを見る。


「炭酸水はどうされるんですか?」

と晴明が訊いてくる。


「実はあのあと、左大臣様が此処にまたいらっしゃったのです」




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