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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第二章 姿なき中宮

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帝はプリンの夢を見られるか


「なんと、晴明はお前が思い描く『ぷりんあらもーど』とやらを夢に見たというのかっ」


 おのれ、晴明~っ、と何故か吉房は晴明に怒りを抱く。


 いやあの人、たぶん、同じ世界の人なんで見ただけだと思うんですけどね。


「わかったぞ、女御よ。

 私もそのぷりんの夢を見ようぞっ」


 ……見れますかね?


「プリンと言えば、周りに飾りつける果物も集めたいんですよね。


 ひとつは決まってます。

 この間の野苺なんで。


 甘くはないけど、赤くて、コロンとして可愛いですしね」


 そして、メロンの代わりには――


熟瓜(ほそち)

 熟したマクワウリ……は季節がまだですよね」

と鷹子が呟くと、


「暑い地域や寒い地域だと、この辺りとは違う実がなっていたりするぞ。

 帝の威信にかけて探してやろう」

と吉房が手を握ってくる。


「……いや、だから、そんなところに威信をかけなくていいですよ」


 なにかで代用しますから、と鷹子は言う。


 この世界でスイーツを作りはじめてから、代用品ばかり使っているので。


 なんでもなんとかなりそうな気がしていた。


 利宇古宇(りうこう)

 林檎もいいけど。


 まだ季節早いな。


 小さくて美味しくない、観賞用の物しかないし。


 でも、飾るのには可愛くていいかも。


 あとは、オレンジ。


「柑橘類ですかね。

 蜜柑っぽいもの」


「……やはり、非時香菓ときじくのかぐのこのみか」


「やめてください。

 また左大臣様に狙われてしまいます」


 普通の柑橘類でいいんですよ、と言ったが、この時代のものは甘くなさそうだなあとも思う。


 改良に改良を重ねて、現代の果物とかできてるんだろうなと思い、変にしみじみとしてしまう。


 いやもう、私自身、その甘い果実を食べることはできないのだが……。


「あと、枇杷(びわ)とか」


 さくらんぼなんかも可愛いなと思う。


支那実桜 (しなみざくら)の実って、まだ、なってますかね?」


 支那実桜 (しなみざくら)

 別名唐実桜(からみざくら)


 いわゆる、桜桃だ。

 この時代のさくらんぼは、まだ中国から入ってきた桜桃しかなかった。


 食べたこともあるが、小さくてすっぱい。 


 シロップ漬けにしたら甘くなるだろうが……。


「ああでも、また砂糖を大量に使うと、左大臣に消されそうです」

と鷹子が思わず呟くと、


「砂糖でか」

と吉房に言われる。


「今度の女御は生意気にも贅沢三昧だと言って、()られそうですよ」


 缶詰のさくらんぼみたいにしたいけど。


 それには砂糖だけでなく、レモンもいる。


 レモン……はさすがにまだ見たことないな。


 この時代、まだ日本には伝わっていないようだった。


 まあ、そこは、なんか酸っぱい柑橘類とかで代用できるかも。


 でも、柑橘類のことを口に出したら、また、帝が、


「やはり、非時香菓ときじくのかぐのこのみか!」

 とか言いそうで怖いから黙っていよう、と鷹子は思った。


 ――が、


「帝」


 なんだ、と吉房がこちらを見る。


「左大臣様が非時香菓ときじくのかぐのこのみにこだわるのは何故ですか?」

 

 以前から、ちょっと気になっていることがあったのだ。


 吉房は視線を逸らし、


「知らぬわ。

 不老不死にでもなりたいのであろう」

と言ったが、妙に歯切れが悪かった。




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