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あやかし斎王  ~斎宮女御はお飾りの妃となって、おいしいものを食べて暮らしたい~  作者: 菱沼あゆ
第二章 姿なき中宮

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なんにでも懐かれます


「鷹子から離れるがよいぞ、帝っ。

 鷹子は私の大事な遊び相手なのだっ」


 そう主張する神様を見下ろし、吉房が言う。


「神様」


 明らかに神様と思ってなさそうな口調だな。


 っていうか、高校生のヤンキーが中坊にからんでいるようだ……と二人の様子を見ながら鷹子は思っていた。


「ただ遊び相手が欲しいだけなら、女御は私のもので良いのだな」


「良くはないぞ。

 私が遊びたいときに鷹子が居なかったら困るではないかっ。


 この下賤のものがっ、神に仕える鷹子に触れるでないっ」


 いや、神様。

 その人、天皇……。


 だが、鷹子が止めるより先に、吉房は神様にデコピンし、神様はコロンと転がっていった。


「ああっ、神様っ」


 鷹子は神様の襟首をつまみ、自分の手の平にのせる。


 そのまま肩に移した。


「帝、神様をそんな粗雑に扱ったりして。

 なにがあっても知りませんよ」


「いや、お前の方がなにかの小動物のように扱っていると思うが……」


 鷹子の肩にのった神様は言う。


「ちょっと大きいからといって、いい気になるなよっ。

 私だとて、いずれ大きくなり、鷹子とまぐわえる!」


 吉房はこの神様、大きくなるのか? という顔をする。


「……神様よ。

 何年経って、それなのだ?」


 神様は威張って言った。


「ざっと三百年じゃ!」


「三百年経ってそれなら、お前が大人になる頃には、鷹子どころか、人の世が滅びてないか?」


「鷹子っ。

 この帝を失脚させよっ」


「いや、私がですか……」


 神の力とやらでやらないのか、と思いながら、まあまあ、神様、と鷹子は(なだ)めにかかる。


「ご機嫌なおしてください。

 また美味しいもの、ご用意しますから」


「そうかっ。

 期待しておるぞ、鷹子よ。


 なんでも力になろう。

 私にできることがあるなら言うがよいっ」


「ないだろう……」


 神様はそう言う吉房の方を半泣きに睨むと、


「覚えておれ、帝よっ。

 きっとバチが当たって、お前の栄華も長くは続くまいよっ」

と叫んで、飴とともに、ふっと消える。


「……誰が当てるんだ、バチ」


 お前じゃないのか、と吉房は呟く。


「なんという他力本願な神様だ。

 で、何処へ消えたのだ?」

と辺りを見回していた。


 だが、鷹子にも神様の気配が感じられない。


「伊勢に帰られたのかもしれませんね。

 お役目もあるようですし」


「……お前はいろんなものに懐かれるな」


 そうぼそりと言ったあとで、吉房はこちらを見、冷ややかに付け足した。


「晴明にも」


 あれ、懐くとかいう代物(しろもの)ですかね……。


 はは、と鷹子は笑って誤魔化した。




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