これって、オーパーツですかね?
飴、好評だったから、結構作って配ってしまったな。
大丈夫だろうかな、と鷹子は不安になる。
前回のケーキは内々で食べたから問題ないだろうけど。
こういうのって、この世界にあってはならないもの。
オーパーツみたいにならないのだろうか?
と鷹子は悩む。
まあ確か、平安時代にも唐から職人が来て、飴細工を作って、東寺に捧げたって記録があったらしいから、飴を固められないこともなかったのだろうけど。
……それがこの世界にも通用する話かはまた別だしな。
そう思ったとき、庭の方から、じっとこちらを見ている者が居るのに気がついた。
晴明だ。
今日はあの小姓のような少年は連れていない。
……貴人は簡単に来られないのに、使用人だとズカズカ入ってこられるこの不思議。
いや、陰陽師を此処の使用人として雇った覚えはないのだが、と思いながら、鷹子は訊いた。
「どうかしたのですか、晴明」
いえあの、と晴明はらしくもなく迷うような顔をしたあとで、鷹子に言う。
「プリン・ア・ラ・モードとは、もしや、細長い銀色の器に入っている食べ物ですか」
「えっ?」
この時代にも銀器はあるが、晴明が言っているのはそういうものではない気がした。
「プリン・ア・ラ・モードとは横長で高さのある銀の器に入ったもので。
たくさんの果物の真ん中には、固められた豆腐のようなものがあって、上だけ茶色くなっている。
そんなものではないですか?」
「そうです。
何故、そんなに細かく知っているのですか? 晴明」
そこまで説明しただろうかと思い、鷹子が訊くと、晴明は困った顔をする。
「それが……夢で見たのです。
夢占いは私の仕事ですが。
どうにもこの夢は解けなくて」
「晴明。
そのプリン・ア・ラ・モード、夢の中では、どんなところで食べていましたか?
「なにか……そう、高さのある机の上にそれは載っていましたね。
私は、この間の『おーぷんかふぇ』のように椅子に座って、それを食べておりました。
食べるのに添えられていたのは長い銀の匙のようなもので、先が割れておりました」
銀の匙はこの時代でも使われているが。
先は割れていない。
それはもしや……給食や、プリン・ア・ラ・モードを食べるときに使ったりする、先割れスプーンではっ?
「晴明……。
あなたは何者なのですか?」
白く整った晴明の顔を見下ろしながら、鷹子は訊いた。