虐待姉VS甘やかされ妹VS暗い真ん中
「お姉さまばかりズルいですわ!」
「うるさいわよ!庶子の分際で!」
わぁ。今日もまた義理の姉と義理の妹が華やかだわ
私とは半分づつ血が繋がっていて、当人同士は全くの他人のこの義理の姉妹達の喧嘩は半年前からずっと続いている
片やお母様の連れ子で、我が伯爵家より位の高い侯爵家の子であった姉
片やお父様の愛人の子で、別宅で寵愛を受け続けた妹
本宅はほぼお母様が乗っ取っており、お父様の血を引く、私は邪魔らしい
別宅ではお父様が愛人と仲良くしており、全てを妹に与えるには、私が邪魔らしい
よって私は、物心つく頃から、お母様や姉に冷たくされ
お父様が愛人と妹を連れてきた時には、部屋から何から全て奪われた
お父様が別宅に引っ越すまで、私は使用人部屋に仮住まいさせて貰っていたのよね…
「小姉さまは私になんでもくださいました!お姉さまはズルいです!」
「あいつには何も渡してないのよ?あんたにも何も渡すものですか!」
「ズルい!ズルい!」
「うるさい!うるさい!」
童話に出てくるようないじわるな姉と、巷で流行りの欲しがりの妹
まさか、セットで来るとは思いもよりませんでしたわ
物語でしたら、意気投合して私をいじめ抜いたりしてくれるのでしょうけれど
完全に蚊帳の外ですわね私
まぁ、狭い部屋に外行き用の地味なドレス数着しかない上に、両親のどちらからも無視されている私は、どちらからも興味すらないのでしょうね
「あ、小姉さま!お姉さまがズルいのです!」
「そいつに発言権は無いわよ!あんたにも無いけれどね!」
「はつげんけん?だかは要りませんのでその封筒をください!」
「あげる訳ないでしょうが!後、喋るなって言ってるのよ!」
「小姉さまぁ~!あの封筒、取ってきてください~!」
「これはそいつ宛だから、私の物よ!そんな事も分からないのあんた!?」
え、あれ?そっと出ていこうとしたのにいつの間にか挟まれていますわ!?
というか、私宛の封筒?差出人は…第二王子様!!?
デビュタントすらさせてもらっていないので、顔は存じませんが王家の印もありますし間違いないですわ
妹がダダをこねて、姉が挑発するようにヒラヒラさせてる手紙の内容は…どうやらパーティの紹介状のようですわね
私の元に来ても、来ていくドレスもありませんし、どちらに渡っても不都合はありませんわね
ううん。今日は私の時間を奪っていくのでしょうか。まぁ、図書館で潰す程度の価値なので惜しくは…
「あんたに手紙はあげないけれど。引き立て役が欲しいから連れてってやるわ」
「本当ですかお姉さま!ありがとうございます!うれしいです!」
「私より目立つんじゃないわよ?地味なドレスを着なさい」
「わあぁ。ピンクのフリフリのドレス着ていっちゃおうかな~」
「あんた…ハァ。ま、私の大人の魅力を引き出す真紅のドレスの隣にはお子様ドレスは丁度いいわね」
「え~!そのドレス欲しいです!お姉さまはズルい!」
「あっはは!じゃあ当日そこの部屋に来なさいな?その貧相な体じゃスッカスカでしょうけどね!」
「なんですかそれ!ズルいですわ!」
あ、今日の喧嘩は終わりでしょうか
何故か上機嫌の姉と妹は、喧嘩しながらそれぞれ部屋と別宅へと戻っていきましたわね
このくらいのロスなら、図書館へは少し走れば間に合いそうですわ
図書館へ行く私の時間…本当に惜しくないのですけれど………でも
あの方は、今日はいらっしゃるかしら…
◇◇◇
時は進んで、招待されたパーティがある日
私は、姉に呼び出された
「知らないだろうけど、今日はパーティの日なのよ」
「はい。そうなのですね」
「でもね?何故か招待されたのはあなたなのよ。だから今日、あなたが出歩くのは都合が悪いの」
「わかりました。では部屋に…」
「ダメよ。あの部屋は窓があるわ。だからそこの部屋に居なさい
それから、入ったら外から鍵をかけるわ。それと解っていると思うけれど…」
「はい。他言無用、ですね?」
「そうよ。お母様にも、あの男にも、ね」
それだけを言うと、侍女に扉を開けさせ、顎で入室を促してきました
灰被り姫でも、流石にパーティ当日に軟禁なんて事はなかったので、姉の本気度を伺えます
王子様を射止められるといいですね
今日は図書館も閉まっていますし、何をして過ごそうかしら…
考え事をしながら歩いていたので、伸びてくる複数の手に…全く気づきませんでした
◇◇◇
「…お母様は、もうパーティ会場かしら?」
「はい。他の者にも暇を出したので、今屋敷にはお嬢様の手の者しかおりません」
「ふふ、ならいいわ。じゃあ後は」
「はい。お任せください。お嬢様もご武運を」
「えぇ」
◇◇◇
「お父様!エスコートよろしくお願いいたしますわ!」
「勿論だとも!こんなにかわいい子をエスコート出来るなんて、お父様は幸せだなぁ~!」
「私も、お父様の子でとても幸せでしたわ!ありがとうございます!」
「あぁ。じゃあ行こうか私の天使」
「はい!」
◇◇◇
「殿下、仕上がりました」
私を捕らえて、深い紫のドレスを着せ、化粧をし、白い髪が映えるような赤いネックレス等、様々なアクセサリーで飾り立てた覆面の不審者達が引いていく
何が起こったのかさっぱりだけれど、全く敵意を感じなかったからなすがままになっていましたわ
そういえば前日も、明日はパーティだからって私もお風呂で磨かれましたわね
疑問でしたけれど、多分コレの事前準備ですわよね
後…その。流石に聞き流すわけにはいけない単語もありましたわね
………殿、下……?
「あぁ、やっぱり紫がよく似合うね」
「え…っと。あ、図書館の…」
「あぁ。そしてこの国の第二王子でもあるんだ」
「……へっ?」
「驚いている所悪いけれど、他にもまだあるんだ
お姉さんも、妹さんも、君も、幸せになる方法が見つかったよ」
◇◇◇
なんとなく、気がついていました
図書館で、話しかけてきてくれていたあの方は、王子様なのだと
なんとなく、気がついていました
姉は、お母様に同調した振りをして、私をかばってくれていたと
なんとなく、気がついていました
妹は、お父様と愛人の敵意を少しでも削ぐために、甘やかされていたと
お父様とお母様は、家同士の被害者でした
お母様は、一度侯爵家へと嫁いだのですが、女の子を産んだという理由で離縁されました
その後、祖父母が昔から気をかけていた我が伯爵家へと、無理やり嫁がせたのです
お父様は、平民の愛人と想い合っていましたが、一人息子の為平民になって一緒になることも出来ずにいました
その後、昔から気をかけてくれていた貴族の令嬢を娶り、子を一人成したのちに自由になることを夢見たのです
しかし、生まれたのは私。女の子でした
女では、家督を継がせるのに不安がつきまといます。お父様の落胆と絶望はどれほどだったでしょう
また女の子の出産で、跡継ぎを産めない女腹だと祖父母に見放されたお母様の悲しみと絶望は、どれほど深かったのでしょう
そんな中で、二人の憎しみはお互いとその子供に向かうのは必然だったのでしょう
だけれども。子供に罪は、無い、はず
その後は、屋敷の使用人達が私を育てながら、屋敷の権限をお母様に渡して忙しくすることで敵意をそらし
姉が状況を理解してからは、お母様の耳に届くように私をいじめる振りをし、溜飲を下げさせる毎日でした
その頃にはお父様は屋敷に全く寄り付かず、愛人と仲睦まじくしていたそうです
妹が状況を理解してからは、愛され甘やかされるように、変な気を起こさせないために常にダダをこねて困らせていたようです
図書館で王子様と出会ったのは、一年ほど前
姉や妹に守られてばかりではダメだと思い立ち、でもやれることもなく、ならば知識だけでもと図書館通いをしていた時に声をかけられたのです
今にして思えば、王子様と同級生の姉が差し向けたボディーガードだったのかもしれません。とても恐れ多いのですが…
その後も、一言、二言と交わす言葉は増え…次第に惹かれていきました
これが恋だという事を、使用人からこっそり渡された恋愛物語で知れていたのが幸いでしたわ。知らずに居たら、今頃倒れていたでしょうし
そしてその半年後から、妹が毎日本宅へ来るようになりました
毎日毎日、ズルいズルいと言いながら、姉と何かをやり取りし、時には私に絡みながら情報を流す…という事を。ずっと
その集大成が、今まさにパーティ会場で披露されているとの事です
お父様は愛人と妹と一緒に、平民になるらしく
お母様は姉と一緒に、公爵家と縁続きになるそうです
妹は、貴族がとことん合わないらしく、平民ぐらしを何年も前から予習していたそうです
姉は、幼馴染の公爵家嫡男と婚約し、貴族には珍しい大恋愛だったと聞きました
そして私は、お父様の伯爵位を継ぎ、大公位を得た第二王子と婚約する事で侯爵位までいただきましたとさ
図書館で話しかけられた内容が、領地経営の事だったりマナー全般だったりしたのは、全部そういう事でしたのね
両親と姉妹の悪夢が晴れ、私が夢のような世界へと旅立った、夢のような物語でしたわ
本当にズルい姉を書きたかった
全くの別物になった
おかしい




