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困った王太子殿下

王太子視点です

私は何だか困っている。


元々王太子として産まれた身の上、政略結婚も勿論覚悟はしていた。そもそも第2、第3王太子に加え、趣味の園芸に精を出すため現王に国を任せて臣下に下った王兄とその優秀な子供達に、気まぐれ極まりない前皇后殿下の発言権は今だ強い等々…私の王太子の地位は危うい沼の上に存在している様なものだと理解していた。そのためおっとり見えてちゃっかりしている母が「どうですか?」と持ってきた婚約話にただ「良いですよ」と答えたのだ。そしてそれは案外早く纏まり、王の勅命として正式に僕に伝えられた。相手は神童として名高い令嬢であったが正直売り込み文句でしかないと話し半分で対して気にとめていなかった。

私に必要なのは十分な後ろ楯、この国を権力争いで台無しにしてしまわない様に、分かりやすく地盤固めができるだけの家柄と資金をもつ勢力との繋がりだった。


娘が産まれてから、かの領地は益々栄えているらしい

別段特産品が増えた等の話ではなく、領地にさほど強い興味を持たず、専ら王宮での権力争いに注力する貴族らしい貴族であった領主が精力的に領地経営に乗り出すようになったからだ。元々能力の高い抜け目の無い人物ではあったが、その転身は目覚ましい効果を上げただけでなく、まるで生き甲斐を見つけたようなその晴れ晴れとした姿に感化され、真面目に己の役割を果たそうとする陽の流れが貴族達の間に広まったのだ。


思いもしない国の動きに私は戸惑った。

そして改めて令嬢に興味をもった。



そして打ち砕かれたのだ。


私は勝手に期待していたのだ。

このような陽の変化を人にもたらし、国を暖かく導く令嬢に聖女のようなイメージ…そうあって欲しいと言う願望があった。そしてそれは国の、ひいては私のための行動なのだといった驕りがあった。しかし目の前の令嬢の態度は酷いものだった。時間がもったいないと言わんばかりに眉を寄せ、不機嫌さを隠そうともせず目も合わない。最近では王妃教育も逃げ出していると聞く。今も会いには来てくれるが、手土産として持参した巨大なアップルパイを顔面に押し付けるこの令嬢を私は図りかねている。


相変わらずこの令嬢は天才の名を世に轟かせ、気まぐれに様々な分野に影響を及ぼし、かといって驕ること無く謙虚でそして怠惰で不機嫌だ。


私に嫌われての婚約破棄を狙っているのは明らかだが私にも事情がある。政略結婚は勿論覚悟していた。王太子である事以外、飛び抜けた能力も熱心な趣味も境遇への反抗心も持ち合わせず、堅苦しい正攻法の戦法しか思い付かない面白味の無い自分を理解している。ただどうせなら、私も晴れ晴れとした表情で面白おかしく人生を送ってみたいのだ。それには怠惰で謙虚で極端且つあからさまな婚約者はなるほど、私にぴったりだとすら感じる。


何故かいつも辺りを警戒する令嬢を疑問に感じながらアップルパイでベタベタの顔面で考える。こういった場合の正攻法とは何だろうか?先ずはこのアップルパイを片付けて視界に入る事だろうか?取り敢えず私は誠実にアップルパイを齧る事から始めた。


また続きます

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