困った女子大生
まず確実な事、私は今!非常に困っている。
説明をするために簡単に経緯を振り返ってみよう。
私はどこにでもいる普通のごくごく平凡なモブ女子大生。
憧れの先輩を追いかけて血反吐を吐くような受験勉強と裏金答案横流しを経て5ランクも上の大学に無事合格を果たすも当の先輩は「3股はっちゃけクズ野郎」の伝説を残し既に失踪していた。
すっかり目標を失い脱け殻のような気持ちで挑む高難易度の授業!レポートざんまい!全く進まない単位習得に希望を見いだせずヘットヘトに疲れきる日々の中でふと思ったのだ
「ああ私の青春はここにはなかった…数々の悪役令嬢転生にときめきキュンキュン憧れまくったあの頃が懐かしい…。」
そして千年に一度の流星群が降り注ぐスペシャルな某日、星に願いをかけながら道路に魔方陣を描き、生け贄として差しが入りすぎてもはや脂身でしかない高級ブランド肉を捧げると、無人トラックのギアをニュートラルに入れて坂の下で待ち受けた。
「ドンと来いレッツ異世界転生!!」
そんな掛け声と共に産まれたドリル金髪悪役令嬢が私だ。
両親は産まれて早々お喋り開始したこのツインドリルに奇跡の天才の誕生だと歓喜の涙を流し、早々に王太子との婚約を取りまとめると早速未来の王妃としてスパルタ英才教育を始めた。
しかしこれがもう嫌だったのだ私は。
我慢ならなかった!
前世では受験勉強と魔方陣開発とに散々脳と心をすり減らして来た人生だったのだ、最早一ミリも脳に叩き込む苦労をしたくなかった。さっさとヒロインに王太子攻略してもらってこの厄介な地位から逃げ、外交やこの世界での教養の必要なさそうなポジションを確保したいと考えたのも自然な流れだ。
方針が決まれば話は早い。
顔合わせにやって来た王宮で手土産のアップルパイを王太子の顔面に叩き付けるパフォーマンスによって「パイが口に入る大きさかの目算すら危ういお馬鹿っぷり」を演出する事で王太子の私に対する好感度を下げつつも常に油断なく辺りを見回し他のイケメン攻略対象を探った。
悪役令嬢と言えば、科学料理なにがしか文明のチートでの攻略対象とのふれあいによって信頼を得て来る破滅に備えるのがセオリーだ。しかしこの「シャワーと上下水道完備のそこそこ文明世界」の中で受験勉強以上の知識を持たない私では技術革命は程遠く、ぼちぼちDIYができるお嬢さん位が精々だ。
もう私は恋愛のために頑張りたくない。
頑張らないためにしか頑張りたくなかった。
ぼちぼち続きます
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