第1章「新学期②」
最初は軽快に漕いでいたが、みるみる内に自転車のペダルが重くなっていった。
「学校、行きたくないな。」
春休みは部活も行かず悠々と生活をしている事もあり、みるみる内に学校への道のりは遠くなっていた。
そんな中でも季節は巡り、春はまだ先の話と思っていたがそんな事も無いらしい。
河川敷へ上り、上流の方へ漕ぎ進めると踏切を渡った先に一本の大きな桜が咲いている。
海側から吹き込んで来る風によって、皆でワルツでも踊っているかの様に、薄い桃色の花弁が軽快に舞っているのを見ながら悲しくなった。
「桜の方が、今を楽しんでそうだな」
優雅に桜を眺めて居ると「おーい」と言う声が遠くからみるみる近づいて来た。
「よう、お前太っただろ?会うの1ヵ月ぶり位か?」
久しぶりに会った友人に対しての一言が非常非礼であるこいつは、高校入学して間も無く友達となった斎藤 賢介だ。
ゴルフのスポーツ推薦で入学した自分は部活を最優先にしていたので、クラスでのコミュニケーションは少なく、賢介は数少ない友人だ。
白い歯を惜しげもなく見せつけて、満面の笑みである。
「何がそんなに楽しいんだよ」
釣れなさそうに反応してみるが、久々に会う賢介のお陰で少し気が紛れた。
自転車を漕ぎ始め、続く様に賢介も自転車を走らせ始めた。
「ひと月ぶりくらいじゃ無いか?」などと他愛もない近状報告をしていたら20分程で学校に到着した。
ロッカーで靴をスリッパに履き替え階段の前に、クラス分けが張り出されていて、今年も賢介と同じクラスで少し安堵した。
「今年も賢介と一緒のクラスか、これからもよろしくな」
少し遅れて賢介もお互いの名前を見つけ、クラス分けを確認していた。
「あぁ、こちらこそ」
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