第1章「新学期⑥」
「さて、本題だ……」
鳥居をくぐり左手の手水舎で手口を清めて、本殿の方へ足を進める。
その時、右手に見えるはずの授与所は木窓でピッチリと閉じられていた。
時間も夕方、そりゃ閉まっていてもおかしくはない時間だった。
まるで会えるアイドルに会いに来た気分だったので、閉まっているのは想定外だった。
これが凶の威力か。
ため息が出た。
今日部活も退部したことを思い出した。
嫌なことが頭の中に蘇り始め、グルグルと頭の中をめぐる。
そういえば部活を辞めると、今日先生に伝えたことすら忘れていた。
それくらい昨日の少女のことが気になっていたのか。
少女を見れなかったのはショックではあったが仕方がない。
本来の目的である、おみくじを結んでそそくさと撤退するしかないな。
いろいろなことが起こった今日であったが、神様に明日から平 穏な日々が過ごせるようにお願いしておくか。
本殿まで歩いて行き、目を閉じ両手を合わせた。
「神さま、どうか私に幸せな日々をください」
その時、本殿の奥から自分が呼ばれている気がした。
「昨日と同じ感覚だ、でも本殿の奥って山だよな」
何かあるかも知れないと気になって、本殿の裏手に回ってみた。
すると、裏山に続く1本道がありその先で何かが光を放っていた。
恐る恐る歩いていくと、何かが近寄ってきた。
「えっ……」
そして、ここで太一の記憶は途切れた。
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