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九十九は男の絶滅を祈る  作者: 英知 圭
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2回目のデート。〜九十九の汚れ〜



「……あれ。………凛花?」


九十九は目を丸くした。


目の前にはカズナがいた。


一瞬で中学の頃の記憶が押し寄せてきて、息をするのを忘れる。


「あはは!凛花じゃん!久しぶり!何?外に出れるようになったの〜!?よかったじゃ〜ん!」

「……っ……っ……」


カズナの九十九を馬鹿にしたような話口調が中学時代を鮮明にさせる。


「本当に九十九じゃん!はっ!なんだ、少しはマシになってんじゃん!」


カズナの登場にあまりに驚いていたので隣にいた人に気づかなかった。しかし、そちらに目を向けて更に心臓がドクリと嫌な音を立てる。


(……花宮くん!)


さっきまで全く平気だったはずなのに体が震え呼吸が少しずつ荒くなってくる。


まさかこの2人にこんなところで会うなんて思わなかった。しかも2人同時に。


何をされるかわからない恐怖に目線をカズナ、花宮と交互に動かしているとそんな九十九を見てカズナがフフンと鼻で笑う。


「私たち付き合ってんの。今日は記念日なんだよね。凛花も祝ってくれるよね?」


(…何?もしかしてまだ私が花宮くんを狙ってるって思ってんの?これまでに花宮くんを狙ったことなんて1ミクロンもないんだけど!)


九十九が険しい顔をしたことを悔しがっていると勘違いしたのか、カズナは更に嫌な笑顔になる。


じわじわと九十九を追い込むように2人の圧がかかってきて、中学時代に散々イジメを受けていた九十九はトラウマからか歯向かうことも出来ずジリジリと腰が引けていく。



「九十九?」



中学時代の自分に戻りかけていた九十九はその一言で現実世界に戻された。ヒュッと息をやっと吸い込めた。


「…山下くん……」

「…誰?…知り合い?…大丈夫?」


山下はスッと九十九の側に寄ってきて、九十九の頬を撫でるようにすくい上げる。


突然の極上イケメンの登場にポカンと口を開けていたカズナがハッと我に返った。


「わぁ!すっごいカッコいい人!え?凛花の友達ですか?」


声のトーンをコロリと変えたカズナが山下に話かける。先ほどの人とは別人のようだ。


「……いえ、彼氏ですけど。」

「え!!」


あまりにも衝撃的だったのだろう。カズナ、花宮ともに驚き固まる。そんな2人には見向きもせず、山下は九十九に話しかけた。


「九十九、紅茶を飲み終わったんならもう出ようか。」


九十九はすぐに頷いて、山下から差し出された手をすがるように繋ぐ。

それを見たカズナが一瞬、顔をしかめるのが見えた。


「さっすがだね。男の子をたぶらかすのが上手だよね。凛花は。」

「……………は?」


カズナの言葉に速攻でキレた山下の様子に九十九は心臓が縮まる。


学校の生徒は九十九に対して発した一言で山下がキレる姿をよく見ているので、最近では「藪をつついて蛇をだすのはやめよう。」とばかりに余計なことは言わなくなった。

しかし、そんなことを知らない人から見ると、九十九に対して優しく語りかける山下が王子様のように見えているのだろう。まさか小さな言葉にキレて暴走するとは思いもしないはずだ。

しかも彼は男性、女性関係なくとても辛辣だ。


(やっばーーーーーーい!!)


「や、山下くん、行こう。プラネタリウムの時間になるよ。」

「待って、九十九。なんかこの子が気になること言った。」

「いいから!山下くん、行こう!」


彼の腕を引っ張るもこうなった時の山下はビクともしない。


「あ、彼氏さん、知らないんですか?凛花が中学時代にどんな子だったか。じゃーもしかしてあの事件のことも知らないのかな?」

「あぁ、まぁ自分からは話せるようなことじゃねーだろ。ははっ」


ニタニタと2人は同じような顔をして九十九を笑う。


(この2人。本当に似た者同士だ!)


ゾワゾワっと全身が総毛立つのがわかった。


(怖い!気持ち悪い!早く逃げたい!)


中学時代のトラウマと2人の九十九を馬鹿にしたような下卑た笑いに体が勝手に反応する。

多分、山下が目の前にいなければ早々に走って逃げていたはずだ。


「………またそれ?この前もそのネタ言われたんだけど何なの?何が言いたいの?」

「あはは!やっぱり教えてないんだー!凛花は、こう見えて男の子に媚びるのが上手なんですよー。しかも友達の好きな人をどんどん奪い取ってくような子だったんですよー。ひどくないですかー?」

「…………。」


(ひぇ!ヤバイ!ヤバイよ!どうしよう!)


隣にいる山下の表情が無表情へと変わっていく。こうなると手がつけられない。


「彼氏さんもちゃんとそういうの知ったうえで付き合った方がいいですよー。」

「……知ってどうなんの?ってか、君なの?その馬鹿みたいな噂を広げたのは。」

「え、な、違いますよ!私も被害者だもん。凛花に好きな人がいるって教えたら、すぐにその人を誘ってたぶらかそうとしたんですよ!」

「何言ってんの?そんなの九十九が可愛くてソイツが誘いに乗っただけでしょ?君に魅力がないのを九十九のせいにしないでくれる?そういうの被害妄想って言うんだよ。」

「……なっ!!……っ…ひどい、何でそんなひどいこと言うんですか?」


カズナは一瞬カッとなって怒鳴りそうになるのをグッと抑え、しおらしく可愛らしい声で訴えてきた。

九十九は気づかれない声でため息をつく。


(そんなのが彼に通じるはずがないのに…。)


「ひどいって何が?自分が九十九に言ったひどいことは棚に上げてよくそんな顔できるね。性格悪いのが顔に出てるよ?」

「……っ!!」

「……あとさ。九十九のこと凛花、凛花って馴れ馴れしく読んでるけど、もしかして九十九を裏切った友達って君のこと?中学の時に九十九を散々イジメてたの………君なの?」

「……っ!私そんなことしてません!」


九十九はその発言を聞いて目を丸くした。


(ええ!!よく堂々と言ったな!)


そんな九十九の表情を見たカズナが何かにカチンとしたようで、突然、九十九を指差して叫び出した。


「この子!中学の時に事件起こして半年も学校に来なかったんですよ!ちゃんとそういうこと知ってるんですか?嘘つきなんですよ!」

「事件を起こしたんじゃなくて、被害にあったんでしょ?学校に来なかったんじゃなくて来れなかったんでしょ?君、日本語の使い方わかってる?嘘なんかつかれてないし、逆に間違ったこと教えようとしてるのは君でしょ?いい加減にしたら?それともただのバカなの?」

「…っ!…男に襲われてるんですよ!?」

「だったら何なの?」

「だったら…って…!」

「だって九十九は過去にどんなことがあっても必死で頑張って前に進んでるし、すごく可愛いし、すごくカッコいいし、すごく強いし、いつもキラキラしてるし、いつも凛と立ってるし、九十九は俺の女神だし。俺の女神はそんなことで汚れたりなんかしないから。」


そんな山下の発言に開いた口が塞がらないほどカズナと花宮が驚愕な顔で固まっていた。


九十九もそんな2人には目もくれず、山下の発言に驚き固まっていた。少しずつジワジワと彼の言葉が染み込んでくる。



(そんなことで汚れたりなんかしない…)



そんな風なことを前に思ったことがあった。

そうだ。家の外に出る練習を始める前にそんなことを思ったはずだ。



『あいつらには負けない!あいつらが悔しがるようなそんな世界一幸せになってやる!お前らなんか私の人生に何の汚点も残さなかったって、そう胸をはって言ってやる!』



確か、そんなことを思ったはずだ。

でも中学でのツライ日々の中でそんな考えなど忘れてしまっていた。


あの事件の以来、ツライことが山ほどあった。

あの事件のせいで何もできなくなった。

あの事件のせいで九十九の人生が真っ暗闇になってしまった。


『あの事件なんて私の人生に何の汚点にならない』なんて今現在でも言えることはない。


だって実際、あの事件のせいで九十九の人生は真っ黒に汚れていたから。

何も出来なくなった。誰とも関われなくなった。全てのものが恐怖でしかなかった。全てのことに諦めていた。


でも、それでも、山下は汚れたりなんかしないって言ってくれた。


九十九が必死で頑張れているのは山下が腕をグイグイ引っ張ってくれているからだ。

九十九が可愛いのは山下に可愛いと思われたいからだ。

九十九がカッコいいのは山下の前では理想の女性になりたいと背伸びをしているからだ。

九十九がキラキラしてるのも、凛と立っていられるのも山下の近くにいるからだ。


九十九が汚れていないなら、それは多分、彼が無意識に九十九の汚れをキレイに拭いてくれたからだ。


(すごい…山下くんはやっぱりすごい。)


さっきまであった体の震えがなくなっており、気持ち悪さや逃げたいという気持ちも無くなっていた。


カズナに対する罪悪感やトラウマ、花宮に対する恐怖心も霧散してしまった。


あるのは山下に対する気持ちだけだ。

湧き上がるような想いだけ。




読んでいただきありがとうございます。


人って他人の些細な言葉で救われたりすることってありますよね。

周りの人から「たったそんなこと?」って言われるような言葉でもグッと心に響くこと。


本当はそんな感じのことを書きたかったんですが、私の文章力が稚拙なせいで書けませんでした。ショボンです。


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